在学生の声

在学生の声

「どういう人になりたいか。」から
医師を選んだ。


平成27年度 医学科6年 小池 研太朗さん

医学を志したきっかけを教えてください。

 両親共に医師で、医師という職業が身近であったのですが、反面、簡単には選んではいけないとも感じていました。

 高校一年生の時、なんとなく悩んでいた自分に、学校の先生が「次世代リーダー養成塾」への参加を勧めてくれました。次世代リーダー養成塾は、企業の協賛で年に一度開催される合宿型のイベントで、セミナー形式で、企業などで活躍されている方たちの話を聞いたり、高校生の参加者同士でディスカッションをしたりするプログラムです。企業の方をはじめ、大学生もイベント開催のボランティアとして参加しています。そこで出会った他校の学生からいろいろな将来の希望を聞き、「では自分はどうなんだろう。」と自身をより鮮明に認識できるようになりました。そして職業ではなくどういう人になりたいかという視点から考え、「自分はやさしい人になりたい。」と思いました。医師は人を相手にし、損得抜きで人に優しくできる職業であるし、そう思うのであれば、医師を目指しても良いのではないかと考えました。他にもいろいろ迷いましたが、最終的には高校2年生の文理を選択するときに、医師を目指すことに決めました。また、国際ボランティアにも興味があり、出来ることが多い方が役に立てると思ったことも医師を目指した理由のひとつです。
 

受験勉強は大変でしたか。

 追い込まれている感じが大変だったと思います。医学部受験はいい点を狙うというよりは、点数を落とせない試験なのでプレッシャーは凄かったです。ですが、「部活のサッカーの試合で先輩と一緒に試合に出させてもらったときの方のプレッシャーの方がすごかったな、失敗しても自分ひとりのことだし。」と思うと、それも和らぎました。後輩に求められ、話すこともあるのですが、勉強をがんばった人はそれをうまく自信に変えられればいいし、勉強が足りないと感じた人も部活や他で経験したことに置き換え、うまく結果に作用できるようにすればいいのではないかと思います。食事などの基本の時間以外は一日中勉強していましたので、あの時にあんなに取り組めたことは今の自信につながっています。
 

入学してからの学習についてはどうでしたか。 

 医学部では、大まかにいうと、まず健康な体の仕組み、それから病気、病態について、そしてその治療法の3本柱を学びます。全診療科について学習しますから、興味ある科とない科では楽しさに差がでると思います。興味ある科についてはどんどん学習が進み、試験の範囲を超えて学習してしまい、かえって試験が危うくなったりすることもありました。興味の薄い部分についても理解できた瞬間というものはやはり充実感を感じますので、少なくともそこまでは学習するようと心がけていました。

 講義は、先生が既に常識として持っている知識や概念を学生は持っておらず、また講義のスピードも早く理解が追いつかなかったり、逆に丁寧な説明でも理解ができなかったりすることもありましたので、復習で間を埋めるということは必要でした。また、各科目別に学んでいきますので、それらを体系だって理解が出来ていなかったのですが、臨床実習に入る前のCBTに備えた学習でやっとそれらがつながり理解できたように思います。
 

部活動について教えてください。

 部活動は救急救命のワークショップを運営するKLSA(Kyushu University Life Support Association)に入っていました。ワークショップでは主に学生がインストラクターになり参加者に教える形で一次救命(BLS)や二次救命(ALS)について学びます。全国の医学部に同様の救急救命のサークルがあり、ワークショップの開催では大学間でインストラクターや参加者の参加を呼びかけ、相互に協力し合って開催しています。KLSAは2008年に設立され、年に4回のワークショップを開催していて、秋の九大祭での開催は、一般の人を対象にして救急救命を広めていますので特に力を入れています。

KLSA ワークショップ
KLSA ワークショップ
 週に1回集まり、次のイベントの開催に向け話し合いを進めます。話し合いに参加するメンバーは10名程度ですが、他の部活と兼任などでワークショップ当日のみ参加の人もいて、他大学からの参加者とあわせ、多いときで100名以上になることもありました。特にALSのときは機材等も使用し、大掛かりな開催となりますので、泊まりがけで行うことが多かったです。準備は、他大学への開催の呼びかけを始め、病院などの各施設への機材貸与のお願いや機材保管場所の手配、交通、宿泊の手配やなどや、当日使用する栞や講義スライド、テキスト等も全て自分達で作成しますので、開催までにやるべきことは山積みでした。こうした一連の流れをとおし、メールマナーなど社会人としての常識やPC操作等の事務スキル、後はみんなで一緒にひとつのイベントを作り上げていくことを経験出来たのは大きかったと思います。医師は患者さんをはじめ、コメディカルスタッフなど人との関わりを持って働いていく職業ですから。運動部など部活動に参加している人も、大会への参加でこうしたことを経験しているようです。

 また、他大学の学生ともワークショップ以外でも会う友人となり、会える回数は少ないですが会うと熱く語り合ったり、くだけた話をしたり、いい距離感で付き合える友人になることが出来ました。卒後初期研修の病院の情報交換をしあったりしましたし、結果、自分はKLSAの活動の中で出会った先輩が勤務されている病院での初期研修を決めました。

