学生生活

2023年09月21日

国際・留学

米国CLEAVELAND CLINICにおけるクリニカル・クラークシップ

本学科では、臨床実習の一環として、米国CLEAVELAND CLINIC短期実習プログラムを実施しています。CLEAVELAND CLINICは米国病院ランキングで常にトップ10にはいっており、脳死、生体感移植は年間150例行っています。

このCLEAVELAND CLINIC短期実習プログラムは、外科のChairmanであるFrug教授と、移植外科の責任者であるMiller教授の了承のもと、本学科学生を受入れて頂いており、九大病院 消化器・総合外科(第二外科)が主体となって、実施しており、教育プログラムとしては、脳死肝・小腸移植ドナーおよびレシピエント手術への参加、ICUおよび病棟での移植外科診療への参加、セレクションコミティーや病理カンファレンスを含む各種カンファレンスへの参加となります。


成果報告書
宮﨑 朋実

この度は、2023/07/24〜2023/08/04の2週間、第二外科のご厚意により、クリーブランドクリニックにて臨床実習に参加させていただきました。日本とは異なる点も多いアメリカの医療を肌で感じることができ、忘れられない経験になりました。

◆実習について◆

まず到着して、もはや街のようなクリーブランドクリニックの規模の大きさに圧巻されました。また、病院はとても綺麗で、スタッフの方々のフレンドリーで優しい対応に、初めての環境でも緊張がほぐれたのを覚えています。今回私たちが訪れた科では、肝臓移植だけでなく、肝癌の肝切除や小腸移植など、幅広い手術が行われていました。日々のスケジュールは、毎朝6:00からの研修医の回診、9:00ごろからの主回診のあと、手術見学や外来見学、オンラインでのカンファレンスへの参加など、充実した内容でした。特に、心停止ドナーの臓器摘出に同行させていただいたことは、印象深い経験でした。心停止状態では血液の循環が止まるため、脳死状態の方からの臓器提供よりも迅速な臓器摘出が求められます。患者さんが心停止になるまでをモニター上で見守るなんとも言い難い待機時間とその後の素早い臓器摘出のプロセスは翌日の別の患者さんへの肝臓移植に繋がります。手術中の厳粛な雰囲気の中でとても複雑な思いがした一方で、次の患者さんに命が繋がる瞬間を目撃することができたことにほっとしたのを覚えています。また、アメリカの臓器移植システムの整備された仕組みにも触れることができました。肝臓移植には、移植外科医だけでなく、ドナーの主治医、看護師、移植コーディネーターなど様々な専門家が一体となって関わっていました。これらの連携とシステムが、臓器移植の成功につながるのだと実感しました。 さらに、病棟での実習においては、特に驚いたことが2つあります。第一に、研修医の先生方の主体性です。早朝から、研修医の先生方はカルテや採血結果などを確認し、3、4人ほどのグループで回診に出発します。患者さんへの問診に時間をかけ、部屋移動の間にはその患者さんに対して次に取るべきアクションについて研修医同士でディスカッションされていました。私の持っていた「研修医=まだまだ見習い医師」というイメージが払拭され、私も将来、同様に研修医同士で意見を交わしながら積極的に学びたいと刺激を受けました。次に、役割分担と多職種連携です。日本と異なり、PA(Physician assistant)やNP(Nurse Practitioner)などの専門職が存在しており、日本では医師の業務であることも彼らが行っており、とても効率的でした。そして、どの専門職の方でも上級医の先生方とのディスカッションは対等であり、チーム一丸となって患者さんの治療に関わっていたのが印象的でした。これらの実習経験を通じて、日米の医療の違いを感じるだけでなく、これから医師になる上での刺激もたくさんもらうことができたと感じています。

◆実習について◆

女子2人でクリーブランドクリニックのキャンパス内にあるAirbnbのアパートに宿泊しました。朝が早いことや治安の観点から考えても、キャンパス内での宿泊はとてもよかったです。初日には地元のスーパーやコストコで2週間分の食料を確保し、毎食自炊して過ごしました。キッチンには広々とした冷蔵庫や棚に備え付けられている電子レンジなどがあり、まるでアメリカに住んでいるかのような暮らしを楽しむことができました。

