学生生活

2026年08月24日

国際・留学

米国 イリノイ大学での臨床実習報告(クリニカル・クラークシップ 5期及び6期)

「クリニカル・クラークシップ」とは、学生が医療チームの一員として診療・治療に参加し、臨床能力を身につける臨床実習方式のことです。
 九州大学医学部医学科では、臨床実習の一環として、アメリカのイリノイ大学校での短期実習プログラムを実施しています。
 記事では、短期留学を行った3名の学生の報告を掲載します。

  ・第6期:1名(2026年6月15日から7月10日) 平井 暢 さん
  ・第5期:2名(2026年5月18日から6月12日) 安藤 優那 さん、 横尾 みゅう さん
 

 平井 暢さんの実習報告

米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校 臨床実習報告書

医学部医学科6年  平井 暢

 このたび、2026年6月15日から7月10日までの4週間、米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)の関連施設であるChristie Clinic at The FieldsおよびCarle Foundation Hospitalにおいて臨床実習を行った。実習では一般外科(General Surgery)および病棟内科(Hospital Medicine)をローテートし、手術見学や外来・病棟診療への参加を通して、米国の医療制度や臨床現場における診療の実際を学ぶ貴重な機会を得た。以下に、本留学を通じて得られた学びや知見、日米の医療の違い、ならびに現地での生活を通して得た気づきについて報告する。

1.臨床実習の内容と学び
 General Surgery

 1~2週目は一般外科(General Surgery)の実習を行った。この期間中に3名の指導医の先生のもとで、胆嚢摘出術、虫垂切除術、ヘルニア(鼠径・臍・食道裂孔)修復術、乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検、ポート除去術、痔瘻手術など、幅広い手術を約20件見学した。その中の多くの手術において、手術支援ロボットda Vinciが使われていた。
手術室では、私の質問に対して指導医の先生方が丁寧に答えてくださり、解剖や術式選択の考え方、手技の工夫について実際の手術を通して学ぶことができた。私は術野に入ることは叶わなかったものの、指導医の手術中であっても学生教育を非常に大切にされている姿が印象的であった。指導医から「解剖をよく理解することが手術の成功の鍵だ」と教えていただき、毎朝、その日の予定手術に関する解剖を予習して実習に臨んだ。しかしあるとき、腹壁の筋層についての質問にうまく答えられず悔しい思いをしたが、その悔しさは今でも自身の学びに対する強いモチベーションとなっている。
 外来診療では、術前の診察や術後の創部チェックを数多く見学した。米国の外来は、個室の診察室で待つ患者さんのもとへ医師が順番に赴くスタイルである。指導医の先生は患者と一緒に画像をみながら病状を丁寧に説明し、対話を通して治療方針を決めるShared Decision Makingを実践していた。また、医療スタッフも患者も院内では基本的にマスクを着用しておらず、表情やアイコンタクトといった非言語コミュニケーションを通じた信頼関係の構築が大切にされていた。診察時の自己紹介や握手、時にはハグを交わす姿からは、患者をひとりの人間として尊重し、対等な関係を築こうとする姿勢が感じられた。そうした確固たる信頼関係があるからこそ、患者が自分の意思や不安を率直に口にでき、主体的な選択を支える Patient-centered medicine(患者中心の医療)が成り立っているのだと肌で実感した。 実習中には私自身も患者と直接会話を交わす機会に恵まれ、大変学びの多い体験となった。
さらに1日だけ、外科レジデントの先生と一緒にNight Float(夜間当直)を経験する機会があった。Night Floatとは一定期間夜間勤務のみを担当するシフトであり、レジデントが夜間帯の救急診療を担う。当日は、モーターバイクによる交通外傷、転倒に伴う椎骨動脈解離、小児の異物誤飲、コカインoverdoseの患者の病棟対応など、計5名の緊急患者を経験した。多忙な状況であってもレジデントの先生方は優しく指導してくださり、夜間における外科医の役割や救急対応の実際について学ぶことができた。

