2026年07月16日
国際・留学
タイ チュラロンコン大学での臨床実習報告(クリニカル・クラークシップ)NEW
「クリニカル・クラークシップ」とは、学生が医療チームの一員として診療・治療に参加し、臨床能力を身につける臨床実習方式のことです。
九州大学医学部医学科では、臨床実習の一環として、タイのチュラロンコン大学校での短期実習プログラムを実施しています。
本記事では、2026年5月18日から6月12日にかけて短期留学を行った3名の学生の報告を掲載します。
岡内有芙さんの実習報告
チュラロンコン大学でのクリニカル・クラークシップ実習報告
2026年のクリクラ第5期(5/18~6/12)として、タイのバンコクにあるチュラロンコン大学で実習を行わせていただきました。私は神経内科に配属となり、4週間の実習を行いました。
チュラロンコン大学病院はバンコクの中でも中心部に位置する病院で、規模も大きく外来棟や入院棟だけでいくつもあります。チュラロンコン大学は、タイの紙幣にもなっているラマ5世の名を冠した大学で、タイ国内でも有名な大学のようです。また、タイ国外からの留学生も多く受け入れており、日本人医学生のほかに欧米圏の医学生も多くいました。タイの医学教育は英語で行われているため、国際的にも実習先として人気があるのかもしれません。
チュラロンコン大学病院は24時間営業なので夜も輝いています
神経内科の実習は朝が早く、毎日8時から回診が始まります。回診では他科からのコンサルトや救急症例、入院症例など多彩な患者さんを見学することができました。回診が終わると、レジデント向けの講義に参加したり、外来見学をしたりしました。基本的には、患者さんとのやり取りはすべてタイ語で行われますが、先生方はその後英語で説明してくださるのでしっかりと学びのある実習になりました。また、神経診察では実際に患者さんの動きを見るので、タイ語が分からずとも視覚的に理解することができ、実習中に私も実際に患者さんの神経診察をさせていただくことができました。
実習を通して印象に残ったのは、チュラロンコン大学では専門分野が非常に細分化されていることです。例えば、脳卒中やてんかん、パーキンソン病、脳炎などそれぞれに専門の教授がいらっしゃり、入院や外来でもその専門の先生にかかることができます。専門外来の一つである、Movement Disorder clinicでは、パーキンソンニズムによる歩行障害や振戦を主に診察していましたが、そのほか顔面けいれんなど不随意運動に関する症例を多岐にわたって扱っており、大変興味深かったです。そのほかにも、Memory clinicやEncephalitis clinic、Epilepsy clinicなど様々な外来がありました。
実習中には、タイの医学生とも交流することができました。タイの医学部も日本と同様に6年制となっており、病院実習は4年生から始まるようです。日本の医学生に比べてタイの医学生は英語で医学を学んでいることもあり英語が上手で、回診や外来のときに通訳してくれたり、たくさん話しかけてくれたりしました。また、おすすめのタイ料理の店を教えてくれるなどとても親切にしていただき、お互いに日本語やタイ語を教えあったりもしました。タイの医学生は実習も早朝から始まり、夜勤もあり、日本に比べて大変なようですが、非常に積極性があり、進んで質問しているのが印象的で、ぜひ見習いたいと感じました。
今回の実習にあたっては、チュラロンコン大学が手配してくださったホテルに一か月滞在しました。今回は工事中でしたが、本来は病院キャンパス内にある医学生用の寮も利用できるようです。私が滞在した時期はちょうど雨季がはじまるときで、雨季本番ほどではないものの何度かスコールも経験しました。気温は毎日30℃越えで非常に暑かったですが、先生方曰く乾季より日差しが弱く涼しくなっているとのことです。幸いなことに、バンコク市内は大型ショッピングセンターが充実しており、涼むことができます。病院に直結したショッピングセンターもあり、時間があるときはそこでも昼食をとっていました。(病院内にも食堂はいくつかありますが昼時は混みあいます。)また、屋台やローカルマーケットの食事も安くておいしくよく食べに行っていました。
