学生生活

2026年06月24日

国際・留学

ドイツ グーテンベルク大学校での臨床実習報告(クリニカルクラークシップ)

「クリニカル・クラークシップ」とは、学生が医療チームの一員として診療・治療に参加し、臨床能力を身につける臨床実習方式のことです。

九州大学医学部医学科では、6年次の臨床実習時に海外での短期留学プラグラムを行っており、ドイツのマインツにあるグーテンベルク大学(Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz)の麻酔科への短期留学を、九州大学病院麻酔科が主体となって実施しています。

この短期留学プログラムは、グーテンベルク大学麻酔科のヴェルナー教授、ならびに福井 Dunkle 公子先生のご好意により実施されているもので、教育プログラムも充実しており、外科系各科の麻酔を臨床に則した形でしっかりと学ぶことができます。

本記事では、2026年2月9日から3月6日にかけて短期留学を行った学生の報告を掲載します。

佐藤大輝さんの実習報告

ヨハネス・グーテンベルク大学での実習を終えて

佐藤 大輝

今回、2026年2月9日〜3月6日の4週間、ドイツのマインツ市内にあるヨハネス・グーテンベルク大学麻酔科にて臨床実習に参加しました。
私達の実習や生活の経験を通して、後輩達が海外実習に興味を持つきっかけになれば幸いです。

実習

グーテンベルク大学では、各診療科の手術室が別の階や病棟に分かれているため、最初の1週間は福井先生がいらっしゃる整形外科で実習を行いました。初週はモニターの装着方法や、換気管理など麻酔の基本をレクチャーして頂いたり、点滴ルートの取り方をシミュレーションで練習したりしてその後の実習に備えました。2〜4週目では福井先生の下を離れ、私は1週間ごとに産婦人科・小児外科、一般腹部移植外科、脳外科で麻酔導入や手術見学に参加しました。2週目からは完全に日本人1人での奮闘が始まります。心電図やサチュレーション、血圧測定といったモニター準備や酸素投与の補助など、まずは学生でも安全に行えることから手を出していくことで、徐々にマスク換気や気管挿管、点滴確保などの手技を実際に行うチャンスを得ていきました。大体1日に2,3回、手術の間隔が短い科だと4,5回麻酔導入に参加することができました。気道評価から私たちでは挿管困難な患者さんや、一部自費診療の患者さんなど、学生が手を出せない患者さんが体感としては半数程度いましたが、先生方の計らいもありほぼ毎日マスク換気や気管挿管を実践するチャンスが回ってきました。1週間で同じ手術室に入ることも多かったため、ベッド周りの機器準備なども次第に手伝えるようになり、自大学の実習では手を出す機会がない経験ができました。

言語、コミュニケーション

基本的に先生方や患者さんはドイツ語で話されており、話している内容が分からない上、ドイツ語の口数の多さと速さに始めから圧倒されていました。当初は拙い英語と身振り手振りを頼りにコミュニケーションを取るしかない状況に置かれ、特に英語を使わない先生方に囲まれた時には実習が成り立つのか不安になる瞬間もありました。実際に質問の内容が最後まで伝わらない時もありましたが、どの先生方も熱心に対応してくださって何度も救われました。英語を使ったコミュニケーションに関しては、何度もうまく行ったり行かなかったりを繰り返しましたが、何度も麻酔導入の流れを見ることで、自分が質問したいことや手技にチャレンジするタイミングが分かってくると、上手く意思疎通が出来るようになっていったと感じました。手技を実践する際には、毎日各部屋で出会った先生がそれぞれの表現でアドバイスをしてくださったので、それらを組み合わせながら自分の感覚にあったフォームや動きに改善し続けられました。特に気管挿管に関しては日本で聞いていたクロスフィンガーがはじめ全く通用せず、成功までのイメージが中々湧きませんでした。しかし、自分がチャレンジできる患者さんが巡ってきた5,6回目のチャンスの際に、その時教えてくださった先生のアドバイスが刺さり、初めて補助なしで喉頭展開しながらチューブを挿れることができました。その時先生と交わしたハイタッチは忘れられません。

 