Hospital Medicine
 3~4週目は病棟内科(Hospital Medicine)の実習を行い、3名のHospitalistの先生方の診療をシャドーイングした。Hospitalistとは、主に入院患者の診療を専門的に担当する病棟内科医であり、日本の一般内科医や総合診療医に近い役割を担う医師である。施設によって体制は異なるが、実習した病院ではHospitalistが多くの急性期入院患者を担当し、1人の医師が1日に約10〜20名の患者を管理していた。業務内容は、カルテや検査データの確認に始まり、ベッドサイドでの診察・問診、看護師との情報共有や治療・退院方針の検討を行う回診を中心に、患者の容態変化に応じた薬剤調整、専門科へのコンサルト、入退院調整まで多岐にわたっていた。患者を包括的に管理し、必要な医療資源を適切かつ効率的に調整するHospitalistが、米国医療においていかに重要な役割を果たしているかを実感した。
 また、米国では人種や言語だけでなく、文化、宗教、社会的背景など、多様な背景を持つ患者が医療を受けている。実習中には、薬物過量摂取、アルコール依存症、HIV感染症、トランスジェンダーの患者など、日本の実習では経験する機会が少ない様々な患者層に触れることができた。さらに、英語での会話が難しいスペイン語話者の患者に対しては、オンライン通訳サービスを利用してリアルタイムで翻訳しながら診療を進める場面にも立ち会った。あらゆる背景を持つ患者に対応するための柔軟な医療体制を整える重要性を学ぶ、非常に貴重な機会となった。
 実習中には、UIUCの医学生と一緒に学ぶ機会にも恵まれた。米国の医学生は電子カルテへのアクセス権を持ち、自ら患者情報を確認したうえでベッドサイドでの問診・診察を行い、指導医の前でプレゼンテーションを行っていた。さらに指導医のもと薬剤調整の検討やSOAP記録、退院サマリーの作成にも携わっていた。日本では初期研修医が担うような臨床業務の一部を、米国では医学部3〜4年生の段階から実践していることに大きな違いを感じた。病院では彼らと交流する機会も多く、明るく生き生きとした姿が印象的であった。ロング丈の白衣を着ていた私が、短丈の白衣を着る米国の医学生や指導医から「ネクタイも相まって、すっかり一人前の医師だ」と冗談交じりにいじられ、皆で笑い合ったことも微笑ましい思い出である。
 また、ベッドサイドでの身体診察が重視されていたことも印象的であった。高額な医療体制を背景に持つ米国では、検査の適応を慎重に見極めるため、問診や身体診察の情報が最大限活用されていた。この体験を通して、エビデンスに基づいた身体診察技法と、的確な診断に至る臨床推論の重要性を改めて認識した。さらに、私自身もUpToDate(米国で日常診療の臨床判断に直接活用されるツール)を使いながら、薬剤の副作用や用量について指導医と議論する機会を得た。徹底した身体診察とエビデンスを組み合わせた実践的な診療プロセスを学ぶことができ、大変実りある実習となった。

