在学生の声
病気を治してあげることが出来たら、
どれだけの力を与えることができるのだろう
平成29年度 医学科6年 宮内 雄太さん
医学を志したきっかけを教えてください。
受験勉強は大変でしたか。
入学してからの学習について教えてください。
3年生で臨床の講義が始まってからは、本当に面白いと感じました。それまでにやった基礎医学が、こうやって臨床に役立っていることがわかり、学習の意欲が更に沸いてきたと思います。 その後、5、6年生での臨床実習へと移っていったのですが、臨床実習では本当にやりがいを感じ充実していました。
臨床実習について教えてください。
臨床実習内視鏡練習
九州大学病院での臨床実習の他でも、6年生のはじめに韓国キョンサン大学にて臨床実習に参加しました。そのため、その後にあった九州大学病院での実習では、より多くの経験を積むため、韓国での診療科を外した、放射線科、耳鼻咽喉科、総合診療科、整形外科を希望しました。 どの診療科もそれぞれに特徴があり、実際に現場にいると実感できる点で臨床実習はとても大切だと思いました。
総合診療科では、どの科で受診してよいのか分からない患者さんを診察し、必要の場合は専門の診療科への紹介を行います。そのため、幅広い知識が必要となり、診察にあたる医師の先生も専門医認定を複数の診療科で取得していました。総合診療科の古庄先生は、感染症を得意とされており、直接お話を聞かせて頂く機会もあり、この診療科では、病気の診断についてとても学ばせて頂いたと思います。
放射線科では、画像診断について鍛えて頂きました。実際のCT画像から診断をつける課題を出して頂き、学生たちで色んな文献を参考にし、「ああでもない、こうでもない。」と、四苦八苦しながら、診断名をつけ、先生に解説をして頂く、これを繰り返し行いました。この経験はためになると同時に、「ちょっと医者っぽい。」とも感じ、充実して取り組ませて頂きました。始めは画像をどう見るかすら分からなかったのですが、数をこなし、慎重に診断を行った結果、正答率は意外に高く、やる気を高めることにつながりました。この画像診断も後々はAIの技術が参入してくるであろうことを聞き、機械技術はめまぐるしく進歩しているので、これからの医用工学の発展も興味深く、楽しみに感じています。
それから、耳鼻咽喉科、整形外科では外科手術を必要とする患者さんが市中病院から集まってきており、大学病院としての重要な役割を感じました。耳鼻咽喉科では、人工内耳の埋め込み手術を見せて頂きました。人間の頭部には多くの神経が集まっており、当然、耳の手術は慎重に行う必要があります。実習期間中に脳外科のカンファレンスにも参加させて頂き、脳外科と連携を図りながら行っていることを肌で感じました。整形外科では、人工関節の手術を見させて頂きました。整形外科で慎重に取り組んでいることのひとつに感染症の防止が挙げられます。人工的なものを人体に入れるため、感染症を引き起こす場合があり、その場合、数度の手術を余儀なくされるなど、患者さんへの負担が大きくなります。そのため、人工関節の手術は通常の手術着の上にさらに防護服を着用して行っていました。
キョンサン大学での実習についてお聞かせください。
キョンサン大学の学生と飲み会
また、毎日、実習が終わってから5、6年生の学生全員が集まり、数名の学生が実習での患者さんの症例について、ひとりひとり発表する時間がカリキュラムとして設けられていました。発表者の実習先からは医師の先生も参加し、また発表しない学生も、質問者として指名され、発表する側も聞く側も真剣に取り組んでいました。臨床実習は、日本と同じく見学が主になるのですが、発表するために症例についてより深く調べる必要があり、症例を見て調べて学習し、生徒間でフィードバックするという流れができており、これが学生のモチベーションの高さにつながっているように感じました。
韓国で実習を行った一番の収穫は、自分の学習のモチベーションも高められたことです。韓国では同じ学年でも僕より年上の学生も多く、人として成熟しており、医師として勤務することをより現実のものとして捉えられているように感じました。その現実感を僕も感じることができ、同時に「負けてられないな。」と思いました。
医学部以外の活動での良かったことを教えてください。
部活や九大祭の実行委員が挙げられます。