◆休日について◆

週末には、現在ボストンに研究留学されている第二外科の原武先生のDana Faberがん研究所を見学させていただきました。私自身、アメリカへの留学に興味があるので、この機会を通じて研究留学についての考えも深める貴重な機会となりました。また、ボストン茶会事件博物館を訪れたり、名物であるロブスターロールを堪能したりするなど、ボストン観光も楽しみました。歴史的な場所を訪れることで、アメリカの独特な文化や歴史に触れることができ、留学の視野を広げる上でも有意義な体験になりました。

このたびは、第二外科の先生方、クリーブランドクリニックの橋元先生をはじめとする多くの方々にお力添えいただき、刺激的かつ有意義な実習経験を積むことができました。重ねて心よりお礼申し上げます。

クリーブランドクリニックでの実習
林 謙治

九州大学消化管・総合外科(第二外科)の短期留学プログラムで7月10日から7月21日の2週間、アメリカ合衆国中西部の北東にあるオハイオ州のクリーブランドクリニックのDepartment of Hepato-pancreato-biliary & Transplant Surgeryで臨床実習をさせていただきました。九州大学の第二外科出身の橋元宏治先生のご指導もと2週間を過ごしました。

【実習】

クリーブランドクリニックは九州大学病院の約5〜6倍の敷地面接であるため、初めはどこに何があるのかが分からなくなり、迷子になることがありました。実習内容としては移植外科でその日に行われている見学をしたい事を見学する形式でした。いつ病院に来ていつ帰るかは基本的に自由で希望を言えば様々なことを見学させてもらうことができました。大まかな1日の実習の内容としては、朝6時ごろからレジデントの病棟回診があるのでそれを見学し、その後はその日によってカンファレンスや手術、外来などの見学をしました。橋元先生が移植手術以外の手術にも援助として呼ばれることが多々あったので様々な手術を見学させてもらうことができました。また、他病院から臓器ドナー候補が出た場合にはその病院に行って臓器摘出の見学をすることができました。臓器移植が急遽決定することもあり、夜中に移植手術を見学させてもらえることもありました。何もかもが英語で行われるので英語の勉強をある程度してから留学をしたのがとても良かったなと感じました。

【生活】

病院から徒歩10分もかからないところのホテルに滞在していました。病院の周りは治安が悪く、頻繁に犯罪が起きる場所であったので日が沈んでからは外出をしないように先生方に言われていました。食事については日本から持って行ったレトルト食品を食べたり、病院の食堂で食べたりしていました。円安であったこととアメリカの物価が高騰していたこともあり、全ての物の値段が高く、外食はほとんどしませんでした。病院から歩いて15分ほどのところにスーパーがあったため何かが必要であった時はそこで買っていました。病院の中でも外でもどこに行っても全て英語で会話が行われるのが面白くて個人的にはとても楽しかったです。

【交流】

クリーブランドクリニックで働いている多くの先生方や研修医、看護師、PAさんとお話をすることができました。どのかたも非常にフレンドリーで優しく話しかけてくださる人が多かった印象です。また、どの先生も何か質問をすればとても丁寧に教えてくださいました。橋元先生以外にも日本人の先生方がいらっしゃったのでその方達とは日本語で話をし、それ以外の先生方とは英語で話をしていました。海外の医学部を卒業されてからアメリカ合衆国で免許を取っておられる先生方もたくさんおられたのでそれについて色々な話を聞くことができました。最終日には橋元先生がご飯に連れ行ってくださり、色々と真面目な話と面白い話を聞くことができました。

【休日】

2週間の実習期間であったため2度の休日がありました。一回はカナダに行きナイアガラの滝を観光して、もう一回はクリーブランド市を観光しました。とても充実した楽しい週末を過ごすことがでできました。