2.学びと考察:日米の医療システムの違い
 本実習を通じて最も強く実感したのは、多職種連携が支える米国医療システムの「徹底した分業による効率性」である。
 米国では、ジェネラリストとスペシャリストの専門領域が明確であり、それぞれの専門性を活かした診療体制が構築されていた。例えばHospitalistは入院患者を臓器横断的に診療し、必要に応じて各専門科へコンサルトを行う。日本では複数の疾患を抱える患者が特定の専門科で管理されることも少なくないが、米国の急性期病院ではHospitalistが全身管理を担い専門医と連携することで、効率的な診療体制を実現していた。
 また、コメディカルスタッフの役割分担が高度に細分化されていた点にも驚かされた。PA(Physician Assistant)やNP(Nurse Practitioner)が一定の権限のもとで診察や処方などの診療行為を担うほか、CST(手術助手)、CRNA(麻酔看護師)、Phlebotomist(採血技師)など、多種多様な専門職が自身の領域に特化して業務にあたっていた。このようなタスクシェアリングの徹底は、医師の負担軽減につながるだけでなく、医療経済的にもきわめて合理的であると実感した。
 このような多職種連携を支える重要なインフラの一つが、電子カルテシステム「Epic」である。Epicではスタッフ間で患者情報や治療方針をリアルタイムに共有・チャットできるほか、施設間でのデータ連携や、患者自身が自身の医療情報へアクセスできる仕組みが整っていた。さらに医師はスマートフォンからEpicへアクセスが可能で、院外からでも情報確認やオーダー入力を行える。導入や維持コストの高さといった課題はあるものの、日本においても医療機関を越えて情報共有ができる統一された電子カルテシステムの必要性を感じた。
 外科診療においても米国医療の効率性を痛感した。経験した手術の多くが日帰りまたは翌日退院であり、日本と比較して入院期間が極めて短かった。私自身、前年に虫垂切除術で5日間入院した体験を指導医に話したところ大変驚かれたが、このように短期間で患者を退院させることで、急性期病院はより多くの患者を受け入れることが可能となる。
 一方で、短期間入院には課題も存在する。実際に多くの患者へオピオイド系鎮痛薬(Norcoなど)が処方されていたが、術後の疼痛管理は患者自身に委ねられる部分が大きい。オピオイド系鎮痛薬は疼痛コントロールに有効な一方、乱用や依存症につながるリスクがあり、現に米国では「オピオイド危機(Opioid Crisis)」が深刻な社会問題となっている。医療システムの効率化の裏に潜む大きな課題であることを実感した。
 さらに、米国の医療保険制度が抱える課題についても深く考えさせられた。米国では民間保険が主体であり、医療費が高額なため無保険者にとっては大きな経済的負担となる。低所得者向けのMedicaidなどの公的制度はあるものの、加入保険のプランによっては高額な治療や専門医へのアクセスが制限されることもあると指導医から伺った。
こうした体験を経て、日本の国民皆保険制度が持つ「誰もが必要な医療を受けられる」という公平性とアクセスの良さを改めて実感した。同時に、日本が直面する医療費の増大や病院経営の課題に対し、限られた医療資源をいかに効率的かつ適切に活用するかという視点の重要性も学んだ。今回の実習は、日米双方の医療システムが持つ利点と課題を深く理解し、今後の医療のあり方を考えていくうえで大変有意義な機会となった。
 

                   
                    外科実習でお世話になったDr. Jonesと


          
                      Carle Foundation Hospitalにて

          
                    UIUCの医学生と参加したボランティア活動にて


3.UIUCにおける医工連携教育
 実習最終日には、UIUC工学部のDr. Bradleyと昼食をご一緒する機会に恵まれ、UIUCにおける医工連携教育において、医学生がどのようにengineering mindset(工学的思考)を身につけているのかについてお話を伺った。
 UIUCはもともと工学分野に強みを持つ大学であり、LEDをはじめとする革新的な技術を生み出してきた歴史ある大学である。その強みを活かし、併設されたCarle Illinois College of Medicineは世界初の「engineering-based medical school」として設立され、工学的視点を先進的に取り入れた医学教育を行っている。その特徴的な取り組みの一つが、医学部カリキュラムに組み込まれているIDEAS programである。このプログラムでは、医学生がエンジニアと協働して現場の課題を発見し、工学的なアプローチによって解決する力を養っている。Dr. Bradley から紹介された実践例には、先天性心疾患を説明するための3D心臓モデルや、乳房切除術(mastectomy)における神経損傷を防ぐ医療デバイスの開発などがあり、臨床現場のニーズに応える具体的な成果となっていた。
 今回の意見交換を通して、医学的知識のみでは解決が難しい臨床課題に対しても、工学的視点を掛け合わせることで新たな解決策を生み出せる大きな可能性を実感した。日本の医学教育においても、将来的にこのような医工連携カリキュラムを取り入れることが、医療イノベーションを担う人材育成につながるのではないかと感じた。

