2026年06月24日
国際・留学
韓国 釜山大学校での臨床実習報告(クリニカル・クラークシップ)
「クリニカル・クラークシップ」とは、学生が医療チームの一員として診療・治療に参加し、臨床能力を身につける臨床実習方式のことです。
九州大学医学部医学科では、韓国の釜山(プサン)大学校と学生交換交流を実施しています。釜山大学校と九州大学病院とで、相互にクリニカル・クラークシップのための短期留学派遣を行っています。
英語をはじめとする外国語を用いながら、母国とは違う医療の現場を肌で感じる経験は、学生にとって通常の大学生活では得られない貴重なものとなっています。
本記事では、2026年5月18日から6月12日にかけて短期留学を行った学生の報告を掲載します。
杉田志保さんの実習報告
釜山大学での実習
私は、5月18日から6月12日までの4週間、梁山釜山大学病院で実習をさせていただきました。
実習
前半2週間は血液腫瘍内科、後半2週間は小児科で実習を行いました。
血液腫瘍内科では腫瘍内科と血液内科を1週間ずつ実習し、回診や外来見学を行いました。外来見学では、韓国語での会話はgoogle翻訳を使い、カルテを覗き見たり、先生が英語で解説してくださる内容を聞いたりするなどして理解していました。韓国では、カルテの症状や診断などは英語で書かれています。外来見学で驚いた点は、診察室の扉を開け放したまま外来診療を行なっていたことです。先生の背後に座っている私は待合室の患者さんと目が合うような状況で、当然診察室の会話は外まで聞こえます。このことを韓国の学生に尋ねると、プライバシーについてはそれほど気にせず、むしろ病気をオープンにした方が相談しやすく都合が良いと考える患者が多いとのことでした。
小児科では、小児神経内科と小児循環器内科を1週間ずつ実習しました。
小児神経内科では、EEGや頭痛についてのレクチャーを受けたり、外来や腰椎穿刺を見学したりしました。偶然日本語を話せる患者さんがおられたため、病歴聴取も経験できました。空き時間には、入院している患者さんのカルテを自由に閲覧し学習しました。病棟にはGuillain-Barré症候群や、West症候群、胃腸炎関連脳症など教科書で頻出する疾患の患者さんが多く、大変勉強になりました。
小児循環器内科では、川崎病患者さんの心エコー見学、先天性心疾患についての講義、外科的根治手術やカテーテル治療の見学などを行いました。さらに、新生児の心エコーや、カテーテル治療のアシスタントなど、実践的な経験も積むことができました。循環器領域は専門用語や略語が難しく、英語での説明を理解するのに苦労しました。そのため放課後は、翌日の内容に関連する英単語をChatGPTで予習し、お借りした英語の教科書を読むなどして語彙を増やすよう努めました。
韓国では、特に小児科でレジデントの人数が非常に少なく人手不足が深刻のようでした。背景には少子化やQOL重視に加え、訴訟リスクを避ける傾向があるとのことでした。そのように非常に多忙であるにも関わらず、先生方はとても親切に接してくださいました。
生活
寮は病院から徒歩10分くらいの場所にあり、とても快適に過ごすことができました。韓国はキャッシュレス社会ですが、寮の食費の支払いや現地の学生との割り勘など、現金が必要になる機会は多くありました。寮の近くには換金できる場所が(おそらく)見当たらなかったので、事前に多めに換金しておくと安心です。
交流
釜山大学では、海外での病院実習を希望する学生は、低学年の間に留学生を支援する活動に参加する必要があるそうです。そのため、空港に到着した瞬間から英語や日本語が堪能な現地の学生が手厚くサポートしてくださり、非常に助かりました。また放課後や休日には食事会や遠出を計画してくださり、交流を楽しみました。現地で交流した学生は主に医学部1、2年生で、外国語や歴史の勉強、楽器演奏など好奇心旺盛で何かに打ち込んでいる学生が多く、大きな刺激になりました。また、日本の音楽やアニメが度々話題に上りましたが、私自身がそれらに疎かったため掘り下げられずもどかしく感じる場面もありました。自分の国の文化や歴史について、もっと深く知らなければならないと痛感しました。
実習中は、他言語同士でのコミュニケーションですから、特にリアクションをしっかりとることを意識しました。韓国の学生からも「韓国ではその場ではっきり意思表明することが好まれる」と聞いていました。何度も聞き返すのは申し訳なく感じることもありましたが、分からないと隠さず伝えることで、相手の意図を正確に受け取ることができ、自分のレベルに合わせた深い学びに繋がったと感じています。
最後に
釜山大学での実習を通し、医学知識のみならず、文化の違いや多様な考え方に触れ、かけがえのない経験を得ることができました。もし海外実習を選択するか迷っているならば、気負うことなくぜひ挑戦してほしいと思います。