現地でレンタカーをし、ナイアガラの滝まで運転をしました。フリーウェイをずっと走れば良いだけだったので運転は難しくはなく、5時間ほどで着きました。ナイアガラの滝のアメリカ側を観光した後はトロントでミュージカルを見てそのままカナダで一泊をしました。次の日はカナダ側のナイアガラの滝を観光してから帰りました。

クリーブランドの観光としてはダウンタウンを散歩したり、クリーブランドで有名なWest Side MarketとRock & Roll Hall of Fame Museumを観光しました。地元の野球チームの試合がちょうどあったので試合観戦もしました。

【最後に】

とても刺激的で勉強となる短期留学となりました。世界でもトップと言われている病院の凄さを肌身を持って感じることができましたし、これからの学習においてモチベーションとなりました。今回貴重な機会を与えてくださった吉住教授、橋元先生、第二外科の先生方、クリーブランドクリニックの皆さんには大変感謝しております。

クリーブランドクリニック実習 成果報告書
塩瀬 遥佳

コロナ禍でしばらく中止となっていた海外クリクラが再開したので、クリーブランドで実習したいという1年生の頃からの願いが叶いました。2023年7月23日から8月4日までの2週間Cleveland Clinicという大病院でお世話になった時のことを、少し綴らせていただきます。

◆実習について◆

初日に事務の方と会って、ID badgeやスクラブを貰いました。世界中から見学生が来るため対応に慣れておられ、ゆっくりとした英語で説明してくださったので、緊張しすぎることなく初日スタートできました。 実習自体は自分たちで自由にして良いとのことで、見たいものなどの要望を言うと柔軟に対応してくださいました。朝6時前から始まるresident(研修医・レジデント)の回診について行ったり、その後のattending doctor(指導医)の回診を見たり、合間で手術室へ行ったり来たり、数多くのオンラインカンファに参加したり、と毎日充実していました。曜日によっては外来診療が中心で、先生と一緒に患者さんの診察をさせていただきました。タイミング良ければprocurement(臓器摘出)に同行することができ、私たちは車で1時間程度先にあるCleveland Clinicの分院に行きました。DCD=donation after cardiac death(心臓死)という日本では見られない移植を見学できたので、とても印象に残る体験となりました。 とにかく病院が広すぎて、どの建物の手術室に行けばいいか迷うこともありました…が、先生方がとても優しく教えてくださいます。実習中は(日本でもそうですが)、躊躇わずに自分のわからないことは聞く、自分の思っていることは伝える、が一番です!

◆生活について◆

昔はあったと聞く学生寮が今はなく、私たちはキャンパス内にあるair b&bに2週間泊まりました。Residentの回診に参加する場合は、朝薄暗い時間に出なければならないので、病院近くに泊まるのがオススメです。

Cleveland Clinicの南のFairfaxというエリアは治安が悪く、出歩かない方は良いとのことだったので、クリーブランド到着初日にスーパーで買ったたくさんの食材で過ごしました。

Cleveland Clinicの東の方、徒歩圏内に全米でもかなり有名な美術館があり、入場料がありがたいことに無料なので是非行ってみてください。平日の放課後に行きましたが、数時間の滞在で全体の5分の1も見終わりませんでした。そのくらい規模の大きい美術館です。 私たちは2週間の間の週末にボストンに行きました。

◆英語について◆

病院内では世界中の国からアメリカに来た医療職の人がいます。聞き慣れないイントネーションで言われる馴染みのない医療単語を聞き取るのに頭使いますが、こんなにも差があっても通じるんだという驚きがあります。ちなみにですが、肝移植グループの回診では「FK」とタクロリムスを呼び、フロセミドは「LASIX」と言うので、覚えておくと得です。

病院外では、スーパーの店員さんだけでなく、横断歩道を待つタイミングがたまたま一緒の人、なども気軽に話しかけてきます。怪訝な顔をせず、ジョークを返せる英会話能力をつけておくと、さらに楽しいだろうと感じました。勿論カツアゲやドラッグ勧誘もあるので、そういう人達とは目を合わせないよう注意です!