1年生と2年生の時に、伊都キャンパスで開催される九大祭の実行委員をやりました。高校のイベントだと、なんだかんだで先生が手伝ってくれたのですが、大学だと出店の募集やいろいろな手続きなど、全て自分達でやることが当然で、一から自分達で作り上げていく経験ができました。前日は、泊り込みで作業しないといけないほど、がっつりやらないと終わらず大変だったのですが、医学部外の友人ができ、とてもいい思い出になりました。今でもその仲間と普通に呑みにいきますし、何気なく機械系の話や「今、蚕育ててる。」などの医学とは違う世界の話を聞けたりすることが楽しいです。
医師になったら、患者さんなど数多くの人と接していくと思います。自分の考えも及ばなかった人と出会うことも多いと思うので、垣根を作らず多くの人と話す機会を学生の時から持っておくことが、後々役に立つのではないかと思います。
空手部では、僕はあまり強くはなかったのですが、団体戦で参加して自分が一勝をあげることで、チームに貢献できたときは嬉しかったです。空手は個人戦のイメージが強かったのですが、僕の場合は一人で戦うのは辛く、チームで一緒に目標に向かっていくことこそ楽しいと思いました。
今後の進路について教えてください。
山口の関門医療センターで卒後研修を行います。ここを希望した動機は、一番は見学に行ったときの雰囲気が良かったことですが、他には、いろんな診療科で万遍なく実習できること、福岡県から出てみたい、そして先輩に九大の卒業生がいらしたことなどです。
その後の希望ですが、医師になりたいと思ったきっかけでいうと外科医かもしれませんが、韓国、九大での臨床実習などで、外科以外のいろんな診療科への興味が沸いてきています。僕は、臓器でいうと心臓が好きです。もっと複雑な機構で動いていると思っていたのですが、勉強していくと思っていたよりも素直に動くなと思いました。血の循環が少ないと回転数を上げて補ったり、原理的には単純でいかにもポンプという感じが好きです。韓国で循環器内科を回らせてもらった際にそう思いました。その他では小児科での実習で、子供の病気を治すことは、その子の将来を創っていくことだと感じ、それもすごくやりがいのある仕事だと魅力を感じています。
臨床実習で患者さんと話した際に、学生の僕が分かる範囲で伝えたことにすごく喜んで頂いて、「これでちゃんと病気を治してあげることが出来たら、どれだけの力を与えることができるのだろう。」と思いました。患者さんを楽にしてあげたい、元気をあげたい、いまいちふさわしい言葉が見つからないのですが、患者さんをいい方向に導ける医師になりたいという思いを持ちながら、これから先の卒後実習で希望の専門科を探っていきたいと思います。
最後に、医学を志す学生さんにメッセージをください。
医学科の後輩には、「今学習していることは全部大事。」と伝えたいです。とは言っても、領域の広い学問なので、どこから手をつけていけばいいのかと思うかもしれません。方法としては、何か興味があることを見つけて、そこを起点に勉強を進めていくというのもひとつかもしれません。例えば、僕の場合は、心臓などの循環器に興味を持って、次は心臓との関わりの強い肺に移って呼吸器、胸部X線、そして肺炎から感染症など、そんな感じで関連性を持つと印象に残りやすくイメージも捉えやすいのかなと思います。覚える量は今までの比じゃなく多いので、単純な暗記だと脳が追いつかないと思います。
それから、受験生の皆さんには2つ伝えたいと思います。ひとつは、入学してからも勉強は続けていかないといけないけれど、大学に入ってからの方が、好きな勉強に取り組むことができるということです。受験と違い、点数で切られないための学習ではなく、割と余裕を持って学習することもできると思います。学ぶ範囲も無限に続くので、ある意味自分で学習範囲を決められるとも言えますし、そうやって学んだことは巡り巡って自分の役に立つことばかりです。そういう自分の楽しみとなる勉強を大学に入ってからはやることができます。 もうひとつは、興味があれば部活などにも取り組みながら受験に向かっていくことも良いということです。僕は高校の時は部活をやっていなかったのですが、大学で経験してやってても良かったかもと思いました。結局、受験勉強に使った時間は部活生と変らなかったかもしれないし、何より楽しいと思います。部活と受験勉強の両立は苦労も多いと思いますが、成長につながるし、受験でも一生懸命に取り組む習慣は後半の伸びしろにつながると思います。