在学生の声
色んなことにアンテナを張って、
感謝の心を忘れずに医師を目指してほしい。
令和5年度 医学科6年 阿部 佑哉さん
医学を志したきっかけを教えてください。
生命の仕組みに興味があったことと、自分の性格に向いていると思ったからです。私は、福岡の自然の豊かな地域で幼少期を過ごしたので、水や土、虫などと触れ合う中で生命の仕組みに興味をもちました。小中学校の授業では学べないことも本を読んだり、地域の体験授業に赴くなど熱心に取り組んでいた記憶があります。そして医者や医学部の存在を知る中で、自然と医学分野に興味をもつようになりました。また、昔から年齢層を問わず様々な人とコミュニケーションを取ることが得意であり、好きでもありました。興味のある医学と自分の性格を合わせて、将来は人に寄り添うことのできる医師になりたいと思いました。九大医学部を選んだのは、自分を育ててくれた地元福岡にあり、同時に最先端の研究機関でもあるからです。九州大学では臨床と同時並行に研究をされている医師もいるので、自分も将来的に選択肢の幅が広がるだろうと考え、最終的にここに決めました。
受験勉強は大変でしたか。
とても大変でした。私は浪人をしたので、その期間モチベーションを保つのが難しかったです。 模試ではずっとA判定が出ていたのに数点差落ちをして、悔しくてどういう気持ちで頑張ればいいのか悩んだ時期もありました。一番心の支えになったのは両親の存在です。勉強以外のことについては時に厳しい両親でしたが、将来のことや勉強に関しては好きなことをしたらいいと全力で応援してくれました。「医学部に行きたいからもう一年頑張らせてほしい」と言った時に、快くサポートしてくれたので、その期待に応えようと、より一層受験に打ち込めました。本当に環境に恵まれていたと思います。受験においては、揺らぐことのない基礎力が大事だと思います。尖った勉強や難しい問題に取り組むよりも、まず網羅的な問題集とか、広く推奨されている問題集を完璧にする、その時の穴を補助的に違う参考書で埋め合わせしてやる、という勉強をしていました。ここで言う完璧は、単に掲載されている問題が解ける状態ではなく、作問者の意図を想定したり、解答のプロセスが他の問題にも応用できないか考えたりするレベルを目指せるといいと思います。また体力が落ちないように、ランニングや筋トレをしていました。身体的な所からメンタルに直結していると思うので、定期的に体を動かしながら勉強をしていました。

