学生生活

2010年08月02日

国際・留学

グーテンベルク大学(ドイツ)での臨床実習 2

 
左写真:ヴェルナー教授と
右下写真:一ヶ月の実習を経験した外科病棟


グーテンベルク大学実習体験記
医学科6年 村上 健太

・準備
今年からの試みということで、ドイツ語をちょこちょこ勉強しつつ、実際に参加するんだよなあという不安を抱え、4月を迎えました。4月に入ってから、現地でお世話をしていただく福井先生とのやり取りをしていくうちに本当に行くんだという実感が少しずつ湧いてきました。出発直前にはマインツに短期留学しておられた竹内先生から話を聞くことができ、イメージも膨らみました。
・出発・到着
期待7割、不安3割という感じで出発しました。でも、せっかくドイツに行くのだから、観光も頑張らなくてはということで、すこし早目にドイツ入りしミュンヘンやシュトゥットガルトを3日間ほど観光しました。フランクフルトで他の2人と合流し、いよいよマインツ入りです。マインツ駅には福井先生が迎えに来てくださり、アパートへ向かった後、市場でおおきなソーセージを食べ、生活必需品を買いました。その日の夜は福井先生に御馳走になり、携帯の設定の仕方を教えてもらっている間にすやすや眠ってしまいました。
・実習
今回は麻酔科の実習で、脳神経外科、腹部外科、胸部外科の麻酔に入りました。ドイツでは麻酔科の先生も専門があるそうです。ドイツでは日本よりも学生に手技をやらせてくれます。実際に私も静脈ラインの確保、点滴の作成、薬の投与、マスク換気、気管挿管、中心静脈穿刺をやらせてもらいました。静脈ラインの確保は最初はなかなか一人ではできませんでしたが、2週目からはときどき一人でできるようになりました。気管挿管は完全に一人でやることはできず、少し悔いが残ります。中心静脈穿刺は先生と一緒にやることができ、いい経験になりました。また、マインツ大学には立派なシミュレータがあり、麻酔の導入の流れを通して体験することができ、大変勉強になりました。マインツの先生方は、人工呼吸器のことや麻酔薬のこと、それから今なぜこういう処置をしたのかを熱心に英語で教えてくださいました。中にはご自身が英語が得意でないため、あまり教えてくれない先生もいましたが、ごく希でした。ただ、私たちに説明してくださるとき以外は、すべてドイツ語なので、もう少しドイツ語が分ったらなあというのは感じました。
・アフター5、週末
実習の後は週3程度福井先生や先生の友人たちとの懇親会でした。地元で人気のあるレストランに食べに行ったり、誰かの家に招待されたりしてとても楽しい時間を過ごすことができました。週末はドイツでの研修に一緒に参加している学生3人でケルンに行ったり、ヴュルツブルクに行ったりしました。ケルンの大聖堂では階段を登るのが大変でした。
・総括
今回は、福井先生、外教授、Werner教授ほか様々な人々の協力でマインツでの実習ができたことに感謝します。海外での実習を個人で成立させるのは大変だと思うので、来年度以降もマインツ大学での実習がつづいていくことを願ってやみません。


学生の海外臨床実習を受け入れて
ヨハネス・グーテンベルク大学医療センター
麻酔科 福井公子


外国の病院で働く機会をいただいて以来、 九州大学の後輩の方々の海外実習のお手伝いができればといつも思っておりましたので、今回、麻酔・蘇生学の外教授、医学教育学の吉田教授、グーテンベルク大学麻酔科のヴェルナー教授のご指導・ご協力の下、6年生の海外実習を実現することができ、本当にうれしく感じています。
私が勤務するヨハネス・グーテンベルク大学医療センターは、フランクフルトから西へ車で1時間ほどのマインツという街にあります。活版印刷を発明したグーテンベルクの生まれた街で、これが大学の名前の由来にもなっています。街のシンボルになっている大聖堂やローマ時代の遺跡など、あちこちに歴史の重みを感じることができますが、学生が多くとても活気がある街です。
当大学医療センター麻酔科は、手術室が44室、医師・麻酔専門看護師を合わせたスタッフが約150名という大所帯で、手術室・麻酔の管理だけでなく、救急医療・集中治療・ペインクリニックといった様々な領域をカバーしています。手術室は一般外科・脳外科・心臓外科、、といったように専門別に独立しており、スタッフ医師はじめ研修医や学生も各手術室に分かれて配属されています。ヨーロッパでは国をまたいだ大学間の単位認定システムがすすんでいるため、外国からの臨床実習生は珍しくありませんが、教育プログラムとしての受け入れ経験はほとんどなく、病院での学習・実習内容・生活のサポートなど多くが手探りの状態で第一期の実習がスタートしました。
九州大学の実習では、4週間という限られた時間の中でできるだけ多くのものを見て経験していただきたいという考えから、各手術室を1週間毎にローテートするというスタイルをとっています。 第一期では、一般外科・脳外科・心臓外科手術室で実習していただきましたが、今後希望があれば、外傷外科や集中治療室などでの実習も検討したいと考えています。
それぞれの手術室では上級医といわれるスタッフ医師の監督の下で麻酔担当医や看護師
と一緒に終日麻酔に参加します。輸液ラインの確保、マスク換気や気管内挿管といった日本では学生がなかなか経験できない手技も、日常的に経験することができます。第1期の参加者の中には、動脈ラインや中心静脈ライン留置といった難しい手技にまで挑戦し成功した人もいたようです。
ただ、こちらは科の規模が大きく、日本のように麻酔担当医が自ら術前訪問を行ったり、朝のカンファレンスで症例について科全体でディスカッションをするということがありません。そのため、シミュレーションセンターでの人形を使った麻酔のシミュレーション実習や、麻酔にまつわるテーマについての講義(麻酔薬・脳の生理・輸液管理など)を手術室での実習の間に組み込んで、麻酔についての理解をより深めてもらえるよう配慮しています。
海外実習にあたって多くの方が不安を持たれるのが言葉の問題だと思います。ドイツでは医療現場の会話はドイツ語ですが、ほとんどの医師は英語も流暢に話すことができるため、外国の実習生に対する指導やディスカッションは英語で行われます。とはいえ、周到に準備をしていても、実習が始まってすぐは、英語を話すことはもちろん聞き取りも難しくて、緊張と戸惑いでカチコチになってしまうことがほとんどです。ただ、数日、1週間、と時間が経つにつれて必ず慣れてくるものですし、正しい英語でなくても知りたい、聞きたいという熱意があれば、不思議と意思の疎通をすることは可能ですので、きっと得られるものがあると思います。
この学生実習をきっかけに九州大学とグーテンベルク大学の交流が様々な形で広がり、強い絆ができるよう、微力ながら今後もできる限りお手伝いをさせていただければと思っています。興味がある方は是非、麻酔科・蘇生科の医局までご連絡ください。



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