学生生活

2025年08月18日

国際・留学

ドイツ グーテンベルク大学病院 麻酔科での臨床実習報告(クリニカル・クラークシップ)

「クリニカル・クラークシップ」とは、学生が医療チームの一員として診療・治療に参加し、臨床能力を身につける臨床実習方式のことです。

九州大学医学部医学科では、6年次の臨床実習時に海外での短期留学プラグラムを行っており、ドイツのマインツにあるグーテンベルク大学(Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz)の麻酔科への短期留学を、九州大学病院麻酔科が主体となって実施しています。

この短期留学プログラムは、グーテンベルク大学麻酔科のヴェルナー教授、ならびに福井 Dunkle 公子先生のご好意により実施されているもので、教育プログラムも充実しており、外科系各科の麻酔を臨床に則した形でしっかりと学ぶことができます。

本記事では、2025年2月7日から3月9日にかけて短期留学を行った3名の学生の報告を掲載します。

岡本知也さんの実習報告

ヨハネス・グーテンベルク大学 麻酔科実習報告

岡本知也

2025年2月7日~3月9日の4週間、医学科6年次のクリニカルクラークシップの一環としてドイツ、マインツ市ののヨハネス・グーテンベルク大学麻酔科にて臨床実習をさせて頂きましたのでご報告させていただきます。

本年度は第2期に3名、第3期に1名が参加し、私は第2期で参加させていただきました。海外での実習ということで渡航前は様々な不安がありましたが、プログラムを終えて医学生としても、ひとりの人間としても大いに成長できた有意義な実習を経験できたと感じています。海外での実習に興味を持っている後輩たちの参考に少しでもなればと思います。

実習

九州大学のシステムと大きく異なる点として、グーテンベルク大学では診療科ごとに分けられた複数の建物にそれぞれ手術室と専属麻酔科医がついており建物ごとに行われる手術の専門分野が住み分けされています。産婦人科専属の麻酔科医、泌尿器科専属の麻酔科医といった具合です。私達の実習も毎週異なる分野の麻酔科をローテーションする形で行われました。実習時間は毎日7:40集合で15時半頃に解散でした。

第1週は3人で脈管・胸部外科をまわりました。現地で麻酔科医として長年勤務されている福井公子先生からオリエンテーションを受けたり、麻酔の基本知識について教えていただきました。マスク換気や気管挿管、胃管留置、デモ血管を使った静脈ルート確保など様々な手技を練習しました。

第2週以降は基本1人で実習をし、整形外科・外傷、泌尿器科、産婦人科の順で回りました。1週目と異なり完全に日本語の通じないエリアでそれぞれの分野に特徴的な麻酔管理を学びます。現地の先生や看護師の方々は英語が話せる人が多くドイツ語が話せなくてもコミュニケーションは十分とれますが、麻酔導入中やリカバリー時はバタバタしておられます。黙って見ているだけでは何も学べないので手術中の一息ついたタイミングで質問したり、「今日マスク換気の練習したい」とお願いしたりして積極的に学習機会を掴みにいくのが大切です。基本優しく対応してくれますし、学生には無理な手技だとNOとはっきり言ってくれます。2週目以降も挿管や患者さんへの静脈ルート確保など多くの手技を経験することができました。

実習@整形・外傷外科

実習@整形・外傷外科

生活

マインツでは昨年度の先輩方も宿泊された一軒家を借りてシェアハウスのような生活をしました。寝室は個室でプライベートが適度に確保されつつ、共用キッチンで自炊をしながら皆で夕食をとったり、外食をしてドイツ料理やビールを楽しんだりしました。

定期券を買っていて市内の公共交通機関が乗り放題だったので、実習終わりに市内を散策したりショッピングを楽しんだりしやすかったです。しかし、ドイツのスーパーが日曜日ほぼ休みだったり、登校に利用していたバスがストライキで欠便して大学まで長距離歩いたりと、日本との違いを痛感しました。

週末や放課後

週末や放課後を利用してドイツ国内外を観光しました。国内では現地でサッカー観戦をしたり、丁度カーニバルの時期だったので班員や現地の人たちとカーニバルを楽しんだりしました。EU圏内は出入国審査や通貨交換が必要ないので国外旅行もしやすく、各国の文化や街並みを楽しむことができました。

フランクフルト空港からマインツ市内へ向かうS-Bahnという鉄道が日曜夜に欠便しやすく、旅行から帰ってきては毎週のように空港で足止めされていたのも今となってはいい思い出です。