医学部外での活動について教えてください。

 自分は人への興味が深く、また医学部が閉じたところであるとも感じていましたので、色んな人と会ってみたいと思い、さまざまなところに顔をだしていました。企業インターンの説明会に参加してみたり、社会人の読書会に参加してみたり、家の近所のシェアハウスに遊びに行ってみたり。医学部では出会えない人との出会いも多くありました。

次世代リーダー養成塾
次世代リーダー養成塾
 高校生のときにお世話になった次世代リーダー養成塾にも大学生サポーターとして参加しました。高校のときはディスカッションも初めてで、議題の経済についての知識もなく、いい事なんて言えず、凄いと思う年上の学生の人に食いついて、最後にはその場で吸収したことを言えるようにとある意味で必死に参加していました。一方で今回は参加した立場も違い、広く全体を見渡して、参加高校生が楽しめているかを考えサポートしました。目線も変り、大人はわかってくれていたんだなと感じましたし、開催に当たって肉体労働も事務作業も多く、こんなにサポートしてくれていたのかと改めて感謝しました。
ニカラグアの医療ボランティア
ニカラグアの医療ボランティア
 国際ボランティアにも興味があったので、ニカラグアの医療ボランティアにも参加しました。そこではその活動を始めた方から直接話しを聞かせて頂け、単純な気持ちだけあれば始められることを知り、自分は結構考えこんでしまう方なので新鮮に感じました。実際にボランティアに携わり、また一線で活動されている方の話を聞くことが出来、自分に落とし込んだときのイメージを持つことが出来ました。疲弊していく一方ではなく自分の生活も支えていける仕組みを作ることが出来れば、発展国での生活自体への抵抗はなく、より現実的なビジョンとして感じています。

 後は文章に関わることで、九大図書館のキューターのアルバイトや雑誌の学生インタビューのインタビュアーの経験もしました。キューターの方は学生が専攻している専門の知識をまとめ、ウェブページに寄稿するものですが、面接で「本が本当に好きですね。好きな本についても書いていいですよ。」と言われ、辻村 深月先生について書いたりしました。雑誌のインタビュアーの方は、ドクタラーゼという雑誌に掲載させて頂きました。こうした活動をする中で、雑誌の編集の仕事も面白かったのかなと思います。

今後の進路について教えてください。

臨床実習中
臨床実習中
 初期研修では全部の診療科を回るのですが、その後の将来は小児科を希望しています。もともと希望の診療科があって入学したわけではないのですが、自分はやっぱり人と密に関わっていきたい、外科の手術室よりは内科の診療室ということで、まず内科系に絞りました。そして臨床実習でベットサイドを経験して行き、小児科が好きだなと感じました。次世代リーダー養成塾に参加したときもそうだったのですが、「この子はどんな風に成長していくのかな。」とよく思いますし、診療科の中でも小児科は特に患者さんに将来を意識した治療を行っていくように思いますので、そのように診療に携われることにやりがいを感じます。さらに小児科は患者さん本人だけでなくその親御さんとも密に接していく必要があり、たくさんの人の中で医師としての役割を果たしていくことにも魅力を感じます。
 
 初期研修先はKLSAの活動で出会った先輩が勤められている静岡の病院です。見学に行かせて頂き、小児科と救急の施設に力を入れており、勉強できると思い、そこに決めました。在学中は、言い方は悪いですが、ふらふらと医学部外のいろんなところに顔を出していて、卒業後は東京の方にも行ってみたい、いろんな人に出会ってみたいとも思ったのですが、このままではろくな医者にならないと自分を戒め、静岡には縁もゆかりもなかったのですが、初期研修先は忙しく勉強になりそうなところに決めました。

 大きな意味での将来といえば、医師としての技量を活かして、何かに結び付けていけたらと思っています。国際ボランティアもそうですし、何かとコラボという形で発展させていければ面白いと思います。執筆したいという気持ちもありますし、将来何かに繋げられればと思います。

最後に医学を志す学生さんにメッセージをください。

 医学部受験を目指している方は学習面ではしっかり取り組まれていると思いますので、その点で僕がいうことはないと思いますが、なぜ自分が医師になりたいかということについて考えてみて欲しいと思います。病気になって治療してくれた医師に憧れたから、などのちゃんとした理由でなくて大丈夫です。例えば、収入を高めたいからなど人前でいうには気が引ける理由でもいいと思います。僕の「やさしい人になりたい。」も受け取る人によっては恥ずかしい理由なのかもしれませんが、自分と向き合い突き詰め、明確にしておけば、苦しくなったときに、「こうしたいから、今を乗り切ろう。」という風にいい意味での割り切りができるようになります。そういうものがなく、成績が届きそうだからということだけで医師を目指すのでは後半がかなりきつくなると思います。

 また、スタンダードな医学部生は授業、部活にしっかり取り組み、忙しく充実した学生生活を送っています。ただ自分はそれに当てはまらず、医学部外の人との時間を大切にしたり、人以外にも興味を持った本や音楽、映画などの色んな世界に触れるようにしてきました。好きなことをやっていると言えばそれまでですが、それは自分の糧になり何かにつながるのではないかと感じています。第一に働き出すとそういう時間は限られてきますし、学生のうちにそういう時間を持つことも大切だと思います。

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