在学生の声

在学生の声

令和2年度 医学科6年 江崎 慈萌さん

何を大切にしたいかを意識して、
自希望の進路を選んでください。


令和2年度 医学科6年 江崎 慈萌さん

医学を志したきっかけを教えてください。

 小学校の頃の親友が両親ともにお医者さんで、「将来はお医者さんになりたい。」と言っているのをよく聞いていました。また、私の父は鍼灸院を開業しており、「治す」ということを身近に感じながら成長しました。こういう環境で自然と医師を意識するようになったのだと思います。 そうは言っても、高校生になった時点での苦手科目は英語と数学で、理系に進むのがためらわれたのですが、全教科で一番好きな科目が生物で、その中でも人体が一番楽しかったので、それだけを頼りに高校2年生の時に医学部進学コースを選択しました。 
 

受験勉強は大変でしたか。

 大変でしたが適度にストレス発散しながら、遅くまで友人と学校に残って勉強したり、最後までやり抜くことが出来たと思います。

 担任の先生は、「現役で進学しようと思わず、浪人してでも行きたい大学に入った方がいい。」とおっしゃる先生でした。私の第一志望はこの学科だったのですが、模試の判定では一番良くてB判定、普通はD判定でした。なので、入試も受かればいいかな。というくらいで気負いせずに受験しました。それが良かったのか現役で合格することができました。

 受験勉強では得意科目を優先して取り組み、苦手科目の英語、数学はセンター試験と二次試験の間に詰め込みました。一日10時間以上勉強していました。数学は問題をこなして、解法を身に着ける作戦で、英語は長文と英作文を一日1問は取り組むようにしていました。なんでがんばれたのかなと思うけど、この持久力は3年生の8月まで目一杯取り組んだ陸上部で養われたのかもしれません。
 

入学してからの学習について教えてください。 

 1年生は伊都キャンパスで全学教育を学びます。数学、英語といった高校で習った科目をもっと深くした内容や、文学、言語学、心理学といった初めて学ぶ分野まで、どれも楽しく学べました。
 2年生になって医学教育が始まり、DNAや発生などヒトについて学びます。暗記しないといけないこともかなり増えますが、私は生物が好きだったので、苦に感じることはなかったです。3年生の臨床科目では、医療現場で活躍されている医師の先生の講義を担当されます。教科書にも載っていないような最新の臨床現場のお話も聞くことが出来て、とても興味深かったです。
   受験勉強と大学での学習の大きな違いは、受験勉強は問題を解けるようになることが目的で、勉強したことをすぐに問題にアウトプットしていくのですが、大学では頻繁に試験があるわけではなく、ひたすらに人体の成り立ちや仕組みなどを知識を受け取ります。例を出すと、薬だったらどの成分がどれに作用して治療につながるかなど、事細かに整理して覚えていく感じです。自分の中に蓄えていくようなイメージで、大変といえば大変ですが、楽しいと言えば楽しいと思います。

授業外で印象に残ったことを教えてください。

 私は5歳から空手を習っていて、中高は別の部活だったのですが、大学では医学部の空手道部に入部しました。週3回練習に取り組み、西日本医科大学体育大会で2年生から5年生で個人戦4連覇を果たすことができました。個人戦で優勝することも大変光栄なことですが、団体戦で優勝して部活のみんなで喜びを分かち合いたいというのが私の悲願でした。 私の下の学年では、女子の入部者はいなかったのですが、その次の年に一気に4人に入部してくれて、またその次の年も入部がありました。部員のうち1/4だった女子が部員の半分を占めるようになって活気づき、その頃から女子部員同士の切磋琢磨が始まりました。その甲斐あってか、私が5年生の時の西医体では、おそらく医学部空手道部女子の初の快挙となる団体戦優勝を勝ち取りました。団体戦3名の選手のうち、私以外の2人は大学で始めた初心者だったのですが、みんなで頑張って本当によかったと心からみんなで喜びました。
 アルバイトも家庭教師、飲食、コールセンターといろいろやってみました。それぞれに学ぶことがあり、どれもいい経験になったのですが、ここではコールセンターのアルバイトの話を取り上げます。コールセンターではお客様からの電話を受けて、商品の内容を説明してお客様に選んでいただくまでが一連の流れになります。マニュアルもあるのですが、お客様ひとりひとり違うので、それぞれが理解しやすいように話すことを心掛けていました。優しいお客様ばかりで、ちゃんと説明すると良さを分かっていただました。説明から契約までつながることは達成感があり、声だけとはいえど人と人とのコミュニケーションだと感じていい経験になったと思います。年輩の方も働いておられ、私よりとても上手くてすごいと思いました。お客様の前に出る仕事ではないので服装も自由で、個性的なファッションの方もいらっしゃて、そのファッションと声のギャップが大きくて面白かったです。