カーニバル@マインツ

カーニバル@マインツ

ヴェネツィア旅行

ヴェネツィア旅行

最後に

この1か月間で非常に多くの経験や学び、出会いがありました。最初は日本との違いに戸惑うことも少なくなかったですが、福井先生をはじめ多くの現地の方々との交流を通して人として大きく成長できたと感じます。自分の将来について深く考えるきっかけにもなりましたし、貴重な体験となりました。今回得た学びをしっかり次へ生かしていけるよう頑張ります。

最後になりますがこの海外実習を計画して頂いた九州大学麻酔科の先生方と福井先生、様々なサポートを賜りました同窓会の皆様や現地の先生方、送り出してくれた家族、一緒に実習した2人の同級生にこの場を借りて心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。

田中涼子さんの実習報告

ドイツでの実習を終えて

田中涼子

今回、2025年2月7日~3月9日の4週間、ドイツのヨハネス・グーテンベルク大学での実習を経験させていただきました。この実習では医療学習の面のみならず、生活や文化面での刺激を多く受けました。今回の実習を通して私が経験したことや学んだこと感じたことをここで紹介できればと思います。

―実習―

私達は、九州大学OGの麻酔科・福井公子先生が在籍されるヨハネス・グーテンベルク大学病院で麻酔科の実習を行いました。この大学では各診療科が異なる病棟を持ち、病棟それぞれに手術室があるので、麻酔科の先生は各診療科に配属されていてそこで仕事をされています。今回は、福井先生がいらっしゃる胸部脈管外科からスタートし、産婦人科、整形外科、泌尿器科と毎週異なる診療科で実習させていただきました。初週は3人で、福井先生の下、モニターの見方や手技の練習など麻酔の基本を教わり、2週目以降は1人で実習に参加しました。

実習内容としてはモニター装着、マスク換気、気管挿管、胃管留置、静脈ルートの確保など様々な手技をさせていただきました。麻酔をかけた後は手術を見学したり、担当の先生とお話ししたりして過ごしていました。また適宜投与する薬剤アンプルをシリンジに移し替えるのを手伝いました。

私は、幸運なことに、2週目に現地のとても親切な学生さんがいて、彼女に実習のノウハウを教わることができました。ドイツの学生は実習期間が長いので、この後の流れをよくわかっているし、実習前の試験が厳しいそうで、よく勉強していて、私が彼女に質問すると今何をしたらいいのか、何をしているのかなどなんでも教えてくれました。彼女のおかげでそれ以降の実習がすごくやりやすくなりました。彼女の医学知識や現場での対応力や英語力にレベル差を感じましたし、自分ももっと頑張ろうと思える良い刺激になりました。

麻酔の知識はもちろん、医療英語、先生や看護師さんとの英語でのコミュニケーション力など、色んな力がつく実習時間を過ごせたかと思います。

大学の先生やスタッフの皆さんと

大学の先生やスタッフの皆さんと

福井先生と手術室で

福井先生と手術室で

―言語―

当然ですが、ドイツでは公用語がドイツ語です。先生方や看護師さん、患者さんはドイツ語を話されていて、何を言っているのか正直ちんぷんかんぷんです。とはいえ、私たちが英語で話しかけると優しく英語で色々教えてくださいますし、英語も流暢すぎないので聞き取りやすいです。ただ自分の気持ちを英語で表現するのは難しく、自分の語彙力の低さに泣かされました。的確に表現する単語が出てこないときは遠回しな表現を使ったり、身振り手振りで伝えたり、相手にくみ取ってもらったりと何とかコミュニケーションをとっていました。

私はDuolingoというアプリで少しだけドイツ語をかじっていったので、ほんの少し聞き取れる単語があったり、実習中に先生や学生さんに簡単なドイツ語のフレーズを教えてもらったりして、ドイツ語に触れていました。知っている単語が聞こえると楽しいですし、教えてもらったドイツ語を練習しながら患者さんや他の先生方に披露すると、すごく喜んでもらえてそのあとのコミュニケーションがやりやすくなるのでお勧めです。