4.課外生活
 臨床実習以外の面でも、今回の留学は多くの学びに満ちたものとなった。例えば、実習中に生理食塩水(saline)の準備を指示された際、英語を聞き取れず誤ってシリンジを渡してしまったこと、悪天候による列車の突然の運休、滞在先のバスルームに長時間閉じ込められるハプニングなど、予想外のトラブルに幾度となく直面した。九州大学から一人で参加する中、その都度冷静に解決策を考え対処することで、予期せぬ事態にも柔軟に対応する力を身につけることができたと実感している。
 一方で、実習後や休日にはUIUCの医学生や他の留学生と映画鑑賞やシカゴ旅行、食事を楽しんだり、ボランティア活動に参加したりと充実した時間を過ごした。さらに指導医のご自宅でのアニメ鑑賞ホームパーティーにご一緒させていただく機会もあった。多様なバックグラウンドを持つ人々との交流を通して異文化や多様な価値観に触れ、国際的な視野を広げることができた。本留学は医学的知識や臨床経験の獲得にとどまらず、人間的にも大きく成長する貴重な体験となった。

おわりに
 本臨床留学を通じて、日米の臨床現場や医療システムを比較する視点から、米国の高度な医療技術や合理的な診療体制、そして患者中心の医療を実践する医師の姿勢について多くの学びを得ることができた。ここで得た知見や経験を今後の学習や臨床研修に存分に活かし、医療知識や技術の習得はもちろんのこと、異なる文化や多様な価値観を尊重できる広い視野を持った医師を目指して学び続けていきたい。

謝辞
 最後に、本留学の実現にあたり、大学間交流にご尽力くださった石橋達朗総長、赤司浩一先生をはじめ、国際医療部の先生方、同窓会の先生方、学生係の皆様、そして関係してくださったすべての皆様に心より感謝申し上げます。また、イリノイ大学のCohen医学部長をはじめ受け入れにご尽力くださった関係者の皆様、熱心にご指導いただいたDr. Jonesをはじめとする指導医の先生方に深く御礼申し上げます。
 九州大学とUIUCの連携プログラムに第1期生として参加できたことを大変光栄に思います。本プログラムが今後さらに発展し、両大学間の学術・学生交流が末永く継続していくことを心より願っております。
        
                 UIUCのアメフトのGies Memorial Stadiumにて    

       


       


                     シカゴで食べたDeep dish



        
                 米国建国250周年のFourth of Julyのイベント



 

