学生生活

2015年08月18日

専攻教育

平成27年度研究室配属(3年)

 九州大学医学部医学科、生命科学科では3年次前期に研究室配属Ⅰのカリキュラムを行っています。これは将来研究者として活躍するにあたり、早期に実際の研究分野に身を置き研究チームの一員として働くことにより、研究者としての自覚や倫理観の養成や、研究室での基本的な知識やルールを学ぶこと、また、協調的な学習環境の中で問題解決能力を高め、生命医学領域に対する学習意欲の向上をめざすことを目的としています。

今年研究室配属を終えた4名の学生の感想文をご紹介します。
早期研究室配属を終えて
医学科3年 尾﨑 雄一

  私は大学進学時に医学研究についても関心があり、研究室配属を楽しみにしていました。基礎研究の教室で現場の雰囲気を肌で感じたいと思い、また生化学の授業に興味を持ち、医化学分野を希望しました。

  研究室というと実験室にこもってピペットで試薬を操作するイメージにとらわれていましたが、1ヶ月のスケジュールをみて、まず最新の論文を紹介するセミナーというものを知りました。医化学教室では週に2回のセミナーが開かれます。担当される方が最近の論文の中から選ぶのですが、聞いている私にはやはり難しすぎました。しかし丁寧に説明してくださって理解できるところもありましたし、またわかるわからないよりも、研究室とは論文を読み議論を交わすところなのだということを身に染みて感じました。今現在何がどこまでわかっているかを知るのは不可欠で、自分の研究に反映させるためにも知識を仕入れることの大事さを知りました。私自身も論文を1本担当してパワーポイントで発表しましたが、論文の読み方やスライドの作り方がわかり、よい勉強となりました。

  メインとなる実験では、特殊な障害乗り越えDNAポリメラーゼを発現、精製させました。最終的な目的はこのポリメラーゼとシークエンサーを使ってDNAのヒドロキシメチルシトシンを検出することでしたが、1ヶ月の配属期間でそこまでは間に合いませんでした。タンパク質1つを発現させるだけでも、多くの段階と時間を費やすことに驚きました。途中で正確に試薬で処理されているかを電気泳動で確認しながら、それでも私の場合はタンパク質は確かに発現されているけれども酵素活性を失っていました。配属期間中の実験はきちんとやればうまくいく保証がありますが本来は手探りで進むもので、研究の難しさを知りました。タンパク質の発現はそれが出来上がって終了ではなく準備段階のようなもので、研究が長期間かかることにも納得がいきました。短い期間ではありましたが実験の基本的操作を学ぶことができ、また目に見える形で成果が表れて楽しい研究室配属となりました。

  最後になりましたが配属の準備をしてくださった伊藤先生、実験を指導してくださった三浦先生、発表を手伝ってくださった岡田先生をはじめ、研究室の方々に大変お世話になりました。感謝申し上げます。


医化学分野のウェブサイト
早期研究室配属を終えて
医学科3年 吉野 赴斗史

 
研究風景
  今回の早期研究室配属で私は幹細胞再生修復分野の研究室に配属されました。ここでは主に造血幹細胞についての研究をしていて、一か月という短い期間ではありましたが新井先生と細川先生のもと貴重な体験をさせて頂きました。最近のニュースなどで幹細胞の研究がよく注目されていて私は幹細胞について興味を持っていたが漠然としか知らずにいたのですが、今回幹細胞の研究に直接関わることができ大変勉強になりました。

  今回私が研究したテーマはDNAのテロメアを保護する物質の一つであるPot1が造血幹細胞の分裂と分化に与える影響を明らかにするというものでした。新井先生と細川先生の指導のもとこの研究に深く携わるができました。というのも実際にいろいろな研究作業を自分で行うことができました。実験マウスからサンプルとなる骨髄を取り出すことからはじめ、細胞の染色、遠心、実験器具の作成など貴重な体験をさせて頂きました。その中でも二つに分裂した幹細胞の仕分け作業が最も印象的でした。実験マウスから取り出した骨髄中の細胞の遠心を繰り返し、抗原抗体反応や染色作業によって得た造血幹細胞を数日一定の温度下に置くと二つに分裂します。二つの細胞を専用の機器を使ってそれぞれ違う容器に移し培養をし、二週間後に分裂した細胞の分裂、分化の様子を観察、分析するというものでした。一か月の研究の結果、Pot1を加えることによって、造血幹細胞のコロニー形成能力を維持できることが示唆されました。実際にこの研究の最初から最後まで関わったため研究の経過や結果にすごく興味を持つことができたので、最後に予測と近い研究結果が出たときは本当にうれしかったです。

  一か月という短い期間でしたがこの早期研究室配属で私は大変貴重な経験をさせてもらい、すごく充実した楽しい時間をすごすことができました。大学入学後、医学の知識は日々授業や実習などで学びますが、実際に研究や臨床の現場にはほとんど関わることがありません。今回の期間で実際に研究の作業に参加し、研究室の先生方から様々な研究現場の話をきくことで、研究のイメージができるようになりました。幹細胞再生修復分野の研究室に関わることができて本当によかったと思います。
最後に、ご指導していただいた新井先生と細川先生をはじめ研究室の方々には心より御礼申し上げます。


