在学生の声
内なる心(feeling)を
大切にしてほしい
平成26年度 医学科6年 仁田原 憲太さん
医学を志したきっかけを教えてください。
高校時代の得意科目は世界史、英語といった文系の科目だったのですが、医学部への進学を決めた後は、理数系の科目を重点的に学習しました。仕事だけが人生ではないのですが、人生の大きな要素を占めると思います。その重大な決定を高校での科目の得意、不得意で選択するのは違うと思います。自分の場合、目標を定めて学習を進めたのでがんばれたと思います。
入学してからの学習についてはどうでしたか。
高校時代は世界史が好きだったのでそれを例に出しますが、世界史は各国の歴史等の相関性を念頭において学習すると記憶しやすく、医学科での学習も同様に、体の組織の役割や薬の効用などの相関性を感じながら学習すると、単純的な記憶の作業として学習するよりは、効率的に進められました。高校までの、継続して学習する姿勢や、思考のプロセスは、医学科での学習に役立っていると思いますが、単純な受験での成績は、大学に入学してからは関係ないと感じます。
お勧めの学習方法を教えてください。
学科の授業外で印象に残ったことを教えてください。
試合の様子
大学では、スケジュール組み、交通等の諸々の手配など、高校までは監督がやってくれていた庶務的なことをすべて自分達でやる必要があり、それが良い経験になりました。新入生の勧誘や日々の練習のメニュー、遠征の段取りなど。特に金銭の収入、支出の管理は信用に関わる部分で注意が必要でした。
自分がキャプテンを務める中では、まずチームの協調性を大切にしていこうと思い、チームが強くなるため、決して練習は楽ではありませんが、楽しくやっていくことを心がけました。 どこまでも練習を厳しくするわけにもいかないし、どこまでも緩くできるわけでもない。自分で基準を持ち、チームの雰囲気を大切にしていこうとしました。その結果として、その年の第64回西日本医科学生総合体育大会で3位の成績を残すことが出来たのはよかったです。ちなみにその翌年は準優勝とコンスタントに成績を残せているので嬉しいです。
第64回西日本医科学生体育大会(3位)
海外での臨床実習について聞かせて頂けますか。
僕は、英国のオックスフォード大学と米国のクリーブランドクリニックでそれぞれ1ヶ月の臨床実習を行いました。オックスフォードでは内科、クリーブランドでは外科と非常に充実した海外での実習を経験することが出来ました。
John Radcliffe病院の外観
オックスフォードにおけるAGMとは、外傷や緊迫した救命救急が中心の救急部(Emergency Medicine)と異なるもので、内科的治療を要する外来患者の症状を評価し、治療方針や入院または帰宅の判断、専門的な治療が必要な場合は 他科へ治療を依頼したりします。おおざっぱに言うとAGMは日本の救急部と総合診療科を足したイメージです。
オックスフォードでの実習 英国では白衣着用しない
またオックスフォード大学病院の入院期間の短さは印象的でした。重篤な患者であっても、入院した患者さんが急性期を越えるとすぐに、コミュニティホスピタルといった療養型の病院へ転院するか、もしくは自宅で療養し、一般の外来の診療所で診療を受けて頂くようになっており、医療機関の連携が確立しているなと思いました。平均で3−4日ぐらいの在院日数だったと思います。
臨床実習とは別に良かったのは、オックスフォードの街が歴史を感じる非常に美しいところだったことです。飲食店に入ると13世紀に建てられた建物で、天井も低く、白黒の古い写真が壁中に貼ってあったりと、自然に歴史と街とが融合しすごくいいところでした。
クリーブランド実習
移植を多く見てきて思ったことは、移植の原因として事故の多さです。交通事故などのほかに銃の事故が多かったです。子供が銃で遊んでいて暴発、脳死、移植というパターンをみると心が痛みました。国民の意識の違いや飛行機、移植施設などのハード面での違いは大きいですが、移植にはさまざまな要因が絡んでいるのだと実感しました。
これからの進路を教えてください。
医師国家試験に合格できたら、2年間の卒後臨床研修に進んでいくのですが、僕は東北の石巻の病院で卒後臨床実習を行う予定です。石巻の病院を希望したのは、北の方で暮らしてみたい憧れや、その病院自体の魅力というのもありましたが、大きな動機はやはり東日本大震災です。災害時にその病院で頑張る医師の活動を報道等で知り、目の前の困った人を助けられる医師という職業の素晴らしさを再確認できました。自分の力は微々たるものだとは思いますが、少しでも被災された方のお役に立てればと思います。
卒後臨床研修の後は、小児や周産期の方を専門に進んで行きたいと今は思っています。入学当初は外科がかっこよくていいかと思っていたのですが、5、6年生の臨床実習で様々な診療科を回り患者さんと接する中で、自分は小児や周産期が性に合っていると感じました。やはり小児科での子供の患者さん接したことや、周産期でのお産に立ち会ったことなどが大きかったです。特に多胎の出産は緊張感があり、そして感動するものでした。
進路を考える上でも感じるのですが、医師は働く地域や分野の選択において、自分の希望通りに選ぶことの出来る数少ない職業ではないかと思います。
最後に医学を志す学生さんにメッセージをください。
目先の損得勘定ではなく、自分の内なる心を大事にして欲しいです。そして、一度決めたらその意思を曲げずに進んでください。例えば医師を目指したいと思ったら、その気持ちを尊重して、曲げることなく頑張って欲しいと思います。自分を振り返ると、ラグビーを始めたことも、留学、これから小児や周産期の分野を希望していることも、「これいいな。」というフィーリングを自分の中で大事にしてきた結果だと思います。自分の内なる心を尊重することが、努力を継続する大切な要素であると思います。
また、犠牲を払って得られたものは、自分の中に蓄積され、行動が習慣になっていくことを伝えたいです。例えば、留学プログラムなどは誰しもが参加するものではなく、自身が希望して初めて参加することが出来るもので、応募する際は、申込みの手続きや選考試験の受験、渡航が決まったときは、ビザの申請や様々な手続きなど、負担に感じるときもありました。それでも、努力して得られるものは大きかったと思います。そして、一度経験したことを次に取り組むときには、より負担を感じずに出来るようになると思います。逆に一度避けたことは次も避けてしまうように習慣的に思います。うまくいかない時もありますが、経験を積み重ねることで自身がステップアップし、先には、次の楽しいステップが待っているものです。そういうことを感じて欲しいと思います。