最終週に再会したカリム先生とマリウス先生

最終週に再会したカリム先生とマリウス先生

1と4が読めない

1と4が読めない

 
マインツでの生活、放課後や週末

マインツの街中には、大聖堂などの歴史を感じる建物がある一方でレストランやカフェ、買い物ができるお店も多く並んでいました。治安も良く普段は落ち着いた雰囲気なので、非常に暮らしやすい街だと感じました。平日は先生方のおすすめの飲食店(ドイツ料理、ドネルケバブ、ピザなど)を回ったり、近くのスーパーに通って日本では見たことない多様なソーセージやチーズ、お酒、パスタ、牛骨などを試してみたりと、日頃の食事だけでも楽しむことができました。それから私達の宿泊先の近くには、ドイツのサッカー1部リーグで戦っているFSVマインツ05の選手達が練習している旧スタジアムがありました。そこで日本代表の佐野海舟選手とお会いすることができ、ユニフォームにサインまで頂いてしまいました。これは私のマインツでの思い出も詰まった宝物です。
さらに私達の滞在中はマインツのカーニバルの週と重なり、ピークを迎えるパレードの前の週から街には仮装をした人や楽器を鳴らしている人が増え始め、段々とお祭り騒ぎの雰囲気が広がっているのを感じられました。カーニバルの目玉であるパレードの日には、街中の交通網がストップし、マインツの街の規模では考えられない量の人が集まって熱狂している様子が見られました。普段の落ち着いた雰囲気と一変したお祭りムードに自分達も参加することができ、印象深い思い出になりました。

 

カーニバル パレード当日

カーニバル パレード当日

海舟選手と2ショット

海舟選手と2ショット

週末にはベルギー、ミュンヘン、マンチェスターへICE(高速鉄道)や飛行機を使って旅行に行きました。平日は基本朝7:30くらいに病院に着くために起床して、休日もおそらく旅行のため毎日早起きすることになり、普段の大学生活と比べるとかなりハードになると思うので、特に日曜の帰りに夜行バスを使うのはおすすめしません。

 

ミュンヘン、マインツでのサッカー観戦

ミュンヘン、マインツでのサッカー観戦

マインツのワイン祭り

マインツのワイン祭り

 
最後に

今回人生初めての海外留学でしたが、非常に恵まれた環境で実習を行うことができ、4週間で上の文章では書き尽くせない程の貴重な経験や思い出を得ることができました。今回のプログラムについては先輩に話を聞いた時から少しだけ興味があったのですが、募集締め切り前に精神科の小原先生に強く推されたことがきっかけで応募することになりました。実際に自分が海外実習を経験できるとはそれまであまり思っていなかったので、後輩達には興味があればとりあえずでも応募して欲しいなと思いますし、きっかけを作ってくださった方々にも感謝したいと思います。 今回自分が留学生としての立場を経験したことで、普段の実習中に留学生と交流するハードルが無くなったように感じます。語学に関しても、日本語のみで過ごすのはもったいないと感じるようになりました。さらに、日本人として現場で活躍し、実習中も日々の生活でも私達を支えてくださった福井先生の姿は本当に格好良く映り、強く尊敬する存在として心に残っています。出発前には海外で働くことを考えていませんでしたが、その姿を通して、今後のキャリア選択の視野が大きく広がったと実感しました。 最後になりますが、今回の実習をコーディネートして頂いた福井先生をはじめ、九州大学・マインツ大学の先生方、一緒に旅立った渡邊君、支援して頂いたテスさん、その他現地で出会い助けて頂いた多くの方々に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。

渡邊成裕さんの実習報告

ヨハネス・グーテンベルグ大学 麻酔科実習報告

渡邊成裕

2026年2月9日から3月6日までの4週間、クリニカルクラークシップの一環として、ドイツのマインツにあるヨハネス・グーテンベルグ大学にて麻酔科の臨床実習をさせていただきました。本実習では多くの貴重な経験をさせていただいたため、ここに報告いたします。