細胞再生修復分野のウェブサイト

早期研究配属 感想文
生命科学科3年 原岡 由喜也

 
研究の様子
 
 
研究室の皆さんと
  私は今回の早期研究室配属で生体防御医学研究所細胞統御システム分野の研究室に約1ヶ月間お世話になりました。私がこの研究室を希望した理由は、九州大学で厳しいと言われる生体防御医学研究所に1ヶ月間身を置くことで今までより成長できるのではないかと思ったから(建前)ということと、この研究室のホームページが面白く、一体どんな研究室なんだろうかと興味を持ったから(本音)です。
この1ヶ月間で具体的にどういうことを行ったのかというと、前半の2週間ではPCRや電気泳動、ウエスタンブロットという研究者として必要な実験手技からゼブラフィッシュの受精卵にモルフォリノアンチセンスオリゴをインジェクションするというこの研究室で特徴的なことまでを幅広く体験しました。
  
  後半の2週間では石谷先生から「Wnt/β-cateninシグナルの新規制御因子候補の解析」というテーマを与えていただきました。仮説をもとにデザインした一連の実験を行い、実験結果の解釈や、次に行うべきアプローチなどについて石谷先生とディスカッションをしました。自分たちが実際に実験に取り組んでみることで、ひとつの研究のプロセスについて直に知ることができました。
また、この期間に私は人生で初めて学術論文を読み、研究室配属の最終日に石谷先生と同級生2人の前でその内容についてパワーポイントを用いて発表を行いました。はじめは論文の英語量に加えて専門用語や独特な言い回しに苦労して、その内容をなかなか理解できない状態でしたが、石谷先生に論文について質問をしたり、自分で調べていく中で段々とその論文に何が書いてあるのかを理解できていきました。また、その際に石谷先生からどういった点に注目して読んでいくのが良いかという論文の読み方も教えていただきました。
  
  今回の早期研究室配属を通して、ネット上の情報などでは知ることのできないその研究室の雰囲気を体感することができました。また、先生や院生の方々とお話をしたり、間近でその姿を見ていくなかで、今までは曖昧にしかイメージできなかった研究生活というものをより具体的にイメージできるようにもなり、とても有意義な1ヶ月を過ごすことができました。
  
  最後に、約1ヶ月間という短い間でしたが、実験の原理や方法などを私たち学生が納得いくまで指導して下さった石谷先生や研究室の方々に心から感謝を申し上げます。



生体防御医学研究所細胞統御システム分野のウェブサイト
早期研究配属 感想文
医学科3年 大石 涼

 

 
  今回の研究室配属で、私は情報生物学の須山先生の研究室に配属されることになりました。ウェットな実験ではなく計算機による解析によってゲノム情報を有効に利用しようという点に興味を持ち、この研究室を希望しました。

  この研究室では、ゲノム解析から遺伝子発現の制御を調べる研究を行っています。その中で私たちが行ったのは、①エクソーム解析とそれに関する論文の読解、②メチローム解析、③RNAシーケンス、④ゲノム情報の取得法についてです。解析は次世代シーケンサーというDNAを増幅して塩基配列を読み取る操作から得られた情報を用い、それをもとにエクソン領域の切り出しやDNAメチル化の判定などを行いました。そして得られた結果とその解釈を最後に英語でまとめたパワーポイントでのプレゼンという形で発表しました。

  計算機による解析を行うため、まずは各自のPCにLinuxという計算機を導入し、簡単なプログラムを作ってみるところからスタートしました。私はプログラミングの経験がなく、スキルも持ちあわせてないので不安はありましたが、それでも丁寧に教えていただきながら進めることができました。それから、ヒトやマウスのゲノムデータをダウンロードし、その信頼性を調べたり、必要な部分を切り出したりという操作をすべてプログラム上でやってみました。それをゲノムブラウザ等で視覚化すると、膨大な量のデータをゲノム領域ごとにまとめて見ることができました。そのような操作からたくさんの情報が得られましたが、それをどう解釈するかということも苦労しました。また、ゲノム上のどの遺伝子のどの塩基がどう変わっているとある病気に関わってくるのか、と疾患原因の遺伝子探索を行いながら、1塩基レベルで解析できることに驚きました。ヒトとその他の種間での、また同じ種の中で発生段階ごとでの遺伝子発現の違いも解析し、それがどのような意味を持つかなども検討しました。どれも私にとって今までにやったことのないものでしたが、常にやりがいを感じながら行うことができました。

  1か月ほどの短い配属期間でしたが研究室配属を通して計算機によるドライな解析を体験し、実際に研究している先生方のお話も聞けて、その楽しさに触れることができました。コンピュータを用いることで医学の研究をできるのは大変興味深かったです。さまざまなことが学べて、さらに学習意欲にとっても刺激になる濃い時間となりました。お世話していただいた研究室の方々にお礼を申し上げます。

生体防御医学研究所情報生物学分野分野のウェブサイト
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