休日は、バンコク市内の寺院を巡ったり、ショッピングを楽しんだりしました。また隣国のラオスまで足を延ばしたり、仲良くしていただいた神経内科の先生や他大学の日本人医学生とともにパタヤへ観光に行ったりしました。タイは観光名所が沢山あり、休日や祝日を利用して訪問していましたが、本当にあっという間の一か月でした。
お世話になった先生、他大の日本人医学生とヤワラート(中華街)で屋台飯
チュラロンコン大学での実習を通して、医学に関する日本と海外の違いを学ぶとともに、タイの人々の温かさにも触れることができました。微笑みの国の名の通り、医学生や先生方、そして町の人々に大変親切にしていただきました。初めてのタイ訪問でしたが、何の不安もなく終えることができたのは、タイの方々の優しさ故だと感じました。また、海外の医学生との交流は、医学へのモチベーションを高めてくれるものでした。世界中の医学生が自分と同じ医学生として熱心に勉学に励んでいる姿を見ることは、自分の勉学への態度を見つめなおす良い機会となりました。
最後にはなりますが、このような貴重な機会を与えてくださった九州大学、チュラロンコン大学の皆様に感謝申し上げます。この経験を生かして、今後も勉学に邁進していきたいと思っております。大変お世話になりました。
土本遼平さんの実習報告
チュラロンコン大学での臨床実習報告書
私は5/18~6/12の4週間タイのチュラロンコン大学で臨床実習に参加したので、実習の内容やタイでの生活についてここで報告させていただきます。
【実習】
私は前半の2週間は呼吸器内科・睡眠医療(Sleep Medicine)、後半の2週間で消化器内科の臨床実習に参加しました。
前半の2週間では世話人である教授のDr. Narichaについて回って、呼吸器内科の外来、気管支鏡検査、回診を中心に実習を行いました。またDr. Narichaは睡眠医療も専門とされており、睡眠障害に関する外来や症例検討会にも参加しました。それらの実習の中では日本での実習ではそこまで深く扱わないようなPSG(ポリソムノグラフィー)の読み方やCPAPの適応条件などについて学ぶことができました。回診や外来はタイ語で行われることも多くありましたが、Dr. Narichaや周りのフェロー、レジデントの先生方が、簡単な英語や図で説明してくださり理解を深めることができました。
後半の2週間では消化器内科の臨床実習に参加しました。消化器内科では世話人の教授であるDr. Paritの指導のもと、回診や内視鏡検査を見学しました。回診では簡単なディスカッションを求められる機会があり、英語が苦手な私にとっては中々苦しい時間でしたが、他の日本の学生と協力しあったり、簡単な英語で説明してもらったりと四苦八苦しながらなんとか取り組むことができました。内視鏡検査では、胆道ステント留置やIPMNの評価目的のEUS、Peutz-Jeghers症候群に対するポリペクトミーなどを見学しました。内視鏡検査には私たち以外にもアメリカからの留学生や香港からの医師が見学、チュラロンコン大学のグローバル性を感じられました。また、内視鏡のシュミレーターを取り組んでみたいという私たちの希望を伝えると、Dr. Paritはとんでもなく忙しそうにしていたにも関わらず”Sure!!”と言って時間を割いてくださいました。その他にも現地の学生やレジデント、フェローに対して教授自ら丁寧なレクチャーをしていた様子は大変印象的でした。