実習について

日本の大学病院とは異なり、ヨハネス・グーテンベルグ大学病院では、各診療科で手術室の棟や階が分かれており、整形外科を担当する麻酔科医は整形外科の階で整形外科の麻酔のみを担当するというような体制になっています。私たちの実習は1週間ごとに別の診療科の手術室を回る形式で、私は整形外科、泌尿器科、脳外科、腹部一般外科の順で実習をさせていただき、一日だけ心臓外科の麻酔も見学させていただきました。
 初週の整形外科では、九州大学出身の福井先生の指導のもと、オリエンテーションとしてモニターの装着方法やルート確保の方法、麻酔導入の流れ、使用する薬剤など、麻酔管理の基本的な概要について学びました。2週目以降は福井先生の補助なしで、自ら現地の麻酔科医と会話をしながら実習を進めていきました。
 1週目とは異なり、日本語が全く通じない環境で手技や理論を教えてもらうことは非常に大変でしたが、聞き取れなかった時や理解できなかった時には素直に分からないと伝えることで、分かりやすい表現に言い換えてくれたり、図を描いて説明してくれたりと、親切に根気強く指導していただきました。英語で実技を学ぶことは容易ではありませんでしたが、その分、うまくできた時の達成感は非常に大きいものでした。
 また、現地の麻酔看護師の方々や学生もとても気さくで、手術中や空き時間には医療の話だけでなく、ドイツでの学生生活や出身地の話などもすることができ、交流を深めることができました。
 この実習で自分にとって良かった点の一つは、1人ではなく2人で参加した点だと思います。私たちはAirbnbで一つのアパートを借りて共同生活をしていたため、毎日どのような手技ができたのか、どのような知識を身につけたのかを話し合うことができ、互いに刺激を受けながら過ごすことができました。英語でコミュニケーションを取りながら手技を学ぶことは難しく、何度か心が折れそうになることもありましたが、そのたびにもう少し頑張って挑戦してみようと思うことができました。最初は大変で厳しい実習のように感じていましたが、最終週には「まだ実習を続けたい」と思うようになりました。

放課後や週末

実習は朝7時40分集合とやや早い時間から始まりますが、午後3時から4時頃には帰ることができたため、その後は自由に街を散策することができました。
 現地の福井先生が弓道部のOGであり、私も弓道部に所属していたことから、マインツにも弓道をしている人たちがいることを教えていただきました。そこで連絡を取ったところ、温かく迎えてくださり現地の方に混ざって実際に練習に参加させていただきました。日本から遠く離れた国でも、弓道を通じて他国の人々と交流することができたことは非常に貴重な体験となりました。
 

マインツの弓道部の皆さん

マインツの弓道部のみなさん

 

マインツの弓道部のみなさん

 

週末にはドイツ国内外を観光することもできました。ベルギーのブリュッセルやアントワープ、ドイツのノイシュバンシュタイン城、イタリアのヴェネチアなど、さまざまな場所を訪れることができました。また、国際情勢の影響でドイツ滞在が数日延びたこともあり、予期せずマインツのワインマーケットやサッカーの試合を、鹿児島大学から来ていた学生たちと楽しむこともできました。

 

ノイシュバンシュタイン城

ノイシュバンシュタイン城

鹿児島大学の学生とのワインマーケット

鹿児島大学の学生とのワインマーケット

 
最後に

私は実習に参加する前は「何とかなるだろう」とやや楽観的に考えていました。しかし実際に日本語が通じない環境に身を置くと、分からないことが多くあるにも関わらずその疑問をうまく伝えることすら難しいという非常に困難な状況に直面しました。それでも、現地の先生方やスタッフの方々は、たどたどしい英語を話す私に対しても真摯に向き合ってくださり、多くのことを学び、成長することができました。
 また、ドイツで働く福井先生の姿を拝見し、海外で臨床を行う医師の姿を具体的にイメージすることができました。一方で、自分自身はまだ知識面でも語学面でも実力不足であることを痛感しました。しかし、この貴重な経験を通して、将来的に海外留学や海外で医師として働くといった選択肢をより現実的に考えることができるようになりました。
 最後になりますが、この場を借りて、この留学の機会を与えてくださった九州大学麻酔科の先生方、現地でお世話になった福井先生、グーテンベルグ大学のスタッフの皆様、その他すべての関係者の方々に心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

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