病棟実習について印象に残ったことを教えてください。

 私の学年はコロナ渦で、6年生では病棟に出られる日が限られていたのですが、5年生ではしっかりと患者さんと接することができました。 70代くらいの患者さんで、筋力が弱くなる症状で入院されていたのですが、薬で一気に回復してから毎日、計画的に運動されていました。日々、「今日は階段を何階分昇れた。」とニコニコして私に伝えてくださることが嬉しかったです。他の患者さんでは、社会人としての人生指南をしてくださったり、医師としてではなく、医師になる準備段階の一人の若者として、患者さんが素のままでお話してくださったことは貴重な経験になりました。
 6年生で配属された腫瘍内科は、患者さんのQOLを強く意識するきっかけになりました。ここでは、手術で取り除くことのできない癌が、それ以上大きくならないよう、抗がん剤治療を受けられている患者さんにお会いしました。癌の告知から受容までの心の経過、癌の痛みの治療についてなど、患者さん側からと医師側からの双方のお話を聞かせて頂くことができました。
 
 臨床実習では、実際の医療現場について身を持って知ることができました。これは腫瘍内科の先生に限ったことではないのですが、医師の方々は本当にかっこよくて、優しくて、患者さんのために働いていらっしゃることを感じて、より一層憧れが強くなりました。

研究室配属のこと教えてください。

 医学科では3年生の前期に研究室配属というカリキュラムがあり、各研究室で研究体験をします。配属先の希望を出すことができるのですが、研究室配属直前に生体防御医学研究所 免疫遺伝学分野 福井教授がかゆみのメカニズムについての論文を発表されました。私自身アトピーだったので、すごく興味を持ち、研究室配属で配属して頂きました。研究室では基礎的な実験から今の最先端の研究までを見させて頂きました。講義で理解したと思っていたことも、こうやって体験することでより深まると思い、まだ治療法が確立されていない病気のためにも、根本的なメカニズムの解明はとても重要であり、研究についての意義を感じました。
 

これからの進路を教えてください。

 倉敷成人病センターで初期研修を受けさせて頂きます。私は研究室配属で免疫についての関心を持つようになりました。不妊の原因は明らかになっていない部分も多いのですが、免疫が不妊の原因になることについても考えられています。倉敷成人病センターでは、膠原病や不妊治療に力を入れておられ、どちらも免疫が関わることであることが、初期研修先にこちらを希望した大きな理由です。そして、センターを見学させて頂いた時に、センターの患者さんを大切にする姿勢に共感して、その日に初期研修先希望をここにしようと決めました。後にわかったのですが、西医体で決勝戦を争った宮崎大学の先輩もそこで初期研修を受けていらっしゃることを知り、この偶然にとてもびっくりしました。充実した2年間になるような予感しかなく楽しみにしています。
 
 将来的には、膠原病内科や腫瘍内科など、患者さんが病気と上手く付き合っていくことが求められるような診療科に進みたいと今は思います。完治が難しい患者さんに専門家として手助けしながら、寄り添うことが出来るようになり、患者さんのQOLを高めることに役立ちたいと思います。そう思うのは臨床実習が大きく影響しています。実際にそのような先生ばかりで自分もそうなろうと思いました。そして強く思うのは、医学の進歩に置いていかれないために、これからもひたすらに勉強していくことです。どんどん新しい知識を取り入れて適切に患者さんに提供できるように。それはそうなりたいではなく、そうでなければならないのだと思っています。
 
 そして、一方ではどこかの時期に大学院に進学して研究に取り組みをしたいと思います。これは研究室配属で感じたときから思いました。治療法の確立に貢献したい気持ちが大きいのですが、大学での勉強が楽しかったこともあります。様々な生命現象、病態についてその仕組みを体系的に学び、考えることは楽しいです。加えて今までわからなかったことを解明することに貢献出来たらそれはとてもすごいことだと思い、研究に携われる機会を持ちたいと思います。
 

最後に、医学を志す学生さんにメッセージをください。

 私は6年間、興味のある分野を突き詰めて勉強出来て、楽しくあっという間でした。医師国家試験を終えた今となっては、まだまだ勉強したりなかったところや、これから勉強していかないといけないところを感じながら、それが嫌ではなく、むしろわくわくした気持ちになれています。だからこそ、医師になりたいと思われる方に自信を持ってこの世界に入ってきて欲しいと思います。
 
 私は生物が好きでその勉強をするということで入学して来たので、医学部の勉強に抵抗はありませんでした。医師になりたいと思っていても、医学科で学ぶことについてはあまりイメージ出来ていない方も多いのかもしれません。医学を学ぶための科だということを意識すると、入学してから「こんなに学ばないといけないのか。ここまでやらないといけないの。」という気持ちを持たずにポジティブに学習が進められると思います。それから医学科のイメージで閉鎖的で限られた世界のように思っている方もいるかもしれませんが、全然そんなことはありません。部活やバイト、趣味など自分のしたいことを第一にして、だからこそ勉強も頑張るというスタンスの人も多いです。
 
 そして、医師の進路は多様に広がっていると思います。研究一筋で卒業後、そのまま研究の道に進まれる方もいらっしゃいますし、もちろんずっと臨床に携われる方もいる。政治分野に興味がありそちらに進まれる方もいらっしゃいますし、医学科に進学したからといって一つの道しかないということはありません。 ただし、臨床医を目指している人が多いので流されそうになるかもしれません。自分が何になりたいか、何を大切にしたいかを意識しておくことで、自分の希望に沿った将来を選べると思います。ぜひ医学科での学生生活、医師としての将来を楽しみに入学して来てください。
 
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