安藤優那さんの実習報告

Christie Clinic at The Fieldsでの実習報告

安藤 優那

米国イリノイ州シャンペーンにあるChristie Clinic at The Fieldsにて、一般外科2週間、眼科2週間の計4週間の臨床実習を行いました。
一般外科では、鼠径ヘルニアおよび臍ヘルニア修復術を見学したほか、術前・術後診察にも参加し、日帰り手術が広く普及しているアメリカにおける周術期管理の流れを学びました。また、乳腺外科外来も見学し、乳がん検診や診療体制について日本との違いを知ることができました。眼科では、白内障や緑内障の診察、術後診察を中心に見学しました。特に印象的だったのは、毎日多くの患者さんに対して細隙灯顕微鏡を用いた診察を実践させていただいたことです。さらに、模型眼を用いて眼底観察の練習を行う機会もあり、貴重な学びとなりました。週に一度の手術日には、白内障手術やレーザー治療を見学し、外来診療から手術、術後管理までを一貫して学ぶことができました。
外来診療では、医師と患者さんの距離の近さが印象的でした。患者さんは診察中にも積極的に質問や意見を述べ、医師もそれに丁寧に応じていました。また、診療方針を決定する際には費用についての話題が挙がることも少なくなく、患者さんの経済的負担を考慮した上で治療法が選択されていました。日本では医療費が診察中の重要な話題となる場面を目にする機会は多くないため、医療制度の違いが診療のあり方そのものに影響していることを実感しました。
英語でのコミュニケーションについても多くの学びがありました。現地では様々な地域出身の患者さんや医療スタッフがおり、それぞれ異なる訛りの英語を話すため、聞き取りに苦労する場面もありました。医療英語については、診察中の会話で分からない単語を調べたり、外科実習では患者さん向けパンフレットや解剖学アトラスを活用したりしながら学習を進めました。それぞれの診療科で頻繁に用いられる語彙はある程度限られていたため、継続して学ぶことで徐々に理解できるようになりました。一方で、患者さんとの日常的な会話には難しさを感じました。患者さんから冗談を言われ、意味は理解できても適切な返答が思い浮かばず、せっかく話しかけてくださった患者さんとの距離を十分に縮めることができなかったと感じる場面もありました。この経験を通して、医療においては知識や技術だけでなく、患者さんとの信頼関係を築くためのコミュニケーション能力が重要であることを改めて感じました。
生活面では、大学の寮に1か月間滞在しました。食事は友人と毎日自炊を行い、現地のスーパーマーケットを利用する中でアメリカの食文化に触れることができました。渡航前は治安面に不安もありましたが、実際には大学を中心とした落ち着いた街であり、安心して生活することができました。また、人々の親しみやすさも印象的で、病院内外を問わず人との距離の近さを感じました。週末にはトロントやシカゴを訪れ、ナイアガラの滝や美術館、野球観戦などを通して北米の文化に触れる機会も得ることができました。一方で、地元で人気のアイスクリーム店を訪れたり、アメリカの映画館を体験したりと、シャンペーンならではの日常も楽しむことができました。
また、眼科実習を担当してくださった先生には大変お世話になりました。ご自宅に招いていただいたほか、様々な場所へ案内していただき、アメリカの文化や生活について学ぶ機会をいただきました。実習だけでは得られない経験を通して、現地の生活や価値観への理解を深めることができました。
今回の実習では、医学的知識や診療技術だけでなく、医療制度の違い、多職種連携のあり方、そしてコミュニケーションの重要性について学ぶことができました。また、異なる文化や価値観に触れることで、自分自身の視野を広げる貴重な機会となりました。今回得た経験や学びを今後の臨床実習や医師としての成長に生かしていきたいと考えています。
最後に、この実習に参加させていただくにあたりお世話になったイリノイ大学の担当者の方々、Christie Clinic at The Fieldsの先生方をはじめ、全てのスタッフの皆様、そして九州大学の担当者の方々に心より感謝申し上げます。

実習先のChristie Clinic at The Field

実習先のChristie Clinic at The Field

外科実習でお世話になった先生方と

外科実習でお世話になった先生方と

先生方とSushiレストランにて

先生方とSushiレストランにて



 

横尾 みゅうさんの実習報告

臨床実習報告

横尾 みゅう

2026年5月18日から6月12日まで、クリニカルクラークシップの一環として、イリノイ州にあるChristie Clinicにて4週間の実習を行いました。

 

私がイリノイ大学での実習を志望した理由は、以前から海外、特にアメリカの医療に強い関心を持っていたためです。アメリカは専門分化が進み、医師、看護師、その他の医療スタッフがそれぞれ明確な役割と権限を持ってチーム医療を行っていると聞いており、その実際を自分の目で見て学びたいと考えました。また、学生のうちにアメリカの病院文化や医療現場の雰囲気を体験し、自身のキャリアを考える上での材料にしたいと思いました。今年は本学からイリノイ大学への派遣が初めてであり、最初はどのような実習になるのか不安もありましたが、アメリカの臨床現場を経験できる貴重な機会だと考え、志望しました。

 

実習では、眼科と外科をそれぞれ2週間ずつローテーションしました。どちらの診療科でも外来診療や手術を見学し、多くのことを学ぶことができました。自分で診療科を選んだわけではありませんでしたが、結果として2つの診療科を経験でき、とても有意義でした。

 