実習班のメンバーの集合写真
入学してからの学習について教えてください。
九州大学では入学してから一年間、伊都キャンパスで基幹教育を学ぶことになります。医学部生には、すでに他の大学の別の学部を卒業した人や元社会人など、色んな経験やキャリアを積んできた学生がいるので、積極的に友達作りをすることで自分の中の視野が広がったように思います。2年生からは病院キャンパスで医学の専攻教育科目の講義が始まります。高校生の時はテストの出題範囲がある程度決まっていたので対策ができましたが、医学部では新しい学問を習って、その学問を習い終わるタイミングで試験が実施されることがあります。分野ごとに試験の問題の量や質も異なっているため、逆算して試験対策することが難しく、また、自分の理解度も把握しづらかったです。範囲が膨大なので、単に知識を詰め込む勉強になりがちですが、効率を求めすぎると無駄を切り捨てるような暗記になり、他の科目の勉強との繋がりも感じにくくなります。実践するのは難しいと思いますが、今習っているのは実臨床でどう活かせるのか考えながら勉強することで、他の分野や将来の診療との繋がりも見えてくるのではないでしょうか。また私は一人で勉強するよりも、気の合う友人と勉強する方が性に合っていました。一緒に勉強することで、記憶に定着しやすかったように思います。学校外で印象的だったことを教えてください。
もともと陸上とラグビーの経験があり、そのどちらかへの入部を考えていましたが、たまたま空手部の先輩に声をかけてもらい、武道をやってみたかったということもあって、未経験でしたが医学部空手部に入部しました。先輩方が面白そうな方ばかりでしたが、どの先輩も空手の練習になると真剣に取り組んでいて、その熱量に影響されて自分も次第に空手が好きになりました。昇段級審査と学科のテストの時期が重なり、型の暗記と試験勉強を同時にこなした事もありました。黒帯を取り、キャプテンにも任命されたのですが、その時期にコロナ禍となって、活動をどうするか迷いました。大学から活動の許可が出てからは、オンラインで顔合わせしたり、少数でランニングをしたりと、制限のある中で工夫して活動をしていました。また、スーパーの店員や塾の講師等のアルバイトを経験することもできました。スーパーでは病院と同じく、広い客層の様々な社会的背景をもつお客さんを対応します。足を悪くされている方のカゴを持って入口まで運んであげたり、どんな方でも見やすいポップに工夫したりするなど、与えられた仕事をするだけではなく、限られたバイト時間の中で何ができるかと考えながら働きました。自分が言われたこと以上に、もっとできることがないか発見する力を、働く中で養われたと思います。
塾の講師では6年間で50人以上の生徒を見させていただきました。来ている生徒は必ずしも全員が勉強したくて来ている訳ではなく、親から言われて塾に通っている生徒や、成績が伸びずに仕方なくという生徒もいます。勉強が好きじゃない生徒にどうやって取り組んでもらうか、厳しくするのか優しく見守るのか、面白い話を挟んだ方が刺さるのか、生徒一人ひとりの性格を考慮しつつ、どのようにアプローチしていくべきか考えながら教えました。どちらのアルバイトも楽しく、非常に学ぶ事が多かったです。将来医師になった時も色々な患者さんがいらっしゃると思いますが、治療に積極的でない患者さんにどうしたらよいか、治療効果を上げるために工夫はできないか、考えられるキッカケになればいいなと思います。
また、4年生の時から大学で医師国家試験の対策委員も務めました。対策委員の活動としては、 模擬試験や国家試験の教材を提供する会社との打合せや、6年生の就職マッチングの際に、マイナビ等の企業と学年をつなぐ橋渡しの役割を行いました。企業の方や病院事務の方などとお話する機会は新鮮で、学生のうちからこういう経験が出来たことは良かったと思います。

