在学生の声

在学生の声

令和2年度 医学科6年 江崎 慈萌さん

経験から多くのことを学んで、
人間力の備わった医師を目指して欲しい。


令和3年度 医学科6年 升井 三夏さん

医学を志したきっかけを教えてください。

 私は新しいことを知るのが大好きで、いろんなことを学びたいと思っています。そうして得た知識を人のために役立てることができるのなら、それはとても幸せなことではないかと思い、医師の道を選びました。
 高校を卒業してから2年後に医学科に入学したのですが、高校3年生と浪人1年目は、興味のあった宇宙物理や素粒子物理など、理論物理を専攻することを視野に受験をしていました。しかしながら、2年とも行きたい学部への合格は果たせませんでした。
 浪人2年目のはじめ、循環器内科医である年の離れた姉から仕事の話を聞くことがありました。患者さんと向き合い、病状について深く考えて、薬の処方や医学的な処置を変えながら治療を続ける。そういった治療で回復して、まさにご自分の足で歩いて退院されていった患者さんに感動した話や、多忙を極めながらも、患者さんの回復に喜び・やりがいを持って働いている話を聞き、医師という仕事に興味を持つようになりました。
 医師の仕事に魅力を感じたとはいえ、今まで目指してきた学科をすぐに諦めることも難しく、浪人2年目の受験勉強では、両方の学科が受けられるように必要な科目の勉強を進めました。センター後の二次出願の時まで迷っており、考えた末に、直接的に人の役に立てるという点が決め手となって、医学の道を選ぶことにしました。

 

受験勉強は大変でしたか。

 私の場合、「知ることが好き、学ぶことが好き」ということと、「受験勉強が得意」とうことはイコールではありませんでした。はっきり言えるのは、高校生の時は受験勉強が嫌いだったということです。私は好奇心旺盛なほうで、興味を持ったことのほうに集中してしまう傾向もあり、部活やバンド活動など様々なことに取り組んでいました。知ることは好きなので、学習にも取り組んではいましたが、それも自分の興味に沿って勉強していたように思います。
 卒業してからは、浪人生ということもあり、ほかの事に興味を向けることなく、しっかりと自分の学習に向き合えるようになったと思います。それまでの友人と離れ、新たな友人も特に作らなかったので、自分自身のことをしっかり自分で考えることも出来ました。そして、他の人と比較して漠然と「自分はできない人間なんだ」と思うのではなく、出来ていない点を具体的に捉えられるようになりました。勉強が楽しくなったのは浪人2年目からです。その頃には自分の勉強や試験結果などを客観的に分析出来るようになっていました。そうすると対策もわかるもので、そういう風に学習を続けると自然と結果に結びついて、受験勉強が楽しくなりました。
 
 とは言っても、着々と順調に結果を積み上げられたわけでもなく、模擬試験の結果は良くも悪くも両極端でした。一度、自分でも驚くほど悲惨な模擬試験結果を出したことがありました。あまりにショックで予備校の先生に励ましをもらおうと報告に行ったのですが、先生からは激励でも労りでもなく、「医学科を目指すのは考え直した方がいい。」と言われたのです。そんなことを言われるとは思わず、意地になり「今までこんな点数をとったことはなかった。」と返すも、「今回この結果なら、本番でとる可能性もあるよね。」と冷静に畳みかけられ、悔しさでいっぱいになりました。その後自習室の影でひとしきり泣いたのですが、落ち着くと「確かに先生の言う通りだよな。」と、すべてが受け入れられて、冷静にこの試験結果の原因と次からの対策を考えられるようになっていました。この一件があったからこそ、その後、精神的に苦しい時にも目的を見失わず、次を考えられるようになり、受験を乗り越えることができたと思います。

 入学してからの学習について教えてください。

エスペラント語・ラテン語テキスト
エスペラント語・ラテン語テキスト
 私は、結構楽しく学んだほうだと思います。1年生は伊都キャンパスで基幹教育を受講しました。基幹教育は所属学科によって必修科目はありますが、その他は興味のままに様々な分野にわたって受講することができます。好奇心旺盛な私にとっては嬉しいシステムでした。しかも、大学の講義はたくさん受講しても授業料は変わらない。なんと恵まれているのかと感じました。将来のためというより興味優先で、ラテン語やエスペラント語なども受講しました。ラテン語などは現在使われてない大昔の言語で、その言語を今、日本の片隅の学生が学んでいる。音読するも、もしかしたら当時使われていた読みとは違う音なのかもしれない。講義を過去と現代がつながる壮大な物語に重ね合わせ、非日常ともいえる感覚も楽しんでいました。ラテン語の授業は夕方遅い時間であったこともあり、後期になると受講生は3人になっていました。マンツーマンといってもいいくらいの状態で、専門家の先生がこんなに密に教えてくださる機会は他にないと思いました。先生から回答を求められる頻度は3回に1回だし、毎週必ず和訳をしなければいけないなど、大変なこともありましたが、それにも増して有意義な時間で、充実感を持って受講することができました。
 
 2年生からは病院キャンパスで、医学の専攻科目を学びはじめます。2年目は解剖学、生理学、生化学といった基礎医学科目を学んでいくのですが、臨床医への意識が強いとなかなか学習に苦戦するかもしれません。ですが、基礎医学と臨床医学は学問的には地続きで、3年生、4年生の学ぶ臨床医学で取り扱われている病態や病因を理解するためには、基礎医学の理解が大きな助けになります。基礎医学はまさに臨床医学の「基礎」ですので、基礎がしっかりしていることで、その後の積み上げがしっかりとできるようになります。何より、新しい情報が自分の知っている知識に結びつく瞬間は気持ちがいいですし、知識の積み重ねは知らないことに対する予測の助けになり、知識を重ねることにより、どんどん学習が楽しくなってくると思います。
 