眼科では、顕微鏡や細隙灯を用いて実際に患者さんの眼を観察する機会がありました。特に顕微鏡は毎日のように多くの患者さんに使用したため、2週間のあいだに操作にかなり慣れることができました。手術では白内障手術を見学しましたが、1人の医師が1日に20件以上の白内障手術を行っていることに大変驚きました。それでも担当の先生は「同じ手術は一つとしてない」と話しており、豊富な症例の中で技術と工夫を積み重ねている姿に強い感銘を受けました。

 

外科では、鼠径ヘルニア修復術や胆嚢摘出術などの手術を見学しました。日本ではダヴィンチ手術支援ロボットを主に泌尿器科で目にすることが多かったのですが、アメリカでは鼠径ヘルニア手術などにも広く用いられており、その適応範囲の広さに驚きました。また、縫合を手術補助のトレーニングや認定を受けた看護師が担当している場面があり、これも印象に残りました。日本では医師が一連の手術操作を通して行うことが多いのに対し、アメリカでは医師と看護師、その他のスタッフとの間で役割分担が明確にされており、各職種が自分の専門性を生かして効率よく手術を進めていると感じました。

眼科の先生と

眼科の先生と

外科の先生と

外科の先生と

Christie Clinic

Christie Clinic

アメリカの人々はフレンドリーな方が多く、病院でもスタッフや患者さんが私たちに積極的に話しかけてくださり、コミュニケーションを楽しみながら実習することができました。病院全体の雰囲気も比較的柔らかく、手術室では音楽に合わせてスタッフが歌ったり、時には踊ったりしてよりカジュアルな雰囲気が見られた点が印象的でした。また、スマートフォンから電子カルテにアクセスでき、患者さんの写真をその場で撮影してすぐにカルテにアップロードできるなど、ITを活用したシステムが整っている点も印象的でした。

 

滞在中はキャンパス内の寮の一つに宿泊しました。キャンパスは広く、病院へは主にバスで通っていました。治安は良好で、安心して生活することができました。食事については、平日は主にスーパーで購入した食材を用いて簡単な自炊をしていました。米が好きなので、電子レンジ対応の容器でご飯を炊いて食べていました。休日には外食を楽しみ、アメリカならではの料理を体験しました。

 

休日には、カリフォルニアでディズニーランドやロサンゼルスを訪れたほか、カナダのナイアガラの滝、シカゴへの旅行も行いました。ドジャース戦を観戦する機会にも恵まれ、大リーグの雰囲気を生で感じることができたのは、大変貴重な経験でした。

 

また、実習の終わりには、指導してくださった先生がレストランやゴルフ、先生のご自宅、WalmartやCostcoなどのスーパーに連れて行ってくださり、旅行だけでは味わえない現地の生活を体験することができました。アメリカの寿司も体験しましたが、日本の寿司とは異なり、見た目がとても派手で、火を使った演出があるものもあり、とても興味深かったです。

 

sushi

sushi

先生とゴルフ

先生とゴルフ

カリフォルニアディズニー

カリフォルニアディズニー

トラブルや課題としては、手術室でのコミュニケーションと実習形態の違いがありました。手術室では全員がマスクを着用しているため英語を聞き取りにくく、多くのスタッフがいるため、誰に向かって話しているのか判断が難しいと感じました。ロボット手術では術者がコンソールからマイクを通して指示を出すため、内容を聞き取りづらいこともありました。さらに、アメリカでは私には手術に直接参加できる資格がないため、日本の実習のようにガウンを着て術野に入ることはできず、見学が中心となりました。また、カナダ旅行中にiPadを紛失するというトラブルもありました。友人の協力で最終的には無事に回収することができましたが、海外での紛失や忘れ物への対応がいかに大変かを身をもって実感しました。

 

今回の実習を通じて、アメリカの医療における役割分担やチーム医療のあり方、日本とは異なる医療文化と教育システム、そして現地での生活まで、多くのことを学ぶことができました。今後は、この経験を日本での学びや将来のキャリア形成に生かしつつ、英語力と専門性をさらに高めていきたいと考えています。



 

ページのトップへ