学生生活

2018年03月26日

その他

医学部生のプロジェクトが2つの海外コンペで受賞(医学科4年 飯塚 統さん)

  医学科の学生を代表とするプロジェクト「Deep Learningによる病理画像診断ソフトの開発」(代表:飯塚 統 医学部4年)が、海外の2つのコンペにおいて受賞に輝きました。
  このプロジェクトは、本学ロバート・ファン/アントレプレナーシップ・センター(QREC)が行う「チャレンジ&クリエイション(C&C)2017」(http://qrec.kyushu-u.ac.jp/cc/)に採択されており、その支援を受けて行われたものです。
  
「Deep Learningによる病理画像診断ソフトの開発」

プロジェクトメンバー:
  飯塚 統(いいづか おさむ)医学部医学科4年
  平野 才人(ひらの さいと)医学部医学科4年
  野方 保孝(のがた やすたか)医学部医学科1年
  三枝 洸介(さいぐさ こうすけ)工学部機械航空工学科4年  
  
受賞結果

  「Live Sharks Tank®️Episode 53」 優勝
  「Asian Night – Pitch Event by Promising Asian Startups」 準優勝
 
  
   そこで今回、代表の飯塚さんにプロジェクトの詳しい内容についてお話を伺いました。
1. 受賞おめでとうございます。今回の受賞について詳しく教えてください。
  ありがとうございます。今回の2つのコンペはアメリカのカルフォルニア州で開催されました。ひとつは昨年11月16日 (木)(現地時間)に開催された「Asian Night – Pitch Event by Promising Asian Startups」です。このコンペは、これから活躍するスタートアップ(※1)と起業家、投資家などをつなぎ、アジアにおける新興成⻑のためグローバルミッションを持つリーダーのコミュニティを構築することを目的としたものです。アジア、アメリカの9チームの中から、準優勝の評価をして頂きました。(※1:新しいビジネスモデルを開発し、ごく短期間のうちに急激な成⻑を目指す独立した人々のチームや小集団 のこと)
 
  もうひとつは、翌日の11月17日(金)(現地時間)に開催された「Live Sharks Tank® Episode 53」 です。こちらはアメリカのTVのピッチコンテスト(※2)になり、このコンテストからはSnapchatをはじめとする世界的に有名なスタートアップがいくつも誕生しています。業界の専門家や投資家、起業家などからの投票により評価が決まりました。アメリカやロシア、アジアの国々から15近くの強豪チームが揃った中、優勝という高評価をして頂きました。(※2:「ピッチ」とは「プレゼンテーション」から更に要点を絞り、より短時間で明確に相手に内容を伝えるもの。)

  私たちのプロジェクト「Deep Learningによる病理画像診断ソフトの開発」は、慢性的な病理医不足とそれに伴って病理診断結果が出るまでに長期間を要しているという現状の問題点について、AI技術を用いた病理画像診断ソフトによってその解消を図るというものです。明快な解決方法や、大企業に対抗するためのマーケティング手法、技術力とこれまでの実績、また病理医不足の問題が一般の人々にも大きく関係しており、巨大な世界市場へビジネスが拡大する可能性があることから高い評価を頂き、今回の受賞につながったと思います。
 
2. Deep Learningとはなんですか。
  Deep Learning(深層学習)はAI(人工知能)を用いた機械学習の分野で用いられる新たな手法です。たくさんのデータの中からAI自らが必要な特徴となる要素の抽出を行い学習を進めていきます。人工知能の機械学習の方法のひとつが Deep Learningと思ってください。機械学習では、特徴の着目点を与える必要があるのですが、 Deep Learningではその着目点も AI 自らが見つけます。より人間の脳に近いものであるといえます。AI の発展が目覚しい現在、Deep Learning は最も盛んに利用され、そして研究されている分野のひとつになっています。
 
  
3. このプロジェクトを立ち上げようと思ったきっかけはなんですか。
  Deep Learningを用いた学習では、とりわけ画像認識の分野の発展が目覚ましく、今日ではすでに人間の認識精度をも超えつつあるという報告がいくつも出てきています。病理画像診断にDeep Learningを用いるという試みは近年増えてきつつあるのですが、国内・国外ともにまだ製品として完成されたものがないというのが現状です。そこに挑戦したいと思ったことがこのプロジェクトを立ち上げようと思ったきっかけです。
  この開発のキーのひとつとなるのが、『Deep Learningの学習に用いる病理データ』ですが、本プロジェクトでは九州大学病院で取り扱う様々な症例の病理標本を活用させて頂いています。Deep Learningを病理診断という目的に即して最適化と改良を行い、実際の医療に貢献できるようなプロダクト開発を進めています。



4. プロジェクトの進捗状況を教えてください。
  Deep Learningを病理診断において最適化するために、特に腎臓にフォーカスして、様々な疾患を認識、区別するための学習を行ってきたのですが、その精度はかなり上がってきています。腎臓においてはある程度見通しがついたので、今は他の臓器の疾患についても学習を始める準備をしています。学習にあたっては、今年度より本格的に運用を始めた九州大学のスーパーコンピューターシステム「ITO」を利用しています。
  また、プロジェクトを進めていく中で、病理画像診断ソフトを開発するスタートアップとして、メドメイン株式会社(福岡県福岡市)を1月11日に設立致しました。
 
  
5. プロジェクトの今後の予定や将来的な展望などを教えてください。
   病理診断の分野にAIが入っていくことで病理医の先生方の負担を軽減し、病理診断のワークフロー全体の迅速化と診断精度の向上に貢献出来ることを目指し、2年以内の製品化を目標として、実際の医療現場で活用できるように開発に力を入れていきます。  
  



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