 5年生、6年生では臨床実習を行います。COVID 19の影響で、制限のある中での臨床実習になりましたが、臨床の先生方はオンラインも活用しながら、患者さんのご協力も得て進めて頂きました。

 授業外で印象に残ったことを教えてください。

九州山口医学生体育大会
九州山口医学生体育大会
 部活が印象に残っています。私は中高と卓球部に入っていて、大学でも医歯薬卓球部に入部しました。個人のペースを尊重するようなオープンで自由な雰囲気の部活で、私の場合は週に1回くらいのペースで通っていました。部活では学年を越えた先輩、後輩のつながりを持つことができ、同じく医療系を目指すこともあってか話も合い、楽しい時間を過ごすことが出来ました。先輩からは、将来の進路を決めることになったエピソードなども聞くことが出来て、とても参考になりました。また、医歯薬卓球部は、その名のとおり医学部、歯学部、薬学部の学生が入部することができるので、医学部以外の学部のカリキュラムや研究の話を聞くことが出来たのも楽しかったです。

 

西医体3位
西医体3位
 そして医学部の部活動は、西日本医科大学体育大会や九州山口医科大学体育大会など、大会をとおして、違う大学の医学生とも交流できるのが良かったと思います。夏休みなどの長期休暇には、私は個人的に他大学などへ遠征に行っていました。1週間ほど滞在して、一緒に卓球で汗を流しながらいろんな話をしました。その中で、将来につながるような充実した話をすることもでき、大変有意義な時間でした。
中欧旅行にて
中欧旅行にて
 また、一年次の基幹教育奨励賞で頂いた賞金で、中欧へ行ったときのことも強く印象に残っています。現地では、ハンガリーの医学部に進学した友人と再会し、お互いの受けている医学教育について語りあいました。ハンガリーでは、卒業までに3割の学生が退学、3割は留年を経験し、ストレートで卒業するのは4割程度と非常に厳しい体制であること、また、我々が半年ほどで行った解剖実習も1年半をかけてじっくり行い、試験も口頭で教授と1対1で行うなど教育指針に大きな違いがあることなど、実に興味深い話を聞くことができました。言語も文化も違う国で、我々よりずっと厳しい教育を受けながら奮闘する友人の話に刺激を受け、私ももっと頑張らなくてはと自省する大変よい機会となりました。

これからの進路を教えてください。

 来年度から、2年間の初期研修を受けさせていただきます。1年目は九州大学病院以外の病院で研修を行い、2年目は九大病院で研修を行っていただきます。このプログラムを選んだのは、これから医師として経験を積んでいくために、いろんな症例に実際に対峙するため、より多くの患者さんが受診されている大学病院で研修を受けたいと思ったからです。
 初期研修の後に進む専門については、これから考えて決めていきたいと思いますが、今の方向性としては外科に興味があります。手術など実際に手を動かすことも好きですし、何より病巣を目視で確認して直接的な処置をできるところが、医師の進路を選ぶ決め手となった「直接的に人の役に立ちたい。」という気持ちとマッチして魅力を感じています。

 

友人達と
友人達と
 それから、これは興味の要素が大きいのですが、もっと先にはスポーツ整形にも惹かれます。スポーツの上達は習練によるものが大きいですが、個人個人の体の特性を分析することで、もっと効率的な体の使い方、トレーニング方法が分かるようになると思います。骨のつき方、筋肉のつき方、例えば、一部の筋肉がより発達していた場合に、その要因は何なのか。神経なのか骨なのか。深部に渡る分析でその理由が明確になれば、さらに系統的な議論もできるのではないか、など考えることも色々あります。無理な体の使い方はケガの原因になることもあり、画一的なトレーニング、技術指導ではなく、よりパーソナライズされればいいと思います。実はこれは、他大学も含めた卓球の医学生仲間や活動を共にする社会人の方々と話していたことで、もちろん、まだ具体的に何かに取り組んでいるわけではありませんが、ケガや病気を治すだけでなく、医学が多くの人の生活をより良くするために役立てられるような、そういった研究・活動に携われたらと思っています。

最後に、医学を志す学生さんにメッセージをください。

 これから医師になろうと思う人にお願いしたいのは、人間力を磨いてほしいということです。医師にとってコミュニケーションのスキルは、知識や技術とならんで重要なものだと思います。コミュニケーション力がないと、患者さんが本当にして欲しいことを聞けないだろうし、病態や病因に潜む背景もわからないままだと思うからです。また、患者さんに信頼してもらえないと何も話してもらえないと思います。信頼を寄せてくれる要素が人間力ではないでしょうか。

 いろんなことをたくさん経験してください。私にとって今回のインタビューをお受けするのも挑戦でした。どうしようかなって迷ったことはとりあえずやってみてください。失敗しても必ず学びはあり、経験から学ぶことは何より大きな理解につながります。私は高校卒業から大学入学まで2年間を費やしましたが、この期間で多くのことを学び、大学生活の基礎ができたようにも思います。浪人2年目の気づきがなければ医学科に進学していなかったですし、あの時間が本当に重要だったと、こうして将来を考える時期に改めて実感しています。私の母の言葉を借りて「どの道を選んでも後から自分の正解にしてしまえばいい。」ということも思いますが、正解にしていく力を養うのにも、様々なことを経験して多くのことを学んでもらえたらと思います。

 

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