在学生の声

在学生の声

勉強ができる人ではなく
賢い人になった方がいい。


平成24年度 医学科6年 藤本 侑希子さん

医学を志した理由を教えてください。

 医学部に進学しようと決めたのは、中学3年生のときに高校の理系コースに進学するか普通コースに進学するか決める時でした。
 それまでは、英語が好きだったので通訳などの英語を専門にする職業をはじめ、いろんな職業に目移りしており、産婦人科医をしている父の影響もあり医師もその中のひとつでした。コースを決めるには将来の進路も考えなければならず、臨床医の目の前の困っている人に直接的に役に立つことができることに魅力を感じ、医学部への進学を決めました。母の「英語を仕事にするより、英語で仕事をする人になりなさい」という言葉も後押しになりました。
 理系科目より文系科目が得意だったのですが、とにかく勉強しなければと思いました。
 

勉強は大変でしたか。

 受験勉強も医学科での勉強も、周りのみんなと一緒に励まし合ってやっていたので、ものすごく大変で大変で…という感じではなかったです。ただ、出身高校から医学部に行く人は少なかったので、校内での成績に満足してはいけない、というプレッシャーは常に自分にかけていました。

 大学に入学して始めに学ぶ一般教養では、入学前に「教養のある人間が素晴らしい!」というような本を読んでいたこともあり、授業はどれも楽しむことができました。授業で紹介された難しい哲学者の本を読んで、大学生になったのだと実感したことを覚えています。

 医学部としての勉強を言えば、勉強の仕方がわかるまで苦労はありました。高校までの勉強と違い、目に見えない(そして親しみのない)現象を概念的に理解しなければならないことが大変でした。高校の生物Ⅱと重複する内容も少しあるので、それらを勉強していればもう少し楽だったのかも知れません。タンパク、酵素、病気、薬剤の名前など覚えることもたくさんあり、特に部活でキャプテンをしていた時は勉強との両立が大変でした。今も国家試験を前に日々勉強していますが、時には飲み会をしたり、部活に行ったりとオンとオフの区別のできる人が多いなと感じます。
 

九大でよかったことを教えてください。 

 私は語学に興味があり、2年生から4年生の間、夏休みなどに受講できる語学の講義を積極的に受講していました。第二外国語のドイツ語の他に、古典ギリシア語、フランス語、ロシア語、オランダ語を学びました。医学部にいながらこういう講義が受講できるのは、文系の学部をもつ総合大学ならではの恩恵だと思います。
 
 それから、九大の留学生をサポートするアルバイトを通じ、留学生や他学部の方との交流をしました。九大には、外国からの留学生が、一年間香椎浜の留学生会館に住んで日本やアジアについて学ぶプログラムがあります。そのアルバイトは、プログラムに参加する留学生の日本での生活をサポートするもので、留学生との会話には日本語か英語を使用します。私は1年生の夏から3年生まで参加し、韓国人を2名、ロシア人を1名担当しました。
 韓国の学生を担当した時は、同じく韓国から留学している学生や、他学部のアルバイトの学生と交流を持つことができました。彼らとは今でも韓国を訪れた時に、その時の韓国の方のお宅に泊めて頂いたりして、交流があります。

 それから、5年生の春には、QRECのアントレプレナーシッププログラムに参加し、シリコンバレーで現地の日本人の講義を受けたり、スタンフォード大の学生とビジネスプランを出しあったりする機会もいただきました。6年生で参加したクリーブランド(アメリカ、オハイオ州)でのクリニカルクラークシップでは、改めて臨床医として渡米したいという思いも強くなりました。
 このように総合大学だと学部も人も多様で、選択肢が多いところがいいと思います。

