学生生活

2013年08月16日

専攻教育

平成25年度 学外クリニカルクラークシップ-地域医療実習

 急速に進む高齢化社会の中で、医学教育モデル・コア・カリキュラムに「地域医療実習」が導入されることにより、積極的に地域の現場での実習が推奨されています。九州大学医学部では平成24年5月に地域医療教育ユニットが設立され、本格的に地域医療実習を開始することとなりました。平成24年度は5年生のみの実習でしたが、平成25年度は5年生に加え、6年生がクリニカルクラークシップ期間内の4期に分かれて、合計6人の学生が福岡県郊外の5病院及びその関連施設で4週間の地域医療実習に参加します。その教育プログラムとして外来診療実習に加え、訪問診療・訪問看護、介護施設や保健所での実習、患者さんや地域住民対象の健康講話などを行います。地域に密着した医療や保健福祉を実地で学ぶことにより、今後一人でも多くの医学生が地域の方々に寄り添う医療を提供し、また地域医療を担う意欲・使命感を持った医師に育つことを願っています。

 

「文責:地域医療教育ユニット 貝沼 茂三郎」


学外クリクラ-地域医療実習について
医学科6年 山下 なつき
 

 
 本年度より6 年生の実習で地域医療実習を選択できるようになり、5 月の1 ヶ月間を飯塚市にある頴田病院で実習させていただきました。以前から地域医療、家庭医に興味があった私にとっては、この頴田病院の実習プログラムは大変魅力的なものでした。

 午前中は外来で新患、再診患者さんの予診をさせてもらい、午後は訪問診療に同行しました。外来実習では限られた時間の中で必要な情報を得るために、患者さんへの問診の仕方、お話の聞き方、身体診察の方法を繰り返し練習しました。これまで外来で患者さんの問診・診察をする機会は少なかったため、患者さんとコミュニケーションをとりながら、こちらの聞きたいことも質問するというのはとても難しいことでした。予診の様子をビデオ撮影して指導医の先生にフィードバックしていただき、自分の問題点を確認することもでき大変勉強になりました。指導医の先生の問診では疾患に関してだけではなく、患者さんの家族関係、生活の様子、趣味の話や最近不安に感じていることなど、より深く話しているのがとても印象的でした。訪問診療では、医師・看護師と共に施設や患者さんの自宅を訪問しました。患者さんの生活の様子を見ることができ、住宅環境、食事、服薬状況などを知ることができました。また、患者さんとご家族の方と一緒に今後の治療方針、延命処置の希望などについて話合う場面に参加することもでき、とても貴重な経験となりました。自宅で最期を迎えることを希望されている方、施設での生活を希望される方、NICU から退院したばかりの乳児など、様々な状況の患者さんがいらっしゃいました。

 他にも、乳幼児検診、保健所実習、公民館での住民健康講話も行いました。乳幼児健診では、8ヶ月、1歳半、3歳児検診を経験することができました。保健所実習では、発達・発育の遅れが疑われる子供を、医師・理学療法士・言語療法士・保健師が評価する教室に参加しました。子供と遊びながら診るべきポイントを教えていただき、現場のチーム医療を実感することができました。公民館では60~80 代の方約20 名を対象に、診察室で医師に伝えてほしいことをお話しました。分かりやすく伝えるために、専門用語をなるべく使わず、大きな声でゆっくり話すことを心がけました。初めての経験だったため、分かりやすく伝えることの難しさ、また地域の方の反応を近くで感じることのできる面白さを感じました。公民館では婦人会の方々の手作りカレーを一緒にいただきました。近くに座った方とお話しながら、地域に病院があることの安心感、公民館での活動について知ることもできました。講話後の質問では、家庭でできる予防医療や、早期発見するにはどうしたらよいか、といった内容が多く、予防医療も重要な医療の分野だと感じました。

 1 ヶ月の実習では、高齢社会の現状、医療が行き届いていない地域があること、看取りの問題など、社会的な問題を知ることもできました。非常に充実した1 ヶ月を過ごすことができ、私も将来地域に密着した医療に携わりたいと思いました。このような貴重な機会を与えてくださった地域医療ユニットの貝沼先生、永田先生、頴田病院の皆様には大変感謝しております。本当にありがとうございました。

関連リンク 
医療法人博愛会 頴田病院 ウェブサイト
地域医療実習を終えて
医学科6年 菊池 嘉朋
 
 本年度からクリニカルクラークシップの一環として地域医療実習が取り入れられました。私は6月3日から6月28日までの4週間、公立八女総合病院を中心としてさまざまな医療機関の協力の下で実習させていただきました。実習のプログラムは初診外来、訪問診療、僻地医療など地域医療において必要な分野に重点を置いて行われました。実習では看護師、理学療法士、社会福祉士など医師以外の職種の方から指導を受ける割合が多く、医師以外の視点から医療に携わることができ新鮮な経験となりました。また、病院以外に久留米保健所での実習もプログラムに入っています。私たちの学年では公衆衛生で保健所実習がなかったため、貴重な体験となりました。いずれの施設でもスタッフの方々が温かく受け入れて下ったため、非常に実習しやすい環境であったと思います。

 
 実習の内容についても説明しておきます。初診外来は問診、診察、カルテの書き込み、指導医への報告までを研修医の立会いの下で行います。報告の後、指導医から注意すべき訴え、追加するべき問診、鑑別診断などの指導が入ることもあり、とても勉強になります。訪問診療は医師が行う訪問診察、看護師が行う訪問看護、理学療法士が行う訪問リハに同行させていただき、診察やリハビリなどを行いました。患者の症状に対する診察・ケアだけではなく、住宅環境の確認や患者家族との細かい情報交換など、自宅での生活を強く意識している点が特徴でした。僻地医療実習は矢部村にある診療所で行いました。矢部村は山中にある村で、最寄の町まで車で1時間半以上かかるため、住民はどんな症状でも最初に診療所に来るそうです。実習として行えることは多くありませんでしたが、採血や長谷川式簡易知能評価スケール、胼胝の切除など科に関係なく様々なことを経験できました。保健所実習は久留米保健所で行われます。AIDS健診、結核審議会、親子教室、健康講話など保健所業務の一環を経験できるほか、精神障害疑いの通報に対する検討会なども見学できました。その他の実習としては、緩和ケア病院や老人保健施設の見学なども行いました。

 地域医療に興味があったために参加した実習でしたが、医師としての在り方も考えさせられる充実した1ヶ月であったと思います。最後になりましたが、このような貴重な経験をさせていただいた貝沼先生、永田先生、公立八女総合病院企業団、柳病院、矢部診療所、久留米保健所の皆様に心より感謝いたします。本当にありがとうございました 。
 
関連リンク 
公立八女総合病院 ウェブサイト
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