2週間の中で大まかに二つの診療科で臨床実習を行いましたが、時間がある時にはICUの回診にも参加させていただきました。そこでは、現地の学生と症例についてディスカッションをしたり、他愛もない話をしたりすることができ、大変有意義でした。印象的だったのはタイの医学生が動脈穿刺や気管挿管、オーダーなどを行なっていたことです。タイの医学生は日本でいう研修医レベルのことが求められており、また医学部の授業は英語で行われているとのことでした。同世代の医学生が流暢な英語でテキパキと働いている様子は日本でのんびり実習をしている私にとって大変刺激になりました。


【生活】
タイでの約1ヶ月の生活は大変刺激的で、ここでは全てを書ききれないほどのものでした。特に食べ物については、パッタイやトムヤムクン、カオマンガイなど日本人の口に合うものが沢山あり、1ヶ月の中で少し太ってしまいました。また、「微笑みの国」と言われるように、タイ人は基本的に親切で穏やかな人が多いように感じました。宿泊については工事中で当初泊まる予定だった寮ではなく、大学が手配したホテルに宿泊しました。このホテルにはジムやプール、屋上にジャグジーまでもが兼ね備えてあり、なに不自由無く快適に過ごすことができました。週末にはリゾート地であるプーケットや伝統的なお寺、水上マーケットなど多くの観光もできました。全体では120/100点のタイでの実習ですが、お水とローカルフードには気をつけてください(私は刺身で5日間お腹を壊しました)。
【さいごに】
この実習が始まるまでは、私にとっては長期間の初めての海外滞在で不安に感じていましたが、終わってみれば本当にあっという間でした。日本で1ヶ月実習をしても同じように医学知識や医師としての倫理観を身につけることができるかもしれません。ただ、自分とは異なる言語や生活様式、宗教観などの中にいる人々と医学を通して関わることは、自分の懐を深くするきっかけになるのかなと私は思いました。また、私たち留学生に現地の先生方、医学生たちが大変親切にしてくださったように自分たちもしていかなければならないなと感じました。
最後に実習の機会を与えてくださった先生方や学生係、国際推進部の皆様、現地で支えてくださった全ての先生方、スタッフの方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました!ขอบคุณครับ!


冨永優貴さんの実習報告
チュラロンコン⼤学 実習報告書
2026年5⽉18⽇から6⽉12⽇までの4週間、タイ・バンコクのチュラロンコン⼤学医学部附属King Chulalongkorn Memorial Hospitalにて海外臨床実習を⾏いました。今回の実習には⼤学から3名が参加しており、私は1ヶ⽉間⼩児外科でお世話になりました。私⾃⾝にとっては⻑期間の海外⽣活が初めてだったため、出発前は⾔語や⽣活⾯に不安がありました。しかし、⼤学の先⽣や学⽣の皆様、そしてタイ現地の⽅々に温かく迎えていただき、充実した4週間を過ごすことができました。この報告書を通して、1ヶ⽉間で私が得た学びや経験を紹介させていただき、海外での実習に興味を持っている後輩たちの参考になれば幸いです。
ー実習ー
実習先のチュラロンコン⼤学は「タイの東⼤」と呼ばれるほどタイを代表する⼤学であり、附属病院は国内有数の⾼度医療機関です。病院には多くの医療従事者や学⽣がおり、教育・研究・診療が⼀体となった環境が整っていました。私は主に⼩児外科の外来(OPD)および⼿術室(OR)で⾒学を⾏いました。外来では尿道下裂、停留精巣、陰嚢⽔腫、⿏径ヘルニアなどのcommon diseaseからアンドロゲン不応症や先天性副腎⽪質過形成などの希少な疾患まで⾒学し、⼿術室ではそれらに対する⼿術を⾒学しました。患者さんや医療従事者の⽅々はタイ語で会話されているため、何を⾔っているのかほとんど分かりません。ただ、診察や⼿術の前後には担当医から英語で説明を受け、疾患や治療⽅針への理解を深めることができました。
⼩児外科の先⽣⽅、ドイツからの留学⽣と⼿術室にて
ータイの医学生ー
