学生生活

2011年08月17日

専攻教育

研究室配属(3年生)

 九州大学医学部医学科では3年次前期に研究室配属Ⅰのカリキュラムを行っています。これは将来研究者として活躍するにあたり、早期に実際の研究分野に身を置き研究チームの一員として働くことにより、研究者としての自覚や倫理観の養成や、研究室での基本的な知識やルールを学ぶこと、また、協調的な学習環境の中で問題解決能力を高め、生命医学領域に対する学習意欲の向上をめざすことを目的としています。

今年研究室配属を終えた2名の学生の感想文をご紹介します。
研究室配属3年を終えて
 
医学科3年 児島 史一


3年生の夏、私は研究室配属で臨床薬理学分野にお世話になりました。3年生から薬理学の講義が始まり、私はその講義で薬理学というものに興味をもったので配属を希望しました。しかし、講義を受けて数カ月の私にはほとんど知識がなく、うまくやれるだろうかという思いでいっぱいでした。そんな不安を抱えながら臨んだ研究室配属でしたが、結論を言うと、それは全くの杞憂に終わりました。教授の笹栗先生を始め、准教授の森本先生、他の先生、先輩方が優しく迎えてくださり、肩の力を抜いて研究室配属期間を過ごすことができました。
私が研究室配属で行った実験は、拡張型心筋症モデルマウスの心臓の形態と機能を心エコー、心電図、解剖によって調べ、それが強心薬ジゴキシンを投薬した場合どう変わるかを測定し、その薬物効果を検討しました。この実験には森本先生に大部分を手伝っていただき、マウスへの投薬、心エコーの測り方など実験操作の基礎を丁寧に教えていただきました。また心筋細胞を単離する操作では初心者ゆえに何度も失敗して、森本先生には大変ご迷惑をかけましたが、辛抱強く実験にお付き合いいただき、本当に感謝しております。
また火曜日の午前中は毎週セミナーに参加させていただき、論文の抄読や研究進度の発表を聞かせていただきました。そして最後の週のセミナーでは、私たち3年生が実験データの発表と論文抄読をして、発表の仕方を学ばせてもらいました。私自身、論文をまともに読むのは初めてで大変苦労しましたが、この機会に経験することができて本当に良かったです。


一ヶ月という短い期間でしたが、この研究室配属は私にとって全てが新鮮な体験であり、とても充実した一ヶ月を過ごさせていただきました。いままで研究室がどのようなところかさえよくわからない自分でしたが、実際に実験をしている様子を垣間見ることができて良い経験になりました。最後に、この1ヶ月ご指導いただいた先生方をはじめ臨床薬理学分野の方々に心から御礼申し上げます。

臨床薬理学分野ホームページ

研究室配属3年を終えて
医学科3年 大澤めぐみ
 
 

3年生前期、私は分子生理学の研究室に配属され、一ヶ月間初めての研究生活を送りました。大木研一先生率いる本研究室では、2光子励起法をはじめとした画期的な手法を用いて、哺乳類の視覚野の神経回路がどのように情報処理を行っているのかについての研究が行われています。私が分子生理学への配属を希望したのは、視覚野の機能的な神経回路の解明に興味を惹かれたからです。

私が実際にさせてもらった実験は、エレクトロポレーション(以下、エレポレ)、電気生理、組織の観察、オプティカルイメージング、遺伝子作製です。この中で特に印象に残っている実験はエレポレと2光子励起顕微鏡を用いた観察です。エレポレは、プラスミドDNAを発生過程のマウスの大脳に直接導入する方法で、任意の遺伝子を脳に発現させ、その影響を調べることができます。妊娠マウスの子宮からマウス胎仔を取り出して手術を施すのですが、妊娠15日齢程度のマウスは想像以上に小さく、なかなか成功に至りませんでした。他にも、マウスの頭蓋骨に直径3mmの穴を開けたり、脳表面から数μmの層に針を指したりと、細かな作業が多く、正確なデータを得るには、経験を積むことも大切なのだと痛感しました。2光子励起顕微鏡を用いた観察は、大脳皮質にある神経細胞やグリアを立体的に見ることができ、きれいな画像が撮れた時は感動しました。ついつい受身になりがちな通常の授業とは異なり、自分の手を動かして自分の頭で考えるという環境がとても新鮮で、毎日の研究室生活が充実していました。

 
研究室配属が始まるまで、研究に対してさほど興味をもったことがなく、研究室配属をカリキュラムの一貫として捉えるくらいでしたが、実際に体験してみると、研究の面白みがどこにあるのか分かったような気がします。たとえ失敗の連続でも、そこから得るものが必ずあり、次の実験へと活かしていく――そんな試行錯誤の末にたどり着いた結果が、自分の期待もしくはそれ以上のもので、世界中でまだ誰も成し得ていないものだったなら、それは大変感慨深いだろうと思いました。

純粋な探究心をもち、世界を相手に最先端の研究をなさっている先生方の姿を見て、深く感心するとともに、意義ある成果を得るために努力を惜しまない姿勢を見習いたいと思いました。漠然とした興味で門戸を叩いた一学生に、原理や実験背景、手順を丁寧に教えてくださった先生方や大学院生の皆様に心より感謝しています。ありがとうございました。


分子生理学分野ホームページ
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