2026年07月16日
国際・留学
米国 イリノイ大学での臨床実習報告(クリニカル・クラークシップ)NEW
「クリニカル・クラークシップ」とは、学生が医療チームの一員として診療・治療に参加し、臨床能力を身につける臨床実習方式のことです。
九州大学医学部医学科では、臨床実習の一環として、アメリカのイリノイ大学校での短期実習プログラムを実施しています。
記事では、2026年5月18日から6月12日にかけて短期留学を行った2名の学生の報告を掲載します。
安藤優那さんの実習報告
Christie Clinic at The Fieldsでの実習報告
米国イリノイ州シャンペーンにあるChristie Clinic at The Fieldsにて、一般外科2週間、眼科2週間の計4週間の臨床実習を行いました。
一般外科では、鼠径ヘルニアおよび臍ヘルニア修復術を見学したほか、術前・術後診察にも参加し、日帰り手術が広く普及しているアメリカにおける周術期管理の流れを学びました。また、乳腺外科外来も見学し、乳がん検診や診療体制について日本との違いを知ることができました。眼科では、白内障や緑内障の診察、術後診察を中心に見学しました。特に印象的だったのは、毎日多くの患者さんに対して細隙灯顕微鏡を用いた診察を実践させていただいたことです。さらに、模型眼を用いて眼底観察の練習を行う機会もあり、貴重な学びとなりました。週に一度の手術日には、白内障手術やレーザー治療を見学し、外来診療から手術、術後管理までを一貫して学ぶことができました。
外来診療では、医師と患者さんの距離の近さが印象的でした。患者さんは診察中にも積極的に質問や意見を述べ、医師もそれに丁寧に応じていました。また、診療方針を決定する際には費用についての話題が挙がることも少なくなく、患者さんの経済的負担を考慮した上で治療法が選択されていました。日本では医療費が診察中の重要な話題となる場面を目にする機会は多くないため、医療制度の違いが診療のあり方そのものに影響していることを実感しました。
英語でのコミュニケーションについても多くの学びがありました。現地では様々な地域出身の患者さんや医療スタッフがおり、それぞれ異なる訛りの英語を話すため、聞き取りに苦労する場面もありました。医療英語については、診察中の会話で分からない単語を調べたり、外科実習では患者さん向けパンフレットや解剖学アトラスを活用したりしながら学習を進めました。それぞれの診療科で頻繁に用いられる語彙はある程度限られていたため、継続して学ぶことで徐々に理解できるようになりました。一方で、患者さんとの日常的な会話には難しさを感じました。患者さんから冗談を言われ、意味は理解できても適切な返答が思い浮かばず、せっかく話しかけてくださった患者さんとの距離を十分に縮めることができなかったと感じる場面もありました。この経験を通して、医療においては知識や技術だけでなく、患者さんとの信頼関係を築くためのコミュニケーション能力が重要であることを改めて感じました。
生活面では、大学の寮に1か月間滞在しました。食事は友人と毎日自炊を行い、現地のスーパーマーケットを利用する中でアメリカの食文化に触れることができました。渡航前は治安面に不安もありましたが、実際には大学を中心とした落ち着いた街であり、安心して生活することができました。また、人々の親しみやすさも印象的で、病院内外を問わず人との距離の近さを感じました。週末にはトロントやシカゴを訪れ、ナイアガラの滝や美術館、野球観戦などを通して北米の文化に触れる機会も得ることができました。一方で、地元で人気のアイスクリーム店を訪れたり、アメリカの映画館を体験したりと、シャンペーンならではの日常も楽しむことができました。
また、眼科実習を担当してくださった先生には大変お世話になりました。ご自宅に招いていただいたほか、様々な場所へ案内していただき、アメリカの文化や生活について学ぶ機会をいただきました。実習だけでは得られない経験を通して、現地の生活や価値観への理解を深めることができました。
今回の実習では、医学的知識や診療技術だけでなく、医療制度の違い、多職種連携のあり方、そしてコミュニケーションの重要性について学ぶことができました。また、異なる文化や価値観に触れることで、自分自身の視野を広げる貴重な機会となりました。今回得た経験や学びを今後の臨床実習や医師としての成長に生かしていきたいと考えています。
最後に、この実習に参加させていただくにあたりお世話になったイリノイ大学の担当者の方々、Christie Clinic at The Fieldsの先生方をはじめ、全てのスタッフの皆様、そして九州大学の担当者の方々に心より感謝申し上げます。
実習先のChristie Clinic at The Field
外科実習でお世話になった先生方と
先生方とSushiレストランにて
横尾みゅうさんの実習報告
臨床実習報告
2026年5月18日から6月12日まで、クリニカルクラークシップの一環として、イリノイ州にあるChristie Clinicにて4週間の実習を行いました。
