学生生活

2011年08月01日

国際・留学

Cleveland Clinicにおけるクリニカル・クラークシップ

消化器・総合外科(第二外科)では、今年度より米国クリーブランドクリニック移植外科での実習を6年生のベッドサイド教育に取り入れました。平成23年度はクリニカルクラークシップ期間内の4期に分かれて、合計8人の学生が参加します。この実習は、クリーブランドクリニック・Charles Miller教授(移植外科)の協力により実現したものです。現地でスタッフ医師として勤務している当教室出身の橋本宏治先生(平成7年九州大学卒)が現地でのコーディネートを担当して頂けます。教育プログラムとしては、脳死肝・小腸移植ドナーおよびレシピエント手術への参加、ICUおよび病棟での移植外科診療への参加、セレクションコミティーや病理カンファレンスを含む各種カンファレンスへの参加等となっています。日本とは全く異なる米国での外科臨床に触れることは、将来にとっての貴重な財産になると思います。 

 

「文責:消化器・総合外科(第二外科) 前原喜彦」



 
今年度から九州大学第二外科でも海外留学プログラムが取り入れられ、自分は2011年6月6日から6月29日までの3週間ほどアメリカのクリーブランドクリニックへ留学させていただきました。クリーブランドクリニックでは自分たちの先輩にあたる橋元先生がアメリカの医師免許を取得して一般外科・移植チームのAttendingとして勤務されていて、滞在中は橋元先生が色々と面倒を見てくださいました。また、外科の多くの医師、看護師の方々が満足に英会話のできない自分たちを快く迎えてくれたおかげで、毎日充実した見学実習を行うことができました。ぎこちない英語でも学びたいという意志を持って臨めば、海外でもしっかり学ぶことができると感じました。
  クリーブランドクリニックはアメリカでも有数の病院との評価を受ける大病院で、まず到着したときにはその規模の大きさに驚かされました。クリニックには、クリーブランド以外のアメリカだけでなく世界中からも患者さんが来られるということで病院キャンパス内にはホテル、宿舎があり、また広いキャンパス内の移動が患者さんの負担にならないようにシャトルバスも定期的に運行されています。また、病院のスタッフの親切さにも感銘を受けました。患者さんへのあいさつや介助など大変行き届いていて、このような医療チームではないスタッフの働きぶりも病院の質の向上に必要な要素なのかもしれません。
3週間の実習内容ですが、毎日の回診とカンファレンス出席、手術・外来見学が主でした。回診は毎朝6時から医学生とインターンの先生がまず患者さんのその日の状態を確認し、その後行われるAttendingの先生による回診に備えます。アメリカではみんな小さい頃からプレゼンテーションの訓練を受けているため、相手に伝えるべき情報をコンパクトにまとめる能力に長けているそうです。アメリカと日本の医療には多くの違いがあると言われますが、回診風景もその多くある違いの一つでした。日本ではほとんどの病院で医師のみで回診を行っていますが、アメリカでは医師だけではなくその他のスタッフも交えて回診を行っています。医師のサポート役となるPA(Physician Assistant)、薬剤師、患者さんと医師の間の橋渡し的存在のコーディネーターなど、患者さんが入院してから退院するまですべてのスタッフが一つのチームとして治療に臨むということを象徴する風景だと思いました。
また、アメリカでは移植の主流となっている脳死移植の現場にも立ち会う機会がありました。日本では月に全国で5例しかない脳死肝移植が、アメリカではクリーブランドクリニックだけで月に10数例行われているそうです。確かに、脳死移植については民族間の文化、考え方の違いがあり日本ではなかなか普及が進まないことも頷けますが、健康体のドナーの方に大きな傷が残る生体肝移植とドナーの方の善意が余命わずかと言われた患者さんの新たな命として受け継がれていく脳死移植の両方を見た自分としては日本でも脳死移植がもっと普及することを願わずにはいられません。

アメリカの医療をこの目で見てみたいと願って参加させていただいた今回の海外留学でしたが、想像と違わず素晴らしい医療システムを持っており、とても刺激的なものとなりました。また、日本人としてアメリカで多くの海外の医師と共に働いている先輩の姿を見て自分も将来同じ舞台に立ってみたいという意欲も掻き立てられました。3週間と短い期間でしたが、今回の経験が自分の医師としての将来に大きな影響を与えることになることは間違いありません。貴重な機会を与えてくださった前原教授、橋元先生、第二外科の先生方には大変感謝しております。  

クリーブランドクリニック

実習中の様子

橋本宏治先生と修了証を手にして


 
去る2011年6月6日から6月29日の期間、私たちは九州大学第二外科のご厚意にて米国オハイオ州のクリーブランドクリニックでの実習を経験することができました。ここで経験したことはとても多く、すべてを正確に言葉に表すのは大変難しいのですが、この感動を少しでも伝えられたら幸いと存じます。 

米国での実習を終えて思いましたことは、一つには、米国の医療システムが巧妙に作り上げられているということです。わが国でも、国民皆保険制度などは他国から高い評価を得ていると聞きますし、実際に大学や市中病院での実習をすると先生方の衛生向上への高い志を感じることがしばしばあります。今回、米国で感じた素晴らしさはそういった社会保障の分野ではなく、現場で診療を行うためのシステムにあります。役割分担を細かくすることで各人が己の仕事をプロフェッショナルとして行うことが可能になり、その結果、全体として質の高い医療を提供することができるのだそうです。実際に、様々な職種の方がいらっしゃいましたが、各人が自分の仕事をしっかりとこなしており、そのためか、皆様活き活きとされているように見えました。
実際の臨床にでてもいない私がシステムについての感想を持つなど大変畏れ多いと感じるのですが、皆が自分の仕事に誇りを持ってやっているように感じられたのがどうしても強く印象に残っております。
さらに、今回は肝移植外科での実習であり、日本では見る機会の少ない脳死肝移植を見学する機会に恵まれました。脳死状態の方からの臓器摘出を見学するのは初めてでした。臓器摘出後は心臓を止めることになりますが、心臓を動かすことは見たことはあっても、止めるのを見るというのはなんとも言えない複雑な心地です。しかしながら、その一方で移植を受けて元気になる人をみると命がつながっているような気がして嬉しく思い、日本でもこれから脳死移植がもっと増えていってほしいと感じました。 

最後になりましたが、このような貴重な経験をさせていただいた第二外科の先生方、クリーブランドクリニック肝移植チームの皆様に心より感謝いたします。本当にありがとうございました。

 実習の様子

Charles Miller教授との記念写真

 クリーブランドクリニックを背景に

関連リンク 
クリーブランドクリニック ホームページ 
九州大学病院 消化器・総合外科(第二外科)ホームページ 
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