学生生活

2013年08月12日

専攻教育

平成25年度研究室配属(3年)

 九州大学医学部医学科、生命科学科では3年次前期に研究室配属Ⅰのカリキュラムを行っています。これは将来研究者として活躍するにあたり、早期に実際の研究分野に身を置き研究チームの一員として働くことにより、研究者としての自覚や倫理観の養成や、研究室での基本的な知識やルールを学ぶこと、また、協調的な学習環境の中で問題解決能力を高め、生命医学領域に対する学習意欲の向上をめざすことを目的としています。

今年研究室配属を終えた2名の学生の感想文をご紹介します。
早期研究室配属を終えて
医学科3年 加峯 亮佑

 3年生前期の研究室配属では、僕は形態機能病理学分野で約1ヵ月間お世話になりました。正直この研究室配属に対する自分の意欲は無いに等しいものでした。もともと研究に興味などなかったし、また医学知識もまだ乏しい自分が到底役に立てるとも思えなかったからです。

 僕がこの研究室でやったのはGISTの研究です。GISTとは、消化管間質腫瘍のことですが、一言でGISTといってももちろん僕にとっては何のことかさっぱりでまさに暗闇の中を手探りで進むような感覚でした。しかし、そんな中、担当の山元先生やその他の研究室職員の方々は忙しい中丁寧にGISTのことや実験の意義まで丁寧に指導してくださいました。実験の具体的内容としては、様々なGISTの細胞にどのような遺伝子変異が生じているのかを調べるためにPCRをかけてシークエンス解析を行ったり、免疫染色でGISTの細胞を顕微鏡観察したりしました。実験自体はうまくいかなかったこともありましたが、最終的には満足いく結果を得ることができました。また免疫染色も初めてのことだったので貴重な体験だったと思います。この配属期間で学んだことを英語でスライドにまとめつつ、最終日に発表しました。医学用語も全部英語であるため理解して説明するのになかなか苦労しましたが、先生方は優しい目で見守ってくれました。無知な僕にとってその優しさはとても嬉しく、助かりました。また同時進行で山元先生の書いた英語の論文を和訳するという作業も行いました。今まで出会ったことのない英単語の連続でなかなか進みませんでしたが、なんとかやり遂げることができました。研究室の先生方は普段からこのように英語で論文を書いているのだと思うと、素晴らしいという感情以外何も起こりませんでした。またこの論文和訳を通じてGISTという今回の研究テーマのおおよそは理解することができました。論文にはたくさんの研究成果や情報が書いてありましたが、最初何も分からない状態でここまでの発見ができるというのは、研究の醍醐味であり、また基礎研究の偉大さを示しているといえるでしょう。今回の研究では、一重にGISTといっても遺伝子異常の違いによって治療のアプローチの仕方が異なってくることが分かり、またこの研究は他の癌治療などの方法のいいモデルとして役立つのではないだろうかと思いました。今回の研究のように症例を詳しく解析し、それに合った適切な治療を検討することは今後の医学の発展にも必要不可欠なのだと感じました。

 最後になりましたが、1ヵ月間初めは何も分からなかった僕に丁寧に指導してくださった先生方には大変お世話になりました。おかげで医学研究の大切さに気付くことができました。心から御礼申し上げます。


形態機能病理学分野のウェブサイト
早期研究室配属を終えて
医学科3年 今福 輝

  私は、3年生前期の早期研究室配属として、医学教育学に約1ヶ月間お世話になりました。医学部のカリキュラムをこなしていきながら、どのような方法で勉強、学習するのが効果的なのか、ということについて関心があったこともあり、この研究室を希望しました。