―生活―

私たちは男2女1の三人でドイツに向かい、先輩方が例年宿泊されていた、一人一部屋ある一軒家をAirbnbで借り、共同生活をしました。今回実習に参加した3人はこの実習を希望した人が集まったメンバーなので、普段から特別仲が良かったわけではなく(普通に話せるくらいの仲)、私は女一人だったので少し不安ではありましたが、一緒に自炊したり外食したり、また個人でカフェに行ったり買い物に行ったりと、お互いの時間を確保しつつ協力しながら過ごすことができました。一人で海外留学するのは心細かったので、二人がいてくれて安心して過ごせましたし、実習が終わって話せる相手がいるのも心の支えになりました。

また福井先生には何度も夕飯に連れて行っていただき、ドイツ料理や日本ではなかなか見ないポルトガル料理などをごちそうになり、実習や生活で困ったことがないか、いつもサポートしていただきました。

マインツ市内観光

マインツ市内観光

ドイツ料理屋さんにて

ドイツ料理屋さんにて

―週末・自由時間―

大学が位置するマインツはヨーロッパ最大級のハブ空港であるフランクフルト空港のすぐそばで、隣国に飛行機でアクセスしやすい街です。そのアクセスの良さを利用して週末はスペインのバルセロナ、イタリアのヴェネチア、フランスのストラスブール(ここだけ高速バス)に行ってきました。3人で訪れたときは楽しく観光し、また一人旅の時はのんびり過ごすことができ充実した週末を過ごすことができました。この留学で初めて海外一人旅にチャレンジできたことが自分の中で意味合いが大きかったです。

また3週間目から鹿児島大学の学生が同じように実習に参加しに来ていたので、一緒に実習終わりにご飯を食べたり、カフェに行ったりして自由時間を過ごすこともありました。また最終週にはカーニバルが開催され街のお祭りを一緒に楽しむことができました。

3人でのヴェネチア旅行

3人でのヴェネチア旅行

鹿児島大学とのカーニバル参加

鹿児島大学とのカーニバル参加

―最後に―

最初はわからない言語が飛び交う慣れない場所での実習や生活に悩まされ、正直帰りたいとすら思っていましたが、徐々に適応できるようになり、最後にはまだまだ滞在していたいと思うほど楽しむことができました。海外に1か月滞在して医療を学べる機会はなかなかないですし、医療、言語、文化、生活など様々な面で実りある経験になりました。もし参加しようか迷っている後輩がいるなら、ぜひおすすめしたいです。

最後になりますが、この場を借りてこの留学を調整してくださった福井先生、九大麻酔科の先生方、グーテンベルク大学のスタッフの皆さん、快く送り出してくれた家族、そして一か月ともに頑張った同級生2人に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

廣常健太郎さんの実習報告

ヨハネス・グーテンベルグ大学 麻酔科実習報告

九州大学医学部医学科 廣常健太郎

私は 2025年2月7日~3月9日までの4週間、ドイツ連邦共和国マインツ市にあるヨハネス・グーテンベルグ大学病院にてクリニカルクラークシップの麻酔科実習に参加させていただきました。現地では麻酔科医として勤務されている福井先生にご指導いただきました。今回の海外実習を通して学んだことや経験したことを報告させていただきます。

【実習】

日本の大学病院とは異なり、ヨハネス・グーテンベルグ大学の大学病院は診療科によって建物が分かれていました。建物ごとに手術室があり手術が行われるため、その科専属で麻酔科医が割り振られていました。そのため、ヨハネス・グーテンベルグ大学では麻酔科の医師が100人を超えており、大学で最大の診療科であるそうです。グーテンベルグ大学の麻酔科の規模に驚いたと同時に、そのような環境下で麻酔科実習ができることを嬉しく感じました。

ドイツでの実習は、基本的に麻酔科の先生に付いて麻酔導入、手術見学を行うというものでした。最初の1週間は、3人共に福井先生の下で脈管・胸部外科の麻酔を勉強させていただきました。先生にご指導いただきながら患者さんのベッドの移乗・搬送やモニター装着を手伝い、自分のできることを探しながら1日を過ごしました。麻酔導入時は、マスク換気や胃管チューブの挿入をさせていただいたり、気管挿管の手技についてコツを教えていただいたりしました。手術中は主に手術見学をしていましたが、その合間に抗菌薬の準備や術中に投与する薬剤の調整法を学んだり、血管の簡易模型を使って末梢静脈ルート確保の手技を学んだりしました。先生方と会話する場面では英語を使用しますが、現場では英語ではなくドイツ語が主に使用され、呆然とする日々も多々ありました。ドイツ語の会話が飛び交っており、まったく意味が分からない中で麻酔や手術の様子を見学するという、今思うと心が折れそうになる1週目でした。

