教授からのメッセージ

教授からのメッセージ

Interview

医学を志されたのはいつ頃ですか。

 私の姉は喘息持ちで体が弱く、度々病院に運ばれていたのですが、治療してもらうとちゃんと回復して戻ってくる。「医学ってすごいな。」と幼い時から医療に興味を持っていました。高校で進学を決める頃には、航空工学にも興味が沸いており、ひとつに絞りきれず、東京大学理Ⅰと九州大学医学部を受験しました。結局、迷った末に地元であったこともあり、 九州大学医学部に進学しました。今でも航空工学の研究もいいなという気持ちは持っています。
 

どのように学生生活を過ごされましたか。

 「大学時代は真面目な学生でした。」とは言い難いかもしれません。将来医師としてやっていく気持ちはあったので、試験前は重点的に勉強に取り組んでいましたが、 主に部活やアルバイトに注力していました。部活はバドミントン部で学部6年生の夏まで続けました。 アルバイトは家庭教師から接客業まで幅広くこなしたのですが、その経験は今、臨床医として役立っていると思います。 コミュニケーション能力は医療スタッフや患者さんと接する上でとても大切で、 アルバイトを通じてそのトレーニングが出来ました。学生時代は、そういうことこそやる時期だと思います。

 授業外での学習では、人がやっていないことに挑戦したいと、 アメリカの医師国家試験の受験勉強を友人たちと共に進めていましたが、これが何度も挫折しましたね。留学に興味があったことも取り組んだ理由のひとつですが、身近に実際にアメリカの医療現場で活躍する先輩などがいれば、また違ったのかもしれません。おぼろげなイメージを持つだけでは、学習意欲を維持し続けるのは難しく、忙しい日常にかき消され、学生の間にUSMLE(United States Medical Licensing Examination)を受験することはありませんでした。
 

現在の専門に進まれたきっかけをお聞かせください。

 臨床実習で様々な診療科をまわった中で、まずは外科を希望しました。それから外科の中で絞っていったのですが、外科手術を見学する中で、唯一心臓血管外科だけが、患者さんの心臓を止め人工心肺で生命機能を維持しながら手術を行っているという事が印象的で惹かれました。人間の生死の判定のひとつに、心肺停止が挙げられます。手術のためとはいえ、産まれてから亡くなるまで動き続ける臓器である心臓を、人間の手で止めることに荘厳さを感じました。手術室の張り詰めた緊張感もいいと思いましたし、加えて、重篤な患者さんであっても手術をうけることで回復され、結果が明確に見て取れる点も自分の性分にあっていると思いました。心臓手術は施術時間も長く、術後の経過観察で徹夜になることも多くあるのですが、挑戦するならば重責で難しいことをやりたいと思い、心臓血管外科を選びました。
 

今のやりがいと目標をお聞かせください。

 目標は九州大学病院の心臓血管外科を世界トップレベルにすることです。それから、これからの学生さんに広く道を開いていきたいと思います。

 学生の時からアメリカ留学に興味があったのですが、医師になり10年余り診療を行う中で、世界最高峰の医療現場で経験を積みたいと思ったことが契機となり留学が実現しました。8年間のアメリカ留学を経てから帰国し、現職に着任したのですが、九州大学の学生さんと接してみて非常に優秀であると感じます。彼らに世界への更なる道が広っていることを示して、大きな可能性を拓くきっかけを与えることが、私を含めて留学を経験した人たちができることだと思います。

 それから、やりがいは何を置いても患者さんが元気になられることです。ともすれば死の危険があった患者さんが手術によって回復して退院されていくときに、心臓血管外科医としての責務を果たせたことの喜びを感じます。私は心臓血管外科を専門としていますが、それを向上させるために新しい知識などを常に取り入れようと心がけていて、他の診療科の先生に講義をお願いすることもあります。心臓が悪いと肺も悪くする人が多く、心肺同時移植が必要となることもあります。関連する臓器についても診ることが出来るというのは、医師としての強みです。こうしたCME(continued medical education)の姿勢はアメリカではポピュラーで、自然に身に付いたことは留学の副産物でした。

学生さんにメッセージをお願いします。

 色んなことに興味を持ってください。そして狭い視野にならず、様々な価値観に触れてください。学生時代は色んな人脈を広げる時間です。医学、医療人とのつながりは将来自然と広がります。学生時代はむしろ医学部以外の人たちのつながりを広げてください。医師として歩む中で心を軽くしてくれるのは、むしろ医学部外の人ではないかと思います。それから、特に外科医志望の方は体力勝負です。しっかり体力をつけておいてください。
 最後に、英語は勉強しておいて損はありません。可能性や選択肢を広げるためにも、少しずつで良いので身につけておいてください。

塩瀬教授について

塩瀬 明 教授
医学研究院 臨床医学部門 外科学講座 循環器外科学分野
趣味はスポーツ。バドミントンを主にされるそうです。お子さんと遊ぶ時が一番リラックスされる時間とのこと。
ページのトップへ