今回の臨床実習に際してご尽力くださった医学学生係及び国際推進部の皆様、温かく受け入れてくださった釜山大学の先生方やスタッフの皆様、学生の皆様をはじめ、支えてくださったすべての方々に心から感謝申し上げます。
小児神経内科の先生方との食事会
Children’s Hospital まるで遊園地のような内装
吉田竜也さんの実習報告
梁山釜山大学病院での実習
今回、私は韓国の梁山市(ヤンサン)にある梁山釜山大学病院にて、2026年5月18日から6月12日までの4週間実習をさせていただきました。
実習
私は前半の2週間を消化器内科、後半の2週間で家庭医学科を回りました。
消化器内科では、内視鏡の手技の見学、病棟回診、肝エコー実習などに参加しました。内視鏡の処置の流れは日本とあまり変わりなく、内視鏡の機械もすべて日本製でした。実際に、先生方は日本の教材や動画を使って勉強するようで、日本の内視鏡の技術が高いことを実感しました。韓国の先生方は英語がとても堪能で、実習中の医学的な説明はすべて英語で行われました。実習期間は医学英語を覚えるのに必死でしたが、とてもいい勉強になりました。昼食は、先生方が毎回用意していただき、終わるとカフェに連れて行ってくれました。さらに、キム教授はwelcome dinnerを開いてくださり、一緒に参加した杉田さんと共に海雲台の焼肉をご馳走になりました。
家庭医学科では、外来見学、ホスピス病棟のカンファ、薬剤説明会などに参加しました。外来中の先生と患者さんの会話は韓国語なので全くわかりませんでしたが、患者さんの診察が終わると英語で説明していただきました。患者さんのほとんどが、高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、末期ガンだそうです。韓国の患者さんは、診察の際に差し入れとしてカフェの飲み物やパンを先生に渡すことがあり、日本との文化の違いを感じました。
留学生である私を快く受け入れて頂き、親切に接してくれた消化器内科と家庭医学科の先生方には本当に感謝しています。
現地での生活
梁山キャンパスの敷地内の学生寮に宿泊させて頂きました。1ヶ月の寮費は約5万円で、1~2か月前に日本から事前送金する必要がありました。自分の部屋には、シャワー室、トイレ(シャワー室と別々)、ベッド、WiFi、勉強机、クローゼットなどがあり、清潔感がある1人部屋を快適に過ごすことができました。洗濯機と冷蔵庫は共用です。それ以外の生活用品は何も無いので、変換プラグ、タコ足コンセント、電気スタンド、220V対応のドライヤー、タオル、ハンガー、ピンチハンガーなどは日本から持ってくることをオススメします。食堂は朝昼夕の中から利用したい時間帯を選ぶことができ、私は朝食と夕食を選択しました。食事はバイキング形式で、そこまで辛くなく美味しく頂けました。キムチは毎回出ます。
釜山での生活は、釜山大学の学生達がサポートしてくれます。日本語がとても上手な学生もいて、コミュニケーションには困りませんでした。休日には彼らが釜山の街を案内してくれて、充実した日々を過ごせました。たまたま5/26~28には釜山大学の学園祭が開催されており、有名な韓国アーティストたちによる大盛況のステージを目の当たりにし、その規模の大きさに圧倒されました。梁山から釜山中心地である西面や海雲台までは1時間ほどかかりますが、地下鉄で片道160円なので時間さえあれば気軽に遊びに行くことができます。
外国語の学習
この実習に行くことが決まってから、韓国語と英語の勉強を少しずつ頑張りました。韓国語は0からの勉強でしたが、基本的には教材一冊とDuolingoアプリで学習していました。発音はGoogle翻訳やChatGPTの音声認識機能を使って練習しました。母国語が少しでも話せると先生たちもすごく喜んでくれます。英語は、まずはTOEICを申し込んで、忘れていた英語の感覚を取り戻しました。その後はChatGPTの音声認識機能を使って実習中に起こりうる状況における英会話を練習しました。現地では、文法が多少間違っていても単語と発音さえ合っていれば、意図を汲み取ってくれて理解してくれます。何よりも伝えようとする気持ちが大事です。
最後に
私はこの海外臨床実習において、外国語によるコミュニケーションの苦手意識の克服を目的に参加しました。日本語が通じにくい環境の中で、1か月間海外で生活し医学を学んだという経験は、自分にとって大きな自信となりました。英語に対して苦手意識があるけど海外に挑戦してみたいという方は、是非とも参加してほしいです。福岡から近く、ご飯がおいしくて、寮がきれいで、比較的安価に海外臨床実習を経験できる釜山大学を選んだことに私はとても満足しています。最後になりましたが、現地でサポートしてくれた釜山大学の学生や先生たちをはじめ、九州大学の関係者の方々、そして何より、この海外臨床実習に送り出してくれた両親、このプログラムに関わったすべての方々に心より感謝申し上げます。
キム教授のwelcome dinner
寮の部屋
病院内のスタバ
釜山大学の学生とカラオケ