2 週目以降は、1人ずつそれぞれ泌尿器科、産婦人科、整形外科に配属され1週間でローテーションしました。日本語0での実習に不安でいっぱいだったのですが、やるしかないと自分を奮起させ、1人きりの実習に挑みました。立っているだけでは意味がなく積極性が大切だと思い、自ら指導医の先生に「機会があれば、マスク換気や気管挿管やルート確保をやらせていただきたい」とお願いするように意識していました。ドイツの先生は優しい方が多く、快く受け入れていただき、これらの手技を数多くやらせていただきました。また、私はドイツの研修では先生との英語のコミュニケーションにも尽力したいと考えていたため、手術中に積極的に質問しました。日がたつにつれて術中のイベントに関する医学的な質問はもちろんですが、時には休日の過ごし方やおすすめの観光地などプライベートな質問もできるようになりました。会話ができるようになると、手術の時間もあっという間に感じられ、満足感や達成感が感じられました。すると、麻酔科の先生もさらに多くの手技を任せてくださったり、細かい知識についての解説を加えたりしてくださり、楽しく1日を過ごすことができるようになりました。3週目以降はドイツ実習に順応し、英語でのコミュニケーションに自信をつけていっている自分に気づきました。ドイツでの実習では患者さんとの距離も近く、参加型の実習を通じて語学力や精神力が磨かれていることを実感でき、有意義な 4 週間を過ごすことができました。

泌尿器科の実習

泌尿器科の実習

産婦人科の実習

産婦人科の実習

整形外科の実習

整形外科の実習

【生活】

ドイツでは、先輩方が例年宿泊されていた一軒家を借りて、同時期に実習に参加している2人の同級生と共同生活をしました。登校にはバスを利用し、病院へは25分ほどで到着しました。普段は特に不便に感じることはありませんでしたが、突然ストライキが起こったときは日本の交通機関の利便性の高さを感じました。私は海外旅行に慣れていなかったため、食事を含め生活面での不安がありましたが、2人に支えられながら自炊や洗濯をこなし、快適な生活を送ることができました。マインツの人々は穏やかな人が多く治安が良いため、特にスリや事件に巻き込まれることもなく安全に過ごすことができました。余裕があるときは、実習後にレストランで外食し、ドイツ料理を堪能したのがいい思い出です。

【休日】

土日は休日だったため旅行を計画し、私はイタリアのヴェネツィアとオランダのアムステルダムに行きました。ヴェネツィアはカーニバル時期に合わせて訪問したため、町全体に仮装をした人があふれており、中世の街並みやヨーロッパ特有の美しい建造物を楽しむと共に現地の人々とのコミュニケーションを楽しむことができました。アムステルダムは1人で訪問したのですが、美術館や博物館が多くあり、ヨーロッパでしか見ることができない数多くの展示物を観覧することができました。また、運河のクルーズツアーでは日本語ガイドが付いていたため、アムステルダムの町の歴史や特徴を学びながら町全体を周遊することができました。

4週目の月曜日は祝日で、マインツにてカーニバルがあり、仮装したドイツの方々との交流を楽しみました。

ヴェネツィア観光

ヴェネツィア観光

アムステルダム中央駅

アムステルダム中央駅

ヴェネツィアのBar

ヴェネツィアのBar

インドの方と相席クルーズ

インドの方と相席クルーズ

【最後に】

私はこの実習に参加する前は、日本語が通じない中で果たして学びが得られるのかという漠然とした不安を抱いており、参加を決断するに至るまでかなり迷っていました。しかし、そんな不安は杞憂であったと感じるほど、海外での生活と実習は成長を実感させてくれるものでした。何よりヨーロッパで1か月間生活し、臨床実習に携わったという経験が、自分の中で大きく自信となっています。将来、海外の臨床現場に携わる第一歩になったのではないかと思います。しかしながら、自分の現在の語学力では海外で臨床を行う土俵にはまだまだ立てないということも痛感しました。この悔しさを経験できたことは今回の海外実習で1番の収穫だったと感じています。

最後になりますが、ドイツでの麻酔科実習をコーディネートしてくださった九州大学麻酔科の先生方、福井先生、グーテンベルグ大学の麻酔科の先生方、そして海外実習へのご理解・ご協力を賜りました同窓会の皆様、1ヶ月共に過ごした同級生2人と海外実習に参加するにあたり決断を後押ししてくれた両親にこの場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。

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