 興味があったとはいえ、医学教育学について何も知らず、研究とは何なのかということさえもわからない状態だったので、はじめに医学教育学について自分が研究したいと思うテーマを決め、個人で研究を進めていくということに漠然とした不安を感じていました。しかし、論文の読み方、研究計画書の書き方について、吉田先生と菊川先生に詳しく、丁寧に教えていただいたおかげで、研究の簡易的な流れが理解できたので、私は医学教育学に関する論文をいくつか読み、背景となる知識を身につけた上で、「低学年の医学生のWeb学習システムの利用状況について-利用状況の改善」というテーマに基づいて研究を進めることにしました。研究計画を書いてから、研究発表までの間、実質2週間という短い期間で研究を行わなければならなかったため、Web学習システムの利用状況に関するアンケートの実施と、授業評価アンケートにあるWeb学習システムに関する意見・要望を集約し、分析することの2つの方法をとりました。アンケートをとる際は匿名で行い、結果を研究や教育の改善以外で用いないことなど、倫理的配慮をしたうえで実施しました。その結果をまとめ、Web学習システムを利用する動機を知った上で、その動機を刺激し、Web学習システムの利用頻度を高めるための方法を模索し、提案しました。自ら仮説をたてて臨んだことで、スムーズに進めることができたと思います。

 また、今回は英語の論文を読むことや、英語でプレゼンテーションのスライド作りを行ったりと、英語に触れることが多かったため、自らの英語力のなさを痛感するとともに、英語の重要性も再確認することができたため、今後の学習のモチベーションへと繋がったと思います。研究とは、今現在わかっていることが何なのかを理解したうえで、わかっていないことを発見することですが、そのためには、英語で書かれた論文をしっかり読解できることが必要不可欠となってくるので、しっかり勉強していきたいと思います。

 1ヶ月という非常に短い期間でしたが、今回の研究を通して、今までの学習と違った見方、考え方を学ぶことができました。熱心に指導してくださった吉田先生、菊川先生に心からお礼を申し上げます。


早期研究室配属を終えて
医学科3年 小野 裕也

  今回私は研究室配属で病態制御内科学分野(第三内科)の消化器研究室に配属されました。この研究室を選んだ理由は腸管免疫が人体において重要な役割を果たすことに興味を持ったからです。腸管というとこれまでのイメージだと食べ物を消化・吸収することしか思い浮かべることができませんでしたが実は腸管は人体の中での最大の免疫器官ということを知ってとても驚いたと同時に興味が湧きました。

 
 
 私が研究室で行った実験のテーマは『潰瘍性大腸炎における大腸生検サンプルを用いた免疫学的異常の解析』でした。具体的には潰瘍性大腸炎の生検サンプルを用いて、種々のサイトカインや核内転写因子の発現量を調べることで腸管免疫機構のどこに異常があるかを確かめる実験をしました。潰瘍性大腸炎は腸管に慢性持続性の炎症を起こす病気で、炎症を起こす時期と炎症が収まる時期が存在します。現在この病気に大きく影響していると考えられているタンパク質の異常な増加が免疫の恒常性維持を担っている制御性T細胞のシグナル伝達を阻害することで潰瘍性大腸炎を発症していると考えられています。そこでサンプルからtotal RNAを抽出しこれを逆転写反応によりcDNAにしました。これをreal time PCRで増幅させることにより、もとの組織中に存在していた種々のサイトカインや核内転写因子の発現量の大小をmRNAレベルで比較しました。実験のどこに解明の糸口があるのか、実験の設定条件をどのように変えればよりよい結果を得られるのかはある程度理解することができました。


 この一ヶ月の感想としては、実験方法のひとつひとつは派手なものではありませんがこの小さな作業の地道な繰り返しが重要な結果を生み出すことを実感できたとともにこれが将来的にどのように患者に役立つのかという臨床的な側面も考えながら実験できたことで医師となってからの自分にプラスになったと思います。最後にこの一ヶ月間という短い期間でしたが実験の原理から丁寧に指導してくださった深浦先生をはじめ消化器研究室の皆様、そして第三内科の皆様に心から感謝を申し上げます。

病態制御内科学分野のウェブサイト
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