2024年07月31日
国際・留学
韓国 仁済大学校での短期留学報告(クリニカル・クラークシップ)
「クリニカル・クラークシップ」とは、学生が医療チームの一員として診療・治療に参加し、臨床能力を身につける臨床実習方式のことです。
九州大学医学部医学科では、韓国の仁済(インジェ)大学校と学生交換交流を実施しています。仁済大学校と九州大学病院とで、相互にクリニカル・クラークシップ参加のための短期留学派遣を行っています。
英語をはじめとする外国語を用いながら、母国とは違う医療の現場を肌で感じる経験は、学生にとって通常の大学生活では得られない貴重なものとなっています。
本記事では、2024年3月3日から3月8日にかけて仁済大学校へ短期留学を行った2名の学生の報告を掲載します。
土本遼平さんの実習報告
仁済大学校でのPBL体験を通して
私は3年生の春休み期間中、3/3~8で韓国に渡りPBL (Problem-based Learning) 体験をしてきました。このプログラムは現地の仁済大学校の医学生と一緒に、模擬患者に対して自分たちで仮説を立て、鑑別疾患や治療方針を決めていき、そこで知らないことに対しては自分自身で課題を設定し解決していくといったものでした。
普段英語を話さない、まして医学用語を英語で全く覚えていない私からしたら、このPBLはとてもハードなものでした。韓国の学生たちは英語が得意ということも知っていたし、医学部の学生たちはとても優秀ということも知っていたので渡韓前は、友人とずっと心配だねと言い合っていました。実際、仁済の生徒たちは英語が得意で生化学や生理学、解剖学などの細かい知識まで頭に入っており、大変優秀に感じましたが、それ以上に親切でユーモアに富んでいて、私たちはすぐに友達になれました。また、韓国の医学部定員増加に対するデモの影響で、仁済では授業が止まっており、今回のPBLに参加してくれた、仁済の学生たちはボランティアだということにも驚きました。
PBLでは日本人学生が2人、仁済の学生が4人でグループを作り、それぞれでPBLを進めていき、最終日には疾患に対するSchemaを英語でプレゼンしました。グループ内でのディスカッションももちろん英語で行われますが、初日は聞き取ることに全神経を注ぎ、聞きなれない単語を調べることに多くの時間を費やしてしまい、ほとんど発言することができませんでした。しかし、仁済の学生たちがわからないことは丁寧に教えてくれたり、私の拙い英語でも必死に聞き取ってくれたおかげで、少しずつではありますが、日を重ねる毎に、ディスカッションにも参加することができました。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ここまでPBLについて書き連ねているので、勉強中心の生活を送ったかのように感じるかもしれませんが、授業後は仁済の学生から様々な場所を紹介してもらったり、遅くまでお酒を飲んだりもしてたくさんの交流をしました。夜ご飯は仁済の学生がおすすめのディナースポットに連れていってくれたり、ショッピングに連れていってもらったり、有名な広安里海水浴場に連れていってもらい皆でチェキを撮ったりしたのは良い思い出です。
韓国の学生は日本の文化や生活に興味津々で、私たちが知らない日本の文化を知っていたりと、逆に学ばされることも多くありました。また韓国の学生は日本の学生よりも自分の意見をはっきり持っているようで、政治に対する向き合い方も日本の若者よりも積極的でそういった議論も普段から行っていると聞いて、同学年の学生でありながらも何倍も大人に見えました。
最終日は仁済の学生が私たちに対してFarewell Partyを開催してくれ、韓国の美味しい料理を食べながら乾杯を交わし、次、仁済の学生たちが福岡にきたときには福岡を案内すること、近いうちにまた会うことを約束しました。
このPBL体験で私は、もちろん英語が格段に話せるようになったわけでも、聞き取れるようになったわけでもありません。しかし、たったの1週間弱ではありますが、国際交流未経験の私からしたら、かなり大きな1歩でした。また、国籍は違えど、同じ年数を生きてきた人間でここまで、英語力が違うのか、勉強に対する向き合い方が違うのかと思うと、改めてもっと頑張りたい、負けてられないと考えるようになりました。本当に充実した1週間だったと思うと同時に、仁済の学生や教員の方々に対して感謝の気持ちでいっぱいです。
安藤優那さんの実習報告
仁済大学校での国際交流
まず始めに、この文章を読んでくださっているということは、きっとこの研修に興味がある方が多いのではないかと思うので、少しでも迷っている方には是非参加してみて欲しいと思います。
研修中の5日間、毎日様々な経験をしてとても濃い時間を過ごすことが出来ました。研修中は仁済大学で授業の一環として行われているPBLに参加します。このPBLは、模擬患者に対して問診、身体診察、血液検査などを生徒自身が行い、診断と治療計画まで決定するというのが大まかな流れです。私たちは診察の手技については全く授業を受けたことがない状態だったので、なんの戸惑いもなく診察を行っている仁済の学生を見て、非常に驚きました。診察が終わると、グループ内で話し合って診断確定を目指します。模擬患者が訴える症状や身体所見などから、考えられる疾患をできるだけ多く挙げていきます。私はこの段階が最も難しく感じました。テスト勉強の際には、疾患から起こりうる症状を挙げていくという方向で考えることがほとんどだったので、逆に症状からその原因となる疾患を挙げるとなるとなかなか思いつかず、病名が挙がる度に、「あっそれがあるのか」というのを繰り返していました。このPBLは1人の患者の診断を1週間で仕上げるようになっていて、初日にたくさん考えた疾患の中から最終的に1つに絞っていきます。この過程で毎日話し合う度に疑問が生まれます。それを各自勉強してきて、次の日はさらに詳しく話し合っていくというスタイルです。先生の講義を聞くだけという日本でのスタイルと全く反対だったので、難しいとは感じながらも、自分で見つけた疑問を自分で解決して学ぶというのはとても楽しかったです。また、各グループにチューター役の先生が1人いらっしゃり、この先生方は色々な診療科から来てくださっていて、必ずしもPBLのテーマになっている分野を専門にしているわけではないようでした。それでも幅広く知識をもっていらっしゃり、さらにそれを流暢な英語で学生に説明してくださいました。この経験は自分の将来像を考えた時にすごく刺激的でした。
ここまで書いてきたように、PBLでは多くのことを学び非常に充実していましたが、それ以外の時間も同じくらいに充実していました。PBLが始まる前日には歓迎会を企画してくれていて、次の日の講義でまた会うのが楽しみだったことを覚えています。PBL開始後も毎日色々なところに連れて行ってくれて、色々な話をすることが出来ました。部活、アルバイトなど身近なもので様々な違いがある一方で、同年代の医学生ということですごく共感できることもあり、とにかく話をすることが楽しかったです。PBL中には知識量に圧倒され、先輩のようにすら感じていましたが、ご飯を食べに行ったり、ゲームセンターで遊んだり、ショッピングをしたりというときには、ちゃんと同じ学年だと実感できました。現地の学生と一緒にいたからこそできた経験ばかりで、感謝しかありません。お互いの国に来ることがあれば連絡しようねと言って別れたので、機会があればまた会えたらいいなと思っています。
最後に、このような機会を作ってくださった仁済大学、九州大学の関係者の方々、私たちと一緒にPBLに参加し、たくさんの思い出をくれた仁済大学の学生の皆さん、本当にありがとうございました。