◆最後に◆

アメリカの病院の雰囲気を存分に味わうことができ、将来またアメリカに行きたい!と思える刺激的な2週間でした。これからも多くの九医生が、トップレベルの病院にて、有名な先生方のもとで、素敵な経験ができることを願っています。橋元先生をはじめとし、Cleveland Clinicの肝移植グループの先生方、私たちがアメリカで実習できるように支えてくださった多くの方々に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

「Cleveland Clinicでの実習を終えて」
石田 大祐

7月10日から21日の2週間アメリカのオハイオ州にあるCleveland Clinicにて肝臓移植チームの一員として実習をさせていただき様々な経験ができましたし多くの学びを得ました。Cleveland Clinicはアメリカでもトップクラスの病院で、広大な敷地の中に大学病院並みの建物が何棟も聳え立っていました。病院の中にはホテルがあったり、いくつもの食堂があったり、患者さん専用の車が建物の中を走っていたりとその規模に圧倒されました。日々肝臓移植の手術を見学させてもらったり、朝6時過ぎからレジデントの先生たちと回診したり著名な先生の講演を聞いたりと、もちろんオールイングリッシュで、だからこそ刺激的な経験をすることができました。

移植見学では生体肝移植や脳死肝移植が中心でしたが、日本では行われていない心停止ドナーからの肝臓移植には度肝を抜かれました。実習初日の夜の10時ごろに電話がなり、夜中の2時頃に心停止ドナーからの臓器摘出があるから見に来ないかと声がかかった時は眠気はさておきワクワクがとまりませんでした。なぜ心停止ドナーなのに臓器摘出まで時間が空いているのだろうか。一刻も早く摘出しなくていいのかと疑問に思いましたが、その事実を後から知ることになります。これは倫理的な問題もあり、日本ではこのようなことは今後も行われないかもしれませんが、家族の同意のもと植物状態に陥った患者さんから抜管し心停止になった直後に臓器摘出をするというものでした。初日から強烈すぎる体験に圧倒されました。また、外来見学をしている時に、ある患者さんが「親戚の友人から肝臓を分けてもらうんだ。俺が80歳になっても肝臓は40歳か!最高だな!」と言っていたのは今でも鮮明に覚えています。日本で移植と聞くと自分も含め多くの人はどこか身構えるような、どこか少し遠い存在のような気がしますが、アメリカ人にとって移植は身近なのかもしれません。日本でも肝臓移植に限らず、少しずつ臓器移植が普及していくことを願うばかりです。

回診でも日本とアメリカの違いに驚かされました。日本では医師だけで患者さんを診て回ることが多いですが、アメリカでは医師だけでなく、薬剤師やPhysician Assistantという医師のサポート役、患者さんと医師の橋渡し的存在のコーディネーターなどがと一緒に回診しました。医師がリーダーということもなく、全ての職種が対等な立場から意見を言い合っている姿が印象的でした。「これぞチーム医療」というものを実感し、アメリカの医療システムに魅了されました。

もうひとつ驚いたのが、電子カルテをスマートフォン上で操作できるということです。つまり、世界中どこにいてもスマートフォン1つで患者さんに処方したり患者さんの状態を把握したりできるのです。「アメリカって進んでるな」というのが率直な感想でした。もちろんプライバシーに関する問題は尽きませんが、これぞ今まさに日本でトピックの働き方改革に導入すべきだと感じました。日本では医師の負担軽減のために労働時間を減らすことばかりに焦点を当てていますが、実はそれ以外の方法があるのではと感じました。

2週間というとても短い間でしたが、世界トップレベルの医療を目の当たりにし、自分の将来に大きな影響を与えたことは間違いありません。このような貴重な機会を与えてくださった第二外科の先生方、学生を受け入れ指導してくださった橋元先生、Cleveland Clinicの先生方に感謝いたします。ありがとうございました。

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