空手部の集合写真

団体戦で後輩たちが優勝した空手の大会

空手部の追いコン

必殺技を披露

空手部の追いコンで部の仲間たちと
実習について印象に残ったことを教えてください。
5年生から病棟での実習を行いますが、特に印象に残ったのが心療内科の実習でした。統合失調症や鬱病などの、心の病そのものを扱っているのが精神科で、慢性疲労や摂食障害などの、心が原因の身体の不調を診るのが心療内科です。実習で私は慢性疼痛という疾患の患者さんを担当させていただきました。慢性疼痛の患者さんは、とにかく身体が痛いと訴えます。しかし、血液検査や画像検査、あらゆる検査をもっても異常がないのです。初めてこの疾患を知った時私は、治療なんてできるのか?と思いました。過去のトラウマや医療不審など複雑な心の問題が、ダメージのようなものとして蓄積していって、それが体の痛みとして現れる、ということが病態として想定されているそうなのですが、投薬すれば治るような単純なケースは少なく、痛みを生み出した患者の心理的、社会的、身体的背景を十分に理解することが治療に繋がるのだといいます。その背景を様々な手段をもって理解し、また患者さん本人にも意識してもらうことで、痛みの改善を目指すらしいのですが、実際に私も、5年生の実習で担当させていただいた入院患者さんが、6年生で実習を回った時には、退院して社会復帰目前まで改善した場面に立ち会うことができました。この実習では、心と病は密接に結びついていて、検査だけじゃ分からない患者さんがいるという事を知れました。病気を相手にするのではなく、病気を持っている患者さんを相手にしているのだという事に気付く事ができて、心療内科の実習はとても意義深いものでした。
これからの進路を教えてください。
最初の2年は大分県の県北にある市民病院で初期研修をして、3年目に九大の医局に入局しようと考えています。これからは幅広く患者さんの診療ができ、かつどこかの分野で突出している医師が求められるという話を、実習でよく耳にしました。研修医はまさに、この“幅広く患者さんの診療ができる医師”になるための足がかりとなる期間だと思います。初期研修の2年間では、研修医の仕事の一つとしてファーストタッチの対応を学びます。具体的には、救急車で搬送された患者さんなどの早期対応を経験します。初期研修を行う病院にこの病院を選んだ理由は、県北自体に大きな病院が少なく、診療科の偏りのない、幅広い症例が集まると考えたからです。また、病院見学では病院全体の雰囲気の良さ、風通しの良さを感じました。特にチーム医療をやる上で欠かせない研修医同期や上司、他職種の方との雰囲気の良さが決め手と成りました。
最後に医学を目指す学生さんにメッセージをお願いします。
これから医学部を目指している人達には次の二つのことを意識してほしいです。一つはアンテナを広く張って生活することです。病棟実習で、コミュニケーションを取るのが少し困難そうな患者さんを担当させていただいた時、好きな作家さんが共通していたことを皮切りに良好な関係を築けた、ということがありました。これは一例にすぎませんが、スポーツでも映画でも自分が興味をもって色々なものに触れていると、例えそれが趣味として楽しんでいるだけでも、自然と新しい見方を得たり、会話の糸口にできたりすることがあります。これを読んでいる人が受験生ならなおさら、今新しいことにチャレンジするような機会を得るのは難しいと思いますが、入学後でもいいので、ぜひ自分の興味のアンテナを広く張って、そして自分の心にビビッと来るものがあった時には、まずは手を伸ばしてみる経験を積んでほしいです。そこで手を伸ばしたモノに自分が合っていなかったら、やめてもいいと思います。合っていたら突き詰めてみると面白いと思いますし、そういう回り道をしながら、自分の世界を広げていくことで、最終的には医師としての深みの部分に還元されていくのかなと思います。同じような治療をしていても、言葉に説得力があり、患者さんも協力的になるような医師の先生方を何人も見てきました。そのような先生方の醸成する雰囲気は、きっと数え切れないほどの挑戦と経験に裏打ちされたものだと考えます。もう一つ、医学部を目指す学生の皆さんに守ってほしい、心に置いてほしい事があります。月並みな表現ですが、感謝の心を忘れないでほしいという事です。医学部を目指し、また実際に合格した人は、これまで人並み外れた努力を積み上げてきたはずで、それは凄いことだと思いますが、ただ絶対に、どんなに優れている人でも一人で戦ってきたわけじゃないと思うんです。周りの友人や家族や先生や、あるいはその全ての人の協力があって、今自分がその位置にいるんだよという事を再認識してほしい。フランス語で「noblesse oblige (ノブレスオブリージュ)」という言葉があります。元々は、高い社会的地位にある人は市民の模範になるように生きる義務がある、みたいな意味だったと思うのですが、これは医師においても言えることだと考えます。ここで自分が言いたいのは、別に医師が偉い立場だ、という事ではなくて、医師としての力を得させていただいた人は、それに驕るのではなく社会に還元する義務がある、ということです。身の回りの全ての人や地域の協力があってはじめて、医師としての力をつけさせてもらえると思うので、実際に働き始めた時には、社会や周りの人に還元する心、ちゃんとそれを分け隔てなく返していけるような心を持ってほしいと思います。私も4月から研修医として働く中で、このことを常に肝に銘じておこうと思いますし、これから医学部を目指す人にも同じように、自分が受け取ったものを周りに還元していかないといけない事を心のどこかに置いて精進し、勉強していってほしいです。

卒業旅行(韓国)

空手部同期と卒業旅行(タイ)

卒業旅行(フランス)
