学生生活

2014年08月22日

専攻教育

平成26年度研究室配属(3年)

 九州大学医学部医学科、生命科学科では3年次前期に研究室配属Ⅰのカリキュラムを行っています。これは将来研究者として活躍するにあたり、早期に実際の研究分野に身を置き研究チームの一員として働くことにより、研究者としての自覚や倫理観の養成や、研究室での基本的な知識やルールを学ぶこと、また、協調的な学習環境の中で問題解決能力を高め、生命医学領域に対する学習意欲の向上をめざすことを目的としています。

今年研究室配属を終えた3名の学生の感想文をご紹介します。
早期研究室配属を終えて
医学科3年 小熊 俊輝

 
数理生物学会の様子
  3年前期の研究室配属で、私は自分の希望が叶い系統解剖学教室に配属されることになりました。2年生の1月ごろから時々教室にお邪魔していたこともあり、完全に見知らぬ環境で驚いた、ということはありませんでしたが、それでも長時間の講義などに縛り付けられることなく、自分のやりたいように物事を進めることが出来たこの1か月は非常に楽しいものでした。

  配属されたこの系統解剖学教室は、解剖学と名前はついているものの主に扱う題材は生物の発生における器官形成の原理を数理的に表す、という他ではあまり見られないものでした。私のテーマは互い違いの構造や境界などを作るのに主に用いられるNotchというタンパク質を介した情報伝達についてだったのですが、これまでこっそり勉強していた数学(といっても大したことはしてないですが)と堂々と勉強していた基礎医学(といっても大したことはしてないですが)の出会う場所があることに非常に興奮を覚えました。

  研究室では発生学的な現象を再現できるモデルを考えたり、器官の形成が行われるような条件を考えるようなことが主でしたが、三浦先生から直接指導を受けたり、数時間にわたってディスカッションしていただいたり、広い机を貸してもらったり、高価なソフトを使わせてもらったりと恵まれた環境の中不自由なく作業や勉強を進めることが出来ました。当然毎日が進捗まみれという訳にはいかず、日によっては良いモデルが無いか一日中考えていたけれども結局良さそうなものは何も思いつかなかったという日もありました。それでも自分の考案したモデルが数値計算上で思い通りの形になってくれた時の喜びは非常に大きかったです。

  またその成果を発表する機会として数理生物学会にも連れて行って下さることになり、そのための準備として私の稚拙極まりない英語のポスターや原稿の手直しなども手厚くしていただきました。軽い気持ちで行かせて下さいと言ったものの実は国際学会で非常に怖気づきましたが、こういった経験は後々どの方向に進んでいくにしても科学的な営みを続ける以上必ず役立ってくれるだろうと期待しています。

  一つのことに集中して取り組めたことで、この1か月は非常に充実していました。この機会と環境を与えてくれた系統解剖学教室の先生方、特に三浦先生に心から感謝申し上げます。



系統解剖学分野のウェブサイト
早期研究室配属を終えて
医学科3年 宮内 雄太

  今回の研究室配属で僕は基盤幹細胞学の研究室に配属され、ここの研究室では主に神経の幹細胞の分化について研究をしていて、短い期間ではありましたが研究を体験させていただきました。今まで二年少しの間、医学部で基礎的なことを勉強してきましたが、それでも研究をしている現場に行くと自分の知識不足を実感し、まずはスタートラインに立つのが大変でした。

  神経幹細胞はニューロン、アストロサイト、オリゴデンドロサイトの3つのいずれかに多くの要因によって分化するのですが、その分化の方向を決める要因となっているものには様々な種類があり、僕はそのうちmicroRNAについて研究している人のもとで実験を見たり、手伝ったりしました。普段の授業では生徒の数が多いためどうしても一方通行的になりがちなのですが、今回は一つの研究室に約三人という少人数であったので分からないところはすぐに聞けて、周りの人たちも優しい人たちばかりでとても過ごしやすく参加していて楽しかったです。実験では幹細胞に導入するmicroRNAを培養したり、免疫染色でmicroRNAを導入した細胞がどのような変化をしたか見たりと多くのことを実際にやらせてもらいました。免疫染色は実験手順になかなか奇抜な手順があったり、結果が色で綺麗に出てくるので印象に残りました。実験以外にもmiRNA関連の論文を読んで発表することもしました。論文は英語で書いてあるため専門用語はもちろん、独特な言い回しに苦戦しました。論文の中に出てくるデータの解釈の仕方もなかなか大変で、一つの論文を読んでいてもそれに関連した論文を見ながらやっているとかなり時間をかけないと読めませんでした。しかし、手助けをしてもらいながら論文を一通り読み終わるといま自分がやっている実験のことが今までより身近に感じられるようになりました。

  正直なところ僕は今回の研究室配属が始まる前まであまり研究に魅力を感じていなかったのですが、実際に自分体験してみると、意外と楽しいかもしれないなと思いました。それに自分たちで決めたテーマに向かって自分達で方法まで考えて研究をしている姿はかっこよく映りました。医学部に入ったのだから医者になるしかないと思っていた自分に研究者も面白いよと新たな選択肢を与えてくれる非常に有意義な期間だったと思います。


基盤幹細胞学分野のウェブサイト

早期研究室配属を終えて
生命科学科3年 北川 玲華

 
研究室の皆さんと
  今回の早期研究室配属で、私は形態機能形成学分野の神野先生の研究室に約1ヶ月間お世話になりました。脳と心の関係について脳内の神経回路の構築から考察していくという研究スタイルに興味をもちこの研究室を希望させていただきました。

  この間に私が研究していたテーマは、うつ病モデルマウスの脳の状態をグリア細胞の数や分布の観点から正常マウスの脳の状態と比較し、うつ病時の脳と正常時の脳の違いを探ることや、PCRや電気泳動を利用したDNAワークなどを体験させていただくことができました。難しい作業が多く、パソコンでの解析は慣れない操作で時間がかかりましたが、研究室の方々が親切に教えてくださり、最後までやりとげることができました。

  私を含め3名がこの研究室に配属されたのですが、それぞれが異なるテーマを担当し、最終日にそれぞれの結果を発表しました。発表はパワーポイントを用いたプレゼン形式でしたが、方法や結果を英語でまとめることや、相手に分かりやすく説明することの難しさを改めて実感しました。他二人の発表を聞いてさらに知識を深めることもできました。
  また、この期間に英語の論文を読んで要約するという作業もあり、英語に触れる機会を得ることができました。今後どんな研究に携わったとしても英語の論文を読むことになるはずなので、英語があまり得意ではない私にとってとても良い訓練になったと思います。将来のためにも、もっと英語論文に慣れるよう興味のある論文を探して少しずつでも読んでいこうと思いました。

  私が思うに研究室配属の最大のメリットは、普段は見られない先生方の研究生活や、研究の進め方を間近で見て、同じ時間を過ごすことができることだと思います。これまでの学生生活とは一味違う研究生活をより身近に感じられるので、今まで漠然としていた自分の将来を思い描き見つめなおす良い機会となりました。
また、研究室の方々と多くの話をすることができ、親切にしていただいて非常に楽しく貴重な時間を過ごすことができました。良い仲間にも恵まれ、とても充実した毎日でした。今回学んだことは今後の学生生活、研究生活で生かしていこうと思います。

  約1ヶ月という短い期間ではありましたが、神野先生をはじめ、ご指導していただいた研究室の方々には心より御礼申し上げます。


形態機能形成学分野のウェブサイト
ページのトップへ