2024年08月01日
国際・留学
米国 クリーブランド・クリニックでの臨床実習報告(クリニカル・クラークシップ)
「クリニカル・クラークシップ」とは、学生が医療チームの一員として診療・治療に参加し、臨床能力を身につける臨床実習方式のことです。
九州大学医学部医学科では、臨床実習の一環として、米国クリーブランド・クリニック短期実習プログラムを実施しています。クリーブランド・クリニック (Cleaveland Clinic) は米国および世界でもトップレベルの病院として一貫して高い評価を受けており、脳死・生体肝移植は年間150例ほど行っています。
このクリーブランド・クリニック短期実習プログラムは、外科部長の Frug 教授と、移植外科の責任者である Miller 教授の了承のもと、九州大学病院 消化器・総合外科(第二外科)が主体となって実施しているプログラムです。プログラムの内容としては、脳死肝・小腸移植ドナーおよびレシピエント手術への参加、ICUおよび病棟での移植外科診療への参加、セレクションコミティーや病理カンファレンスを含む各種カンファレンスへの参加などが挙げられます。
本記事では、2024年5月13日から6月7日にかけて短期留学を行った2名の学生の報告を掲載します。
後藤和樹さんの実習報告
Cleveland Clinic実習 成果報告書
この度第二外科の短期海外実習プログラムとして2024/05/13~2024/05/31の3週間、アメリカのオハイオ州にある Cleveland Clinic で第二外科出身の橋元宏治先生のご指導のもと臨床実習をさせていただきました。海外実習が決定してからパスポートを申請した私はそこでの明確な目的があったというより、むしろアメリカへの漠然とした憧れの方が強かったのかもしれません。実習初日に橋元先生から「どうしてアメリカに来たいと思ったの」と聞かれたとき、私は「日本とアメリカの医療の違い、例えば分業制や移植の制度、キャリア形成などに興味があります」と答え、これがアメリカに対する正直な印象だったのだと思います。ただ私の想像以上に刺激的な日々で、ますますアメリカへの関心が高まった期間となりました。
実習
毎朝先生にその日に予定されている手術を伺い、見学させていただきました。特に印象に残ったのは、生後6週の女児が他院で胆道閉鎖症に対し、葛西術後に急性肝不全となり緊急搬送された症例です。母親がドナーの緊急生体肝移植となったのですが、実際にお腹を開けてみると門脈の血流はほぼなく、肝臓と小腸の一部が壊死していました。移植片の血流を確保するための通常とは異なる再建方法は10年ぶりらしく、とても難しい症例だったそうです。顕微鏡を用いた肝動脈の吻合も圧巻で、16時から始まった手術は気付けば深夜の2時となっていました。他の治療では救命困難な患者を命の贈り物で救う移植外科の魅力と手技の難易度の高さ、分野横断的な知識の必要性を実感しました。
回診では医師だけでなく、薬剤師、さらには医師の補助をする Physician assistant, 上級の看護職である Nurse practitioner もチームとなり、綿密なコミュニケーションが行われていました。"Practicing at the top of your license" の信念のもと、それぞれの職種によって仕事内容が細かく分業されており、チーム医療の真髄をみたように思います。
脳死と心停止のドナーの臓器摘出はクリニック以外にもそこから車で30分くらいのところにある「Lifebanc」でも行われており、タイミングが合えば同行することができました。予定していた移植がキャンセルになったり、夕方から臓器摘出に行ったりと、流動的な日程で移植外科の大変さを垣間見ることができました。
生活
去年の先輩方からアドバイスをいただき、男子3人でキャンパス内にある air b&b に泊まりました。平日の食事は週末に買い溜めた食料で自炊したり、日本から持ってきていたレトルト食品を食べたりしました。West Side Market や病院近くの大きなスーパーでは初めて見る食材が大量に陳列されていて眺めているだけでも楽しかったです。現地での支払いは基本的にクレジットカードでできたのですが、駐車場料金の支払いはカードが反応しないところが多かったです。ある駐車場では現金で支払った後、お釣りが出てくるのを待っている間にバーが下がってしまい、泣く泣く lost ticket 代の35ドル(約5500円)を支払ったのは今となっては良い思い出です。
休日
週末はレンタカーの店舗までは Lyft という配車サービスを利用し、毎回車を借りていました。1週目は Cleveland の美術館や博物館、 Downtown の散策をし、アメリカの文化に触れました。現代美術館では池田学さんの展覧会が開かれており、実際にご本人の制作現場が設けられ、カラーインクとペンを用いた、あまりに緻密な作業に見入ってしまいました。2週目はナイアガラの滝を片道4時間ほどかけて観に行きました。大迫力のスケールで、忘れられない自然体験となりました。3週目はシンシナティ・レッズの本拠地でドジャースとの試合を観戦しました。もちろんお目当ては大谷選手で、試合前にベンチから登場したときは近くにいた人たちと一緒に大盛り上がりでした。
最後に
アメリカで実際に働かれている先生方のお話を伺い、それまで抱いていたイメージはより具体的なものとなりました。今回このような貴重な機会を与えてくださった第二外科の先生方、慣れない海外実習で不安だった私たちを温かく迎えてくださった橋元先生をはじめとする Cleveland Clinic のスタッフの方々、また同期の2人の助けのおかげで充実した日々を送ることができました。重ねて感謝申し上げます。
橋元先生と懇親会
ナイアガラ滝
増成一樹さんの実習報告
クリーブランドクリニック留学 成果報告書
実習
クリーブランドクリニックでは主に肝臓移植を見学しました。脳死ドナー、心停止ドナーの臓器摘出や、生体肝移植を見学できました。DBD=donation after brain death (脳死ドナー)の臓器摘出は車で約30分ほど離れた場所にある life bank で行われており、留学中2症例見学することができました。1症例目は、初日に見学することができ、手洗いをして術野に入ることができ貴重な経験となりました。大学の実習では見学することができない手術で、そのスピード感には圧倒されました。また、DCD=donation after cardiac death (心停止ドナー)の臓器摘出はクリニック内で見学しました。DBDとは違い投薬を中止し心臓が停止した後に5分の待機時間があり手術室に入りました。一刻を争う手術で、術野に5、6人の医師が入り次々と臓器を取り出していく様子は衝撃的でした。今回の留学で DBD、DCD の臓器摘出を見学できたことはとても貴重な経験でした。
また、回診にもほとんど毎朝同行することができました。アメリカでは PA (Physician assistant) や NP (Nurse Practitioner) などの専門職があり、日本では医師が行う業務も彼らが行っており効率的でした。回診には薬剤師も同行しており、最新の薬剤事情などもすぐに把握でき合理的な体制で、日本との違いを感じました。
生活
週末にレンタカーでスーパーに行き、食料を買いためて平日はそこから調理する生活でした。クリーブランドクリニックの敷地内に泊まることができたので、クリニックへは安全に行き来することができました。
週末は、レンタカーでナイアガラの滝へ行ったり、シンシナティで野球観戦をしたりと自由に過ごすことができました。
最終日には、橋元先生と食事に行く機会があり、留学のことやアメリカでの生活など貴重なお話を聞くことができました。
ナイアガラの滝にて