私がイリノイ大学での実習を志望した理由は、以前から海外、特にアメリカの医療に強い関心を持っていたためです。アメリカは専門分化が進み、医師、看護師、その他の医療スタッフがそれぞれ明確な役割と権限を持ってチーム医療を行っていると聞いており、その実際を自分の目で見て学びたいと考えました。また、学生のうちにアメリカの病院文化や医療現場の雰囲気を体験し、自身のキャリアを考える上での材料にしたいと思いました。今年は本学からイリノイ大学への派遣が初めてであり、最初はどのような実習になるのか不安もありましたが、アメリカの臨床現場を経験できる貴重な機会だと考え、志望しました。
実習では、眼科と外科をそれぞれ2週間ずつローテーションしました。どちらの診療科でも外来診療や手術を見学し、多くのことを学ぶことができました。自分で診療科を選んだわけではありませんでしたが、結果として2つの診療科を経験でき、とても有意義でした。
眼科では、顕微鏡や細隙灯を用いて実際に患者さんの眼を観察する機会がありました。特に顕微鏡は毎日のように多くの患者さんに使用したため、2週間のあいだに操作にかなり慣れることができました。手術では白内障手術を見学しましたが、1人の医師が1日に20件以上の白内障手術を行っていることに大変驚きました。それでも担当の先生は「同じ手術は一つとしてない」と話しており、豊富な症例の中で技術と工夫を積み重ねている姿に強い感銘を受けました。
外科では、鼠径ヘルニア修復術や胆嚢摘出術などの手術を見学しました。日本ではダヴィンチ手術支援ロボットを主に泌尿器科で目にすることが多かったのですが、アメリカでは鼠径ヘルニア手術などにも広く用いられており、その適応範囲の広さに驚きました。また、縫合を手術補助のトレーニングや認定を受けた看護師が担当している場面があり、これも印象に残りました。日本では医師が一連の手術操作を通して行うことが多いのに対し、アメリカでは医師と看護師、その他のスタッフとの間で役割分担が明確にされており、各職種が自分の専門性を生かして効率よく手術を進めていると感じました。
眼科の先生と
外科の先生と
Christie Clinic
アメリカの人々はフレンドリーな方が多く、病院でもスタッフや患者さんが私たちに積極的に話しかけてくださり、コミュニケーションを楽しみながら実習することができました。病院全体の雰囲気も比較的柔らかく、手術室では音楽に合わせてスタッフが歌ったり、時には踊ったりしてよりカジュアルな雰囲気が見られた点が印象的でした。また、スマートフォンから電子カルテにアクセスでき、患者さんの写真をその場で撮影してすぐにカルテにアップロードできるなど、ITを活用したシステムが整っている点も印象的でした。
滞在中はキャンパス内の寮の一つに宿泊しました。キャンパスは広く、病院へは主にバスで通っていました。治安は良好で、安心して生活することができました。食事については、平日は主にスーパーで購入した食材を用いて簡単な自炊をしていました。米が好きなので、電子レンジ対応の容器でご飯を炊いて食べていました。休日には外食を楽しみ、アメリカならではの料理を体験しました。
休日には、カリフォルニアでディズニーランドやロサンゼルスを訪れたほか、カナダのナイアガラの滝、シカゴへの旅行も行いました。ドジャース戦を観戦する機会にも恵まれ、大リーグの雰囲気を生で感じることができたのは、大変貴重な経験でした。
また、実習の終わりには、指導してくださった先生がレストランやゴルフ、先生のご自宅、WalmartやCostcoなどのスーパーに連れて行ってくださり、旅行だけでは味わえない現地の生活を体験することができました。アメリカの寿司も体験しましたが、日本の寿司とは異なり、見た目がとても派手で、火を使った演出があるものもあり、とても興味深かったです。
sushi
先生とゴルフ
カリフォルニアディズニー
トラブルや課題としては、手術室でのコミュニケーションと実習形態の違いがありました。手術室では全員がマスクを着用しているため英語を聞き取りにくく、多くのスタッフがいるため、誰に向かって話しているのか判断が難しいと感じました。ロボット手術では術者がコンソールからマイクを通して指示を出すため、内容を聞き取りづらいこともありました。さらに、アメリカでは私には手術に直接参加できる資格がないため、日本の実習のようにガウンを着て術野に入ることはできず、見学が中心となりました。また、カナダ旅行中にiPadを紛失するというトラブルもありました。友人の協力で最終的には無事に回収することができましたが、海外での紛失や忘れ物への対応がいかに大変かを身をもって実感しました。
今回の実習を通じて、アメリカの医療における役割分担やチーム医療のあり方、日本とは異なる医療文化と教育システム、そして現地での生活まで、多くのことを学ぶことができました。今後は、この経験を日本での学びや将来のキャリア形成に生かしつつ、英語力と専門性をさらに高めていきたいと考えています。
