2025年08月22日
国際・留学
韓国 仁済大学校での臨床実習報告(クリニカル・クラークシップ)
「クリニカル・クラークシップ」とは、学生が医療チームの一員として診療・治療に参加し、臨床能力を身につける臨床実習方式のことです。
九州大学医学部医学科では、韓国の仁済(インジェ)大学校と学生交換交流を実施しています。仁済大学校と九州大学病院とで、相互にクリニカル・クラークシップ参加のための短期留学派遣を行っています。
英語をはじめとする外国語を用いながら、母国とは異なる環境で医療を学ぶ経験は、学生にとって通常の大学生活では得られない貴重なものとなっています。
本記事では、2025年4月14日から5月9日にかけて仁済大学校へ短期留学を行った3名の学生の報告を掲載します。
阿部朋也さんの実習報告
仁済大学クリクラを終えて
今回私は、韓国の釜山広域市にある、仁済大学海雲台白病院でのクリクラに参加させていただきました。私は、胸部外科と放射線腫瘍科を2週ずつ選択して実習を行いました。
病院での実習について
現在韓国では医学生によるストライキがあっており、現地の医学生に病院で会うことはありませんでした。このような大変な状況にも関わらず、現地の先生たちは親切に指導してくださいました。外科では術野に入ることもでき、外国語で行われる手術に参加する貴重な経験ができました。先生方は英語が話せない方もいらっしゃるので、韓国語が少しでもできるとコミュニケーションの幅が広がると思います。
生活について
海雲台白病院では、宿舎(オフィステル)と病院での3食を提供していただけます。とても快適に過ごすことができ、滞在費用も抑えられるので大変ありがたかったです。病院のご飯は地味に辛いぐらいのものが多く、辛いものが苦手な人はちょっとつらいかもしれません。
平日は、友達とご飯に行ったりカラオケに行ったりしても良いですし、徒歩圏内にスーパー、映画館、ジムなどもあってとても充実した生活を送れました。ジムでは爆音でK-popが流れていて、テンションが上がりました。
週末について
週末は地下鉄でビーチまで足を伸ばすのも楽しいですし、もう少し遠くのソミョン、ナンポドンも観光しました。1ヶ月あったので、釜山のメインの部分は大体見ることができました。
私は4回の週末のうち、2回をソウルで過ごしました。ソウルには新幹線や高速バスで行くのですが、私としては高速バスの座席がフルフラットになったのが感動的でした。ソウルは首都なのでなんでもありますが、海はありません。釜山で留学したことでビーチもあり、一石二鳥だったなと思います。
最後に
これから海外クリクラに応募しようかな?と迷っている方は、勇気を出して応募してみてください。特に、仁済大学の胸部外科と放射線治療科をおすすめします!(たくさんお話ししてくれるし、お休みもたくさんくれますよ)
私にとっては今回が初の海外留学でしたが、関わってくれているみなさんのおかげで多くのものを得ることができました。感謝しています。
河中拓登さんの実習報告
仁済大学校海雲台白病院での実習
2025年4月から5月にかけて、韓国・釜山にある仁済大学校海雲台白病院で約1ヶ月間の臨床実習を行いました。海外の医療現場に身を置くのは初めての経験であり、言語や文化の違いを実際に体感する貴重な機会となりました。
実習内容
前半2週間は形成外科、後半2週間は耳鼻咽喉科で実習を行いました。
形成外科では、乳房や鼻、眼瞼周囲の腫瘍摘出や再建術、糖尿病性足壊疽や褥瘡に対する陰圧閉鎖療法など、多様な手術や処置を見学しました。手術中には、担当の教授が英語で要点を説明してくださり、各手技の概要や工夫を理解することができました。また、実際に褥瘡に対するデブリードマンやドレッシングの処置を行う経験もさせていただきました。
耳鼻咽喉科では、午前中は手術見学、午後は外来見学を行いました。外来はすべて韓国語で行われており、先生と患者さんの会話を正確に聞き取ることは困難でしたが、耳内視鏡を実際に使用しながら鼓膜所見の観察方法などを英語で丁寧に説明していただき、大変勉強になりました。
実習中に、90代の男性患者さんから日本語で話しかけられる場面がありました。かつて日本で外科医として勤務されていたそうで、私が日本からの留学生であると伝えると、「多くを見て、多くを学びなさい」と流暢な日本語で声をかけてくださいました。そのお言葉は非常に重みがあり、今でも強く印象に残っています。今後の臨床実習や研修生活においても、意識していきたいと思います。
現地での生活
大学が用意してくれた寮では、一人部屋でトイレ・シャワー付きの快適な空間に滞在しました。食事も病院の食堂で朝・昼・夕の三食が無料で提供され、ビュッフェ形式の韓国料理を日々楽しむことができました。キムチをはじめとする野菜中心の献立が多く、日本で一人暮らしをしている時よりも健康的な食生活を送れていたように感じます。
また、日本食を食べる機会もありました。形成外科の医局で鰻重や海鮮丼をご馳走になったり、教授夫妻に日本食レストランに連れて行っていただいたりしました。異国で味わう日本食は少し不思議な感覚もありましたが、どれも美味しく、印象に残っています。
形成外科の教授のご主人も、同病院に勤務されており、お昼休みや診療後に形成外科の外来にいらっしゃって、一緒にコーヒーを飲みながら多彩な趣味の話をしてくださいました。特にクラシックカメラやレンズの収集に詳しく、私たちの写真も様々なレンズで撮ってくださりました。
