在学生の声

在学生の声

平成22年度 医学科6年 南 満理子さん



 医学科5年生の時に財団法人医学教育振興財団が主催する英国大学医学部の短期留学に参加した学生です。サークルは硬式テニス部に所属し、これから医師の道を歩むに当たり重要となる積極性やコミュニケーション能力の大切さを学びました。
 貴重な留学経験や医学科での学習、サークル活動での経験を中心としたお話を聞きました。

医学を志したのはいつ頃ですか?

 もともと本が好きで、いろんな本を読んでいるうちに精神科医に魅かれて医学に興味を持ちました。医師というよりは、初めは心療内科医、精神科医になりたいと思っていました。九州大学は池見酉次郎教授が、全国で初めて心療内科を創設した心療内科発祥の地なので、九州大学医学部医学科を受験しようと思いました。
 

心理学科などではなく医学科に進路を決めたのはなぜですか。

 心って見えないものですが、科学的な裏付けを持って扱いたいと思ったからです。いかに医師として科学的に取り組んでいけるか挑戦したいと思いました。
 

入学してからイメージと違ったことはありますか。

 医師としての勉強に期待して入学したのですが、初めは一般教養や高校の生物の補講のような授業ばかりでした。アーリーエクスポージャーで病棟に訪問するなど、医療の現場は見せて頂いていたのですが、1年生の前期は、はやる気持ちでいっぱいでした。後期になると分子生物学などがカリキュラムに入ってきて、医学っぽくなってきたなあと感じました。今とカリキュラムが変わっているので、今はどうなのかわかりませんが。
 

受験勉強を含め、学習は大変でしたか。また、挫折しそうになったことはありませんか。

 受験勉強は一生懸命しました。もともとは英語や国語の文系科目の方が得意なので、理数系科目は特に力を入れました。大学に入ってからの学習は、当然、授業はきちんと聞き、試験前は特に勉強しています。とにかくたくさん学ぶことがあるので、挫折を感じる間もなく、がむしゃらにやっていたら、いつの間にか5年生の臨床実習の時期になっていました。挫折するとしたら、2年生の解剖実習が大きなヤマかもしれませんね。

学生生活を振り返って印象に残った出来事はなんですか。

 部活と英国大学医学部への短期留学の経験です。
 部活は硬式テニス部に所属していました。3年生から4年生の間に「幹部」がまわってくるのですが、幹部の仕事は、他大学の同部活との交流や、西医体・九山など大会に関すること、OB・OGの先生方への連絡、合宿や部活毎のイベントなど、部の活動一切の手配や取りまとめです。部活には下に1、2年生、上に5、6年生が在籍しており、なかなか大変でした(笑)。大変なのは他の部活動、どの代でもそうだと思いますが。幹部の仕事で感じたことはコミュニケーションの大切さです。この経験は医師となった時に活きてくると思っています。
*西医体・九山…西医体は西日本医科学生総合体育大会で、九山は九州山口医科学生体育大会の略。西医体は夏、九山は春に開催される。医学部の部活生にとって最大の目標となるビッグイベント。

英国大学医学部への留学は、部活の先輩に参加された方がいて、とてもよかったと聞き、もともと英国が好きだった事もあって関心を持っていました。5年生になって前年度の報告書を読んだことで、より一層、学生の時に留学する機会を持った方がいいと感じました。留学までの準備に8ケ月を要し、詳しいことは当該年度の報告書に掲載して頂いていますので、ここでは割愛しますが、実際に渡航する前は、留学で何が学べるのか、帰国後は何を還元できるのかと考えていました。
 一番良かったのは、同様に留学する他大学の学生と交流を持てたことです。私の留学したニューキャッスル大学には4人が派遣され、留学した学生が2人一組で内科と外科を1週間ずつ実習し、その後の2週間を希望科で実習するというプログラムが組まれていました。2人1組で実習する利点は実習しながらお互いにフィードバックしあって、「これ聞いてみたいよね。」「これは日本とは違うよね。」など言い合えることです。このおかげで留学期間をより有意義に過ごせたと思います。その時の留学仲間とは、今でも同窓会ということで会っていますし、情報交換もしています。

留学で得られたことを具体的に教えてください。

 帰国後に価値観が広がりました。それは、「物事を当り前と思ってはいけない」ということです。


 医学という意味では万国共通なのかもしれません。ですが医療ということになるとその土地での文化的背景、社会的背景を含めた意味になると思います。今まで当り前だと思っていたことが、場所が変わるとそうでなくなることが多々あり、同じ日本でも地域によって違いがあるかもしれないと思います。患者さんへのアプローチも、自分のやり方が正しい、当たり前だと思う前に、一歩立ち止まって他のやり方はないのか考えてみようと思えるようになりました。日常生活でも自分の既成概念にとらわれないようにしようと思います。

 また、積極性も身に付きました。1カ月の留学期間という限られた時間でより大きいものを得たいと思い、言語的な難しさはあっても積極的に質問しようと心掛けて実習に取り組んでいました。帰国後も、「質問したいことを遠慮していたらだめだ」と思い、より積極的に物事に取り組めるようになりました。

これからの進路を教えてください。

 入学したときは精神科医、心療内科医を考えていたのですが、今は変わってきています。
 5年生の臨床実習で実際に患者さんに接したことが大きいとは思いますが、血液や腫瘍に関心を持っています。まだ固まってはいないのですが、研修を経て臨床医の経験を積んだうえで、患者さんのメンタルケアを含めた医療というものを考えていきたいと思います。他には、学生生活で横溝教授の医化学分野にお邪魔して経験した研究という分野にも興味があり、臨床医を経た後に研究職に就き、より多くの人に役立つ研究をしたいとも思います。まずは臨床医になり、これからの経験で将来を形作っていきたいと思います。
 医学科の仲間とよくいろんなことを話すのですが、感じるのは、医師としての将来を考える時に、自分の能力を困っている人に役立てたいと考えている人が大半だということです。

最後に医学を志す学生さんにメッセージをください。

 まずは受験勉強を頑張り過ぎて、燃え尽きないために、入学後のイメージを持つことが大事です。それから、入学してからの学生生活では、1~4年生まででは座学中心であまり感じないのですが、5年生からの臨床実習でコミュニケーション能力の大切さを痛感します。医学科でかたまらず、他学部学科との交流を持つ、バイトで社会性を身につけるなど、外を意識しておかないと、医学科の中だけで学生生活が終わってしまいます。コミュニケーション能力は、インフォームドコンセントやチーム医療が重要視される医学の現場ではとても大切です。意識的に身に付けてください。

 留学の経験は、自分を成長させ、視野を広げてくれます。私自身、感じたことですが、1、2年生の時から自分で情報を集め、留学しておけば良かったと思います。一緒に留学した他大学の方は1、2年の頃からフィリピンなど様々なところに留学していました。調べると学外にもたくさんのプログラムがあると思います。語学力に不安を感じている人も、それを理由に留学を諦めるのはもったいないです。受験勉強で基礎的な英語は身についていると思います。テニスに興味がある人は、テニスに関する英語の雑誌を読んでみるなど、興味のあるところから英語に馴染んでいくことをお勧めします。
 関心を向ければ、ラジオやテレビ、インターネットでも英会話を勉強できます。私は本が好きなので小さい頃から英語の本を読んだりラジオやテレビで勉強したりしてきました。ただスピーキングには不安があったので留学前は九州大学の馬出キャンパス内でも活動しているトーストマスターズというスピーチクラブに参加し英語能力を高めました。

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