英語能力を高めるためにしてきたことを教えてください。

 小さい時に少しだけ英語教室に行っていました。発音の基礎となるフォニックスをやったのを覚えています。中学、高校では、授業やESS(英語部)などが中心でした。英会話については、英検を受ける際に高校で面接の練習をしていただいたり、映画を見たりして練習しました。とにかく英語が好きだったので、自然にやっていた部分が大きいです。受験勉強では、とにかく数学や物理をやれと言われ、その気晴らしに英語を勉強するという感じでした。その甲斐あってか、留学生サポートのアルバイトをした時も日常会話程度は出来ていました。最近は娯楽も兼ねて、字幕なしで映画を見たりしています。

 それでも、クリーブランドクリニックで実習した際には、回診でのやりとりが半分ほど聞き取れず、苦い思いをしました。スピード、訛り、周囲の喧騒など、こればかりは慣れが必要だと感じました。

 英語を話す上でのコツとしては、アクセントを大切にすることが必要だと思います。発音がイマイチでも、アクセントと声量で会話しているような人は日本人に限らず、コミュニケーションできている気がします。どんな方法であれ、やはり継続していくことが大切だと思います。

部活について教えてください。

 大学では陸上部に所属しました。高校までは文化部でしたが、受験勉強の終わった開放感もあり、いつか挑戦したいと思っていた陸上競技を選びました。慣れない運動部で不安もありましたが、同級生や他の部員のお陰で何とか続けることができ、5年生のときには九州山口医科学生体育大会の800mで5位に入賞することが出来ました。また、ハーフマラソン・フルマラソン・トライアスロンにも挑戦し、フルマラソンではランニングの専門誌で20歳の部のランキングにも名前を掲載して頂きました。

 記念になるような成績を残せたこともう嬉しかったですが、さらによかったのは、OB/OGや先輩方から目上の人へのマナーを学ぶことができたことです。高校までは意識したことがありませんでしたが、社会にでる前に学べてよかったと思います。
 あとは体力がついたことですね。外科医は特に体力がいりますから。

これからの進路を教えてください。

 まずは、外部の病院で卒後臨床研修を受け、第二外科に入局し、大学院博士課程への進学を考えています。その後、米国に留学する機会を持ちたいと思っています。
 
 それから、私は移植医療について興味を持っています。これは6年生の春に行ったクリーブランドのクリニカルクラークシップでの影響が大きいと思います。移植医療に始めに興味を持ったのは、5年生の臨床実習で外科に配属された時ですが、クリーブランドで、アメリカでは移植医療が日本と比較してより人々に身近なものとなっているように感じ、将来の進路として現実味を帯びました。医学部に入学した頃は、産婦人科医や小児科医を考えていたのですが、今は自分が少しでもこれからの日本の移植医療について貢献できる人間になりたいと思っています。

最後に医学を志す学生さんにメッセージをください。

 今やっていることが何であれ、後々の自分の役に立つと思って頑張って欲しいと思います。
 
 受験勉強で言えば、例えば伸び悩んでいて苦しいと感じている人がいるとしても、それが乗り越えられた後は、その先でもっと苦しいことがあっても「あの時乗り越えられたのだから」と頑張ることができると思います。そして勉強ができる人ではなく賢い人になった方がいい。そのための基礎としても勉強は大切です。受験勉強でやっていることは、自分の教養につながるし、大学に入学したら、周囲の人間は皆同じ入学試験を突破してきた人間ですので、その受験での知識は、誰もが知っている常識であるといえます。
 それから大学に入学してからは、他学部の学生とも交流を持った方がいいと思います。医学部以外の方と話すと、何げない会話で驚かれたり、「外科って何?」という率直な疑問を投げかけられたり、いつも常識だと思っていることが、実は常識ではないのだと考えさせられることがあります。
 臨床医で大切なのは、患者さんの話に耳を傾け、自分の知識・常識に拘ることなく、柔軟な思考で患者さんに対応できることだと思います。そのためにも医学部以外の方との交流や自身が教養を身に付けることは、在学中も臨床医になってからも大切だと思います。
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