休日には、西面での買い物や散髪、海雲台・広安里ビーチ、甘川文化村、南浦洞、センタムシティのチムジルバンなど釜山各地を訪れました。ゴールデンウィークにはソウルへの小旅行も実現し、短いながらも韓国各地の文化に触れることができました。また、ユンノリやコンギといった韓国の伝統的な遊びも体験し、多様な文化を楽しむことができました。
言語の壁と今後の課題
現地では、英語が通じる場面は限定的であり、思っていた以上に言語面で苦労する場面が多くありました。店や美容室では翻訳アプリで対応可能でしたが、看護師さんや患者さんとより親密な関係性を構築するためには、やはり韓国語の理解が必要だと痛感しました。滞在中も少しずつ韓国語の学習を進め、最低限の会話ができるよう努めました。
私の拙い韓国語とジェスチャーから意味をくみ取って話しかけてくださった看護師さんたちには、本当に感謝しています。また、英語での会話が可能な場面でも、相手の語彙やスピードに合わせた表現を工夫する必要があり、どの言語でも“伝える意志”が大切であることを実感しました。
今後、日本での生活や診療の中でも韓国からの旅行者や在住者と接する機会は少なくないと考えています。特に、異国の地で体調を崩して病院を訪れる際に母国語が使えることは大きな安心につながると思います。今後も韓国語の学習を継続し、少しでも役に立てるよう準備をしていきたいと考えています。
終わりに
今回の臨床実習は、医療技術や知識の習得だけでなく、異文化理解や言語面での課題に向き合う機会ともなりました。現地の医療や文化に触れたことで、国際的な視野を広げるとともに、自身の学びの方向性についても再確認することができました。
このような貴重な機会を与えてくださった医学学生係および国際推進部の皆様、快く受け入れてくださった仁済大学校海雲台白病院の先生方をはじめ、支えてくださったすべての皆様に心より感謝申し上げます。
形成外科の教授,看護師さんと
教授のご主人のカメラで
教授夫妻と行ったmoon sushi
海雲台ビーチ
藤井結意さんの実習報告
仁済大学クリニカルクラークシップ
4月14日から5月9日までの4週間、仁済大学の海雲台白病院で実習させていただきました。
[実習]
前半の2週間は産婦人科、後半は麻酔科を回りました。産婦人科では病棟で超音波検査の後ろについたり、外来や手術の見学をしたりしました。麻酔科ではオペ室での麻酔やペインクリニックの外来を見学しました。バッグ換気の練習や挿管の補助などもさせていただけました。
患者さんとの会話や回診、ミーティングはもちろん全て韓国語で、何を言っているのかわかりませんが、先生方やPhysician Assistant(PA)さんが合間に英語で解説してくれます。手術の前にビデオを見せてくれて何をどうするのか教えてくれたり、麻酔のモニターの指標の意味を紙に図を描きながら解説してくれたりと、言語が苦手な私にも伝わるよう常に工夫していただけました。
仁済大学は、学生と研修医、レジデントがストライキをしているため病院に1人もいないという状況でした。先生方もPAさんも忙しそうでしたが、その中でも色々なことを教えていただけました。
[生活]

病院の真隣にあるアパートの部屋を貸していただけます。新しくはありませんが広くて清潔です。それぞれの部屋にベッド、シャワーとトイレ、シンク、冷蔵庫、洗濯機、タオル、Wi-Fiが備え付けられています。私の部屋には机と椅子もありました。湯沸かしポットとドライヤーは現地で調達しました。食事は朝・昼・夕、病院の食堂を無料で使わせていただけます。おかずは8割が野菜で健康的です。充分すぎる待遇で、ありがたいかぎりでした。歩いて行ける距離にビーチがある落ち着いた地域で、地下鉄に乗れば繁華街にも出かけることができます。
[その他]
PAさんたちと一緒に食堂でランチを食べたり、先生方と海の方のレストランまで行って一緒にご飯を食べたりしました。韓国語はアプリでちょこちょこ勉強してから行きましたが、いざ行ってみると、何を言っているのか全然わからない会話が目の前でどんどん進んで置いてきぼりになることもありました。悔しかったのでオンラインで初級韓国語の本を買って基本的な文法と使えそうなフレーズを急いで叩き込みました。私が勉強したばかりのカタコトの韓国語を話してみると「ヤマモトが韓国人になった!」と言ってめちゃくちゃ持ち上げてくれます。翻訳アプリやジェスチャーも駆使しながら、日本旅行の思い出やおすすめのドラマなどの話をしました。最後の日に担当の先生から日本語で書かれたメッセージカードをもらった時は、嬉しくて胸がいっぱいになりました。
病院で学生と会えなかったのは残念でした。しかし一緒に行ったうちの1人が去年九大に交換留学で来た仁済大学の学生と友達だったので、週末にその子と一緒に遊ぶことができました。カラオケをしたりボートに乗って花火を見たりして、楽しい時間を過ごせました。
[最後に]

わからないことが聞けなかったり、相手の言葉を何度も聞き返してしまったりしてもっと韓国語ができたらと思うことは多々ありました。しかしそんな私に対しても病院の方々はどうにかしてコミュニケーションをとろうとしてくださり、その大らかさとガッツに助けられたように感じています。上手く喋ることができなくても態度や行動で伝えられることがこんなにあるんだと思わされました。お世話になった先生方、スタッフの方々、本当にありがとうございました。