今回の実習を通して、タイの医学⽣から様々な点で刺激を受けました。まず印象的だったことが、タイの医学⽣の主体的な姿勢です。指導医と活発に議論し、外来での診察の補助を積極的に⾏っている姿が印象的でした。⽇本では学⽣が⾒学中⼼となる場⾯も多くありますが、タイでは診療チームの⼀員として学んでいる様⼦が印象的でした。
更に、タイの医学⽣の⾼い英語⼒にも本当に驚かされました。講義資料や教科書、そして授業の多くが英語で⾏われているようで、我々に合わせて医学的な議論を英語で⾏う際、流暢な英語で意⾒を主張しているところが印象的でした。タイの⽅々にとっても英語は⺟国語ではないため、⽇常的な会話に関しては⽇本⼈の私でも割と聞き取りやすかったですが、医療的な話になると途端にわからなくなり、⾃分の気持ちや意⾒を英語で表現することの難しさを痛感しました。医療英語を学び、普段から⽇常的に英語を使うことの重要性に気付かされました。今回の1ヶ⽉間は、遠回しな表現やジェスチャーなどを駆使してなんとか意思疎通を⾏うことができました。 また、⽇本とタイの医療体制や医学教育の違いについても学びました。タイでは医師不⾜が深刻であり、限られた医療資源の中で多くの患者を診療する必要があります。そのため、学⽣の段階から実践的な教育が⾏われています。特に印象的だったのは、医学⽣にもナイトシフトが課されていることです。学⽣は⽇中の講義や実習に加え、夜間診療にも参加して早期から臨床経験を積んでいました。このような環境の中でも、学⽣たちは⾼い意欲を持って学習に取り組んでおり、⼤きな刺激を受けました。
ー現地での⽣活ー
実習期間中はチュラロンコン⼤学が⼿配してくださった宿泊施設に滞在しました。コインランドリーはもちろんプールやジム、学習スペースまで⽤意されており⾮常に環境が整った清潔感のあるホテルでした。バンコクは交通渋滞が多く、移動には主にGrabのバイクタクシーを利⽤しました。当初は⼾惑いましたが、次第に慣れることができました。
⾷事ではカオマンガイ(蒸し鶏とご飯)やパッタイ(タイ⾵焼きそば)を始めとしたタイ料理を主に楽しみました。多くの⽅が親切で英語も通じたため、⽣活⾯で⼤きな不便はありませんでした。また現地には、私たち以外にもバンコクの⼤学へ海外実習に訪れた⽇本の⼤学⽣が多くいたため、他の⽇本の⼤学⽣とも交流する機会がありました。
バンコクへ実習に訪れた⽇本の⼤学⽣の交流会
休⽇にはバンコク市内の寺院や有名な観光地を訪れたほか、プーケットやピピ島にも⾜を運びました。また現役医学部ゴルフ部員として、タイのゴルフ場のコースでのプレーも⾏いました。医療だけでなく、タイの⽂化や歴史、⼈々の⽣活に触れられたことも海外実習の⼤きな意義であったと感じています。
ー最後にー
正直なところ出発前までに⼗分な準備も叶わず、英語⼒にも不安がある私が1ヶ⽉間、⽣活はともかく実習までやっていけるのだろうかという不安を抱いていました。しかし、⾏ってみれば関わる全ての⽅々に温かく迎えていただき、⽇本やその他の国からも同じように実習にやって来た学⽣とも知り合って交流することができたため、慣れるまでに時間はかからず、新しい環境には⾶び込んでみるものだな と感じました。
また、今回の実習を通してタイの医学⽣の⾼い英語⼒と主体的な姿勢から多くの刺激を受け、私が海外の学⽣に遅れをとっていることを痛感しました。この経験をこれからの学習に活かし、将来いつ⾃分が海外の医療に携わっても良いような準備をしていきたいと思います。
最後になりますが、チュラロンコン⼤学での実習をコーディネートしてくださった皆様、そして海外からの実習を暖かく受け⼊れてくださったチュラロンコン⼤学病院⼩児外科の先⽣⽅、海外実習へのご協⼒を賜りました同窓会の皆様、1ヶ⽉共に過ごした同級⽣たちと海外実習に参加するにあたり決断を後押ししてくれた両